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こ、こんな旨い酒飲んだことがない!(゜ロ゜;

社長のあとを追うままに、繁華街のちょうど中心の12階建てのビルの最上階。

Club華と書かれた看板。高級感溢れる重々しい扉を開ける。


そこはホワイトパールを基調とした華やかな店内。

キレイなお姉さんがいっぱい。


スカイブルー、ワインレッドなどなど色とりどりのカクテルドレスに身を包んだ美しい女性たち。


いかんいかん!きょろきょろしちゃいかん!

「なにこのオッサン、ジロジロ見てきてるよ。キモーww」

くらいに思われてるよ。おのぼりさんだよ。田舎者…もしくはただのスケベ親父にしか見えないぞ!いかんいかん。


そして店内には明らかに“ふつーのサラリーマン”じゃない、高級そうなスーツ。オレのは、●山で買ったセールのにーきゅぱ。


ふだん接待でもこんなお店は使ったことがないよ。

このシャンデリアすげー!


「失礼します」

オレの隣にふたりの女性が座る。社長のとなりにも。

「レイナです」「アキナです」

「あ、はい。ど、どうも」

「な、いい店だろ。お姉ちゃんも可愛いしな!」

「は、はあ」

「ブランデーでいいだろ?」

「は、はあ。」

社長のキープしていた酒。銘柄はカミュミッシェルロイヤルバカラ…なんとか…よくわからんけど、高そうなブランデーをいただく。

さすが高いだけあってフワッとして、柔らかな口当たり。それなのにどしっと重厚な旨味だ。

「ふぉっ」

と変な声を出してしまった。

う、旨い!こここ、こんな旨い酒はじめてだ!(゜ロ゜;


にゃっと社長が笑う。

「うまいだろ!こりゃブランデーの中でも最高級の古酒だ。だが、古いだけじゃない、素材も水も一級品だ。女も酒も中身が大事だ。いい女は新しくても古くなってもいいもんだ。若い、若くないを判断基準にするな。“いいものはいい”んだ!わかったか!?」

「は、はい」

「がははは。じゃ、飲め!」

歳を感じさせない豪快な笑い声、ロマンスグレーの髪、綺麗に整えた髭も。この人こそいい年の重ね方をしているなと思う。


かくありたい。そう思ったが…

「ねー!ミカちゃーん♪」

「いやーん、サブローちゃんたらっ!」

…年甲斐もなくじゃれつくスケベ親父を見ると、前言撤回をすることにした。


気がつけば旨い高級酒と、慣れない店内に酔ってしまってフラフラと頭がまわり…

「しゃちょー!わかっとるんですか!わが社の経営理念にあるですなぁ、その、地域経済の担い手としてですなぁ…」

「おいおい、がもーちゃん酔っちゃって、その話もう3ループ目だよっ」

「酔ってしまってなんかいましぇんよ!しゃちょー!私はでしゅねえ」

「がもーちゃん…部下に嫌われちゃうよ。そのくどくど型…」



気がつけば、そこからの記憶はまだらだ。タクシーで帰る社長を見送って… …


「部長、部長…ヒロカズさんってば。」

「ん~むにゃ。もう飲めないよう」

「もう、そんなになるまで飲んでっ」

あれ?

気がつくと目の前には満点の星空と、心配そうにオレを見下ろす浦野聡美がいた。


あれ?

…なんでここにいるの?

「あれ?」

「あれ?じゃないですよ!仕事のことで電話したら、“今中央公園の芝生で寝てるとこ~”なんていうから来てみたら…」

「オレそんなこと言った?」

「いいましたよ。誰と飲んでたんですか?」

呆れてため息をつく、浦野。

「いてて…ミカチャン…じゃなかった…社長だよ」

「え!うちの会社の嗣原社長ですか!?」

「うん、まあそうね」


「厳格で、厳粛な性格で知られる嗣原社長と“酒席を共にできるのは取締役級以上”だって聞いたことあります。大変な席に呼ばれたんですね」

うん、とんだスケベ親父だったけどな。


あ、結局二海とのこと、恋愛のこと、聞くの忘れた…。


「うん、まあね。いてて…」

「もう。酔っぱらってそんなとこで寝るからでしょ…」

浦野の手を借りて起き上がる。


「ふぁーあ。なんかお腹空いたね。」

「私も今日は残業だったので、お腹空きましたよ。」

「ラーメン屋でもいくか」

「おごりですか?」

「しゃーねーな」

「やった!」


オレたちは夜の街を再び歩き始めた。




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