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「燃えるような恋をしろ。大声出してのたうち回るような、恥ずかしくて死んじゃいたいような、恋をしろ!」
…と言われても二海のような19、20ならまだしも、こっちはもう38歳。四十の坂を目前に“そんな恋”をしろなんて言われても、そう簡単にできるもんじゃないってば。
そんなことを考えてると、またスーさん…じゃなかった社長から背中をバンバン叩かれた。
「なに悩んでんだ青年!」
ゲホッ…いや、中年だって。
「トシの離れた恋なんて気にするな!オレもそうだし、男はみんな、若いオンナは好きだ!なんなら今夜飲みに行くか!?若い美人のママがいる店につれてってやろか」
ん?なんか、おかしくないか?例えオレが悩んでそうに見えたって、なぜ“恋”に結びつけることができるんだ。しかも「トシの離れた」って言ったよね。社長が。
誰も知らないはずだ。二海とオレと妹と…会社の人間は誰も知らないはずだ。
「てか、社長オレのこと誰から聞いたんですか?!」
「そ、そりゃアレだ。オレのカンだ。カン」
このオッサン絶対なんか知ってる。目が游いでるぞ。
「そうですか、カンですか。へー」
「な、なんだ、その疑いの目は!」
「ま、いいです。社長!飲みに連れてってくださいよ!その美人のママの店!」
「お、おう。」
社長がなんでオレのこと知ってるのか、ゆっくりと聞き出してやる。
そして、その美人のママとやらを拝んでみたかったり。あくまでこれは取材だ。“取材”
「夜の繁華街のネオンは、疲れた男達の心を高揚させる」と誰かが言った。
何度この街を尋ねてもいまだに胸踊る思いがするのはなぜだろう。綺麗な衣装をまとった客引きの女性のせいか。それとも怪しく煌めく色とりどりのネオンのせいか。
社長も60歳を大きく超えてもなお、夜の街をふみしめる度に若返っていってる気がする。
社長のあとを追うままに、繁華街のちょうど中心の12階建てのビルの最上階。
Club華と書かれた看板。高級感溢れる重々しい扉を開ける。
「あら、サブローちゃん、いらっしゃーい」
ホワイトパールを基調とした華やかな店内、ひとりの女性がかけよってきた。
明るい色の緩くカールした長い髪。胸元が開き、深い谷間が覗く。体のラインがわかるスーツに短いスカート。
「もう。久しぶりじゃなーい、サブローちゃん!待ってたのよー!」
「色気ムンムン」という死語がピッタリの美人ママが出迎えてくれた。
年の頃なら30半ばだろう。
「あら、今日のお連れさん、いい男~♪ふだんサブローちゃんが連れてこられるのは年配の方ばかりだもんね♪」
「おいおい!」
社長、その「おいおい」マジ過ぎて恐いです。
「うちの社員だからね」
「おい、蒲生くん、名刺を」
「あ、はい。(株)ネクスト総合経営、経営支援部の蒲生和弘ともうします」
私はうちポケットの名刺入れから名刺を取り出し、差し出した。飲み屋に遊びに来て名刺だすなんて初めてだな。
「はぁい。今日はありがとうございます。その若さで部長さんなんて、スゴいですね。サブローちゃ…いや社長さんにはいつも贔屓にしてくださるんですよー。蒲生さんもどうかご贔屓に♪蒲生さんいい男だから特別にサービスしますよ」
とママが恭しく名刺を出してくる。
【Club華 ママ 蓮子 】と書かれている。
社長の贔屓にしてる店を社員が贔屓にできるわけないのはわかってるはずだけどね。なんて思ってると、従業員の女性が一番奥のボックス席に導いてくれた。
「ねえ、がもーちゃん。ママがいくらキレイだからって入れ揚げないようにね」席につなり、社長が笑顔で口を開く。
漫画ならゴゴゴゴゴゴという効果音が鳴るであろう。背中から物凄いプレッシャーだ。目が笑ってないのが恐いよ!
なんで社長、オレに妬いてるの。つれてきといて!




