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二海由樹のささやかな幸せ

午前0時


二海由樹は夜空を見上げた。空はどんよりと雲に覆われ、今夜は月明かりも星空も期待できそうにない。



何度かメールの受信アクセスを行ったものの、“新着メールはありません”というメッセージが表示されるばかりだった。


今夜は来ないのかな…メール。


ふう。


とため息をひとつ。


…今日も仕事忙しいのかな。


初恋は小学生のとき、担任の先生だった。


それからも“いいな”と思う人もいたけど、こんなに好きになれる人はいままでいただろうか。


曇天を見上げながら、温かいココアを飲む。


ふう。とまた、ため息ひとつ。


はじめて「好きです」と言ったときは、『ただ好きでいれたらいい』『想いを聞いてもらえたらいい』と思っていた。


でも毎日メールしているうちにどんどん欲張りになってくる自分がいる。


毎日メールしたい。その日の嬉しかったこと、辛かったこと、聞いてもらいたい。そして聞きたい


ときどきデートしたい。一緒にお酒を飲みにいきたい。雑貨屋さんとかまわったり、カフェでお茶したりしたい。蒲生さんの部屋で私が料理をつくったり、手を繋いだり。


「あ~!!!」

想像して一人で身悶える。


「おねーちゃん、なんで一人でアンアンうなってるの?発情期?」

「なななななな!!!なんでいるのよ!」

「明日友達と街で遊ぶから、今日泊まりにいくって一昨日言ったじゃん」

「そう…だっけ…」

「許可ももらったし。で、何に身悶えてるの?」


「ううう…。」


私は洗いざらい実樹に話した。

誰かに聞いてほしかったのだと思う。


「…ふう。おねーちゃんってホントにウブよねえ」


「へ?」


「今どき中学生でもそんな恋愛して、そんな妄想しないわよ。ばばっーとヤることやって既成事実つくって、結婚しちゃえばいいんじゃない?二人ともイイオトナなんだから」

「ば、ばばって!!!そんな!」


「おねーちゃんたら顔真っ赤にして可愛いなあ」


これじゃあ、どっちが歳上かわからない(泣)


「そ、そういう実樹はどうなのよ!彼氏とは!」


「聞きたい?」


うっ。うん。ゴクリッ。生唾を飲む音が自分にも聞こえる。



あまりに激しすぎて、頭がのぼせた。

妹おそるべし…



10月31日(火)01:02

hero-kazuta@sofomo.no.jp

Sab:Re:雨がふりだしたね 

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こんばんは。もう寝たかな?

起こしたらごめんね。

急遽社長に飲みにつれていかれ、今、ラーメンを食べて家に帰宅しました。

今夜は冷えるね。


もうさすがに酔っぱらって公園で寝るのはよそう。そう心に誓ったよ(^o^;)


突然だけど、二海さんは社長とはよく話をするのかな?


明日から東京に出張してきまーす。留守中ヨロシクね!(^^ゞ


明日は一日雨みたいだね。


明日もがんばろー!おやすみなさい!

-----------------


気がつけば、蒲生さんからメールがきてた。

いつもと同じく、ほんとに気遣いの人だなあと思う。


メールの端々に感じられる優しさ。


色々よくばってはみたものの、今の私はそれだけで幸せだった。


想い人の蒲生和弘。

お店の女の子に鼻の下を伸ばし、酔いつぶれて公園で寝てるところを後輩(女性)に介助してもらっているという事実は二海由樹は知らないのであった。


知らぬが仏。

大人って不潔。

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