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東京砂漠って、もう死語ですか。

蒲生美弥子

蒲生和弘の妹

年齢29歳 独身


(株)サンライズ企画 総務部


容姿:バリキャリの美人


性格:ツンデレ


(蒲生和弘氏談による)

午前7時。

今日は午後からクライアントと東京で打ち合わせだよ。


10時頃の新幹線に乗ればじゅうぶん間に合うし、職場にはよらなくてもいいし。


うーん、と背伸びをすると、スマホの青いランプの点滅に気がついた。二海からメールの着信を報せていた。


10月31日(火)01時30分

YukiFutami1020@ssweb.com

Sab:Re:Re:こんばんは、いえ、おはようございます

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お疲れのところ、メールありがとうございます!嬉しいです。


今日は妹が泊まりに来ていて、夜更かしをしていました(^^;)

社長とご一緒されるなんてすごいですね。会社では厳格で知られる方ですよね。さすが蒲生さんです!


私は社長とは就職以来、社内でお見かけし、軽くご挨拶はさせていただきますが、個人的な会話なんてほとんどさせていただいたことはないんです。(>_<)


今日からご出張ですね。お気をつけて行ってらしてください!私もがんばります☆


-----------------


彼女からのメールを開くと本当にホッとする。自然に笑顔になれる。不思議な人だな。と思う。


「社長はただのエロ親父ですよ~」とはさすがに言えなかった…。


『おはよう!朝からのメールは新鮮だね(笑)メールありがとう!がんばってきます!お土産お楽しみに』

とだけ、メールを返した。


顔を洗って、ワイシャツに袖を通す。

高級な蒸留酒って次の日に残らないってほんとだな~なんて考えながらネクタイをしめる。


出張用のカバンにはつねに着替えと必要最低限な物は常に詰め込んである。

クライアントへの資料は前日のうちにメールで支社に飛ばしてあるし、タブレット端末の中にあるので、心配はないね。



10時01分 新幹線のぞみ号東京行き

東京に着くまではタブレットを開いて資料の確認。そして好きな小説を一冊だけ持ち込んでいて気分転換に読みふけるのさ。


ザ.デキるリーマン。オレカッコイイ。



10月31日(火)10時30分

YukiFutami1020@ssweb.com

Sab:無事に向かっておられますか?


------------------------------

蒲生さんのことですから心配は無用なんだろうなとは思いつつ(^-^;

朝からの新鮮な(笑)メールの着信が嬉しくて、休憩中にメールしました。

今日はあいにくの雨ですね。東京は晴れの予報ですが、どうなのでしょう?

お気をつけて行ってらしてくださいね。

いつも部署の皆さんにお土産を買って帰られるのですね。お気遣いありがとうございます!楽しみにしてますね☆


-------------------------------


ふと、メールに気づき嬉しい気分になる。

新幹線の中でオッサンがスマホ眺めながらニヤニヤする姿はさぞ気持ち悪いことだろう…。

となりの席のOL風の女性が必死に距離をとろうとする姿に気づき、あわててスマホを閉じた。


新横浜を過ぎ、もうすぐ東京。



東京駅に降り立ち、東京メトロに乗り替えて飯田橋駅へ。程なくいくとオフィスビルの一角に我が株式会社ネクスト総合経営東京営業所がある。まずはそこに向かう。


街を闊歩する、デキるリーマンなオレ(自称)だが、こんな大都会は嫌いだ。


東京はJRに私鉄に地下鉄に、電車多すぎ。人多すぎ。建物多すぎ。

最初に出張に来たときは街行く人に“この田舎者”と言われている気がして、嫌な汗をかいたもんだ。

まさにコンクリートジャングル。無機質な感じは東京砂漠。

あれ?これって死語ですか。


オフィスの扉を開けると30人がゆうに座れるほどの解放感のある広々としたオフィスが見渡せる。

「いらっしゃいませ」

と受付の女性が言う。

清潔に整理された社内。白を基調とするフロア。カウンターには花が。玄関には観葉植物が配されている。


「お客ではないよ。本社の営業支援部の蒲生です」

女性がすみません、と申し訳なさそうに頭を下げると同時に奥から人が飛び出してきた。

「やあやあ、蒲生部長、お待ちしていました。お初です。営業所次長の妻木です。所長は少し外出していますがすぐ戻ります。もう少しお待ちください」

60を手前にするであろう、小太りのバーコード頭の男だ。


私は応接室に案内されしばらく待つことになった。


明智所長、妻木次長はじめ東京営業所の大半はコンサルティングの老舗(株)アシカガが倒産した10年前、わが社に吸収された人たちだ。なので面識のない人が多い。


しばらく待つと応接室の扉が開く。

「すまないね。待たせて申し訳ない。蒲生部長、遠いところ東京へよく来てくれた。」

明智所長が笑顔で頭を下げる。後ろから妻木次長も入ってきた。


オレもあわてて立ち上がり頭を下げる。


物腰柔らかく丁寧な人だ。爽やかな細身のナイスミドル。60歳はとうに過ぎているが、現在も現役として活躍されており、社長の信任も厚い。「こんなじいさんになりたい」社内代表だな。


「わざわざ呼び出してすまない。経営分析はやはりここの営業所ではできるものがいなくてね」

「いえいえ」

仕事ですからね。営業所なんだからそれぐらいできるようになってほしいですよ。こんな大都会は苦手っすよ~とはデキるリーマンは思ってても言わない。


「今日、15時から伺う株式会社サンライズ企画だが、社長が世代交代し、より科学的な経営を目指しておられる」「カンと経験主義からの脱却ですな」と妻木次長が付け加える。

「なるほど。だから科学的な経営分析が必要だと」

「そうです。」

「これまでこの会社にはどのような支援を」

「ネットワークシステムの構築や事務機器の販売等を」

「その取引履歴がわかる書類を出してください」

「その必要はないでしょう」

妻木次長が鼻で笑う。何も知らない若僧が人の職掌に口出すな…ということか。

「わかりました」

向こうで見れば済むことだ。



その後私は社用車で明智所長と担当社員数名とともに現地入りをした。

『Sunrise Planning co.ltd』

と社名が書かれたビルに車を着けて降り立つ。

数名の社員が出迎えてくれている。


そこにはオレの妹の姿もあったのだが、当然のように他人のフリをかまし営業スマイルで出迎えてきた。いわゆる逆ツンデレというやつか?たぶん兄としてこんなオッサンが現れるのが恥ずかしいのだろう…あれ涙が…。


サンライズ企画の社長-萬谷満はハデで高級そうなスーツ。金色に光る指輪。無駄に尖らせたツンツン頭。尊大な態度が鼻につく、オレと同世代のいけすかないヤローだった。

名刺交換ののち、社長はゴルフがあるとかなんとか言ってそうそう退室し、総務部長とともに経営分析を行った。

そのなかでも、

他社との取引履歴は明らかにするのに、わが社との取引履歴は出し渋った上に、明らかに履歴が数ヵ所削除されていると思われるものが出された。


夕方17時になると、「では、今日はこの辺で。」と一方的に明智所長によって懇親会へと場所が移された。

社長も尊大なら社員も尊大。なぜかこちらが不必要にへりくだる。モヤモヤした思いを抱えながら、オレは促されるままに懇親会場に向かった。


立派な庭園つきの料亭だ。

社長は相変わらず不遜な態度で当然のようにあらわれた。

高級そうな料亭の代金はこちらが全額持つらしい。まさに接待だ。


着物姿のコンパニオンまで呼んで。


「萬谷社長、本日はおこしくださり、ありがとうございます。今日は日中ご不在のようでしたが、どちらへ?」

オレは超営業スマイルを駆使し、酒を注ぎながら話す。


「経営者仲間とゴルフだよ」

「へー、社長ゴルフなさるんですか」

「財界人としてのたしなみだよ。週イチは必ず行ってるな」

「へー!そりゃ、さぞかしお強いんでしょう」

「最初は付き合いではじめたんだが、これ握ってみたら楽しくてね ……」

握るとは、お金を賭けるということだ。持ち上げられると嬉しかったのか、饒舌に話はじめた。


「社長はカンと経験主義からの脱却、とおっしゃいましたよね」

「そうだが」

「そりゃあ~無理でしょう。絶対に」


一瞬にして場が凍りついた。



いつもお読みくださりありがとうございます。


今回は恋愛要素が低めでしたが、30代リーマンの奮闘ぶりが書きたくて、楽しく書いてみました。


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ありがとうございます!

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