女王さまは思いのほか積極的!?2
「……なぁ、サクラ」
俺はそっと声をかける。
「ん……?」
サクラは、繋いだ手を見つめながら、恥ずかしそうに顔を上げた。
「……このままずっと繋いでてもいいけどさ……」
「うん……」
「でも、たぶん……先に、風呂入ったほうが……いい、よな?」
「……っ」
サクラが、ピクッと肩を震わせる。
「……そ、そうだね……」
お互い顔が真っ赤で、もうまともに目を合わせられない。
でも、手は、まだぎゅっと繋がったまま。
や、やべぇ……離すの、惜しすぎる……
「……じゃあ……」
俺が勇気を出して、そっと切り出す。
「い、一旦……手、離そっか?」
サクラは一瞬ためらったあと、小さく頷いた。
「……うん」
けど、すぐには離れなかった。
指先が、そっと、そっと、名残惜しそうに絡む。
「……ありがとね、アルト」
サクラは、ちょこんと首を傾けながら、小さな声で囁いた。
「……こんなに、あったかいの……初めてだった」
その一言に、胸がぎゅっと締め付けられる。
「……俺もだよ」
俺はできるだけ優しく、指を解く。
そっと、ふたりの手が離れた。
でも、離れた瞬間、サクラが小さく「……さみしい」って呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
だめだ……好きすぎる……!
「サクラ」
「……な、なに?」
「すぐ、また繋ぐからな」
俺がそう言うと、サクラは顔を赤らめて、すごく嬉しそうに笑った。
「……約束」
「うん、絶対」
指切りしそうな勢いだったけど、ぐっと我慢して、俺たちはバスルームへ向かった。
バスルームの前で、サクラがそわそわしながら俺を見る。
「……アルト、先に入る?」
「え、俺?」
「だって……待ってる間、私、きっと落ち着かないから……」
サクラがもじもじ言う。
そんなこと言われたら、俺も落ち着かねぇぇぇ!!
でも、ここは男を見せる場面だ。
「……わかった。じゃあ、俺、先に行くな」
「うん……私は買ってきたもの片付けて、待ってる」
サクラがふわっと微笑む。
「ありがと……」
その言葉を最後に、俺は顔を真っ赤にしながら風呂場に飛び込んだ。
……サクラ……そんな顔で「待ってる」とか……破壊力ありすぎだろ……
湯船に浸かりながらも、ずっとドキドキが止まらない。
ボコボコと湯船に沈みながら、俺は頭を抱えた。
……やばい……サクラのかわいさ最強すぎる……
モコモコのうさ耳、短パン、ふわっふわのソックス――
そんな姿で、「アルト」なんて言われたら……!!
頭の中で、勝手に再生される妄想サクラ。
ふわふわの髪に、ゆるっとしたルームウェア。
ちょこんと座って、上目遣いで「おかえり」なんて言われたら――
あああああああああああああ!!!
湯船の中でバシャッ!バシャッ!と水しぶきが大きく上がる。
完全に沸騰。無理っっ!!!尊死確定!!!
壁に頭をゴンゴンと打ち付けそうになりながら、必死で湯気にまぎれて心を落ち着かせる。
やばい……絶対……直視できない……!!
俺は、心拍数がとんでもないまま、なんとか体と髪を洗い終えて風呂を出た。
妄想を打ち消すようにグシャグシャッとタオルで頭を拭き、簡単な部屋着に着替える。
はぁ、はぁ……よし……あとはサクラが風呂行ってる間に、落ち着くだけだ……
深呼吸しながら、バスルーム前のソファにゆっくり腰を下ろした。
……だが。
無理だ無理だ無理だ無理だぁぁぁ!!
頭の中ではもう、ピンクのモコモコうさ耳サクラがぐるぐるしてる。
ちょこんと膝を抱えて座ってたり……ソファにふわっと寝転がったり……
うぉぉぉぉ!!!死ぬっっっっ!!!
顔面を両手で覆って、ソファの上でのたうち回った。
お、落ち着け、落ち着け、俺……っ!
そのとき――
「アルト、次、私……行ってくるね」
サクラが、バスタオルを抱えて立っていた。
妄想をしてるせいか、サクラが普段以上に柔らかそうで……
また想像膨らむだろバカァァァ!!!
「……お、おう!」
必死に頷いて、サクラを見送った。
ドアの向こうで聞こえる、シャワーの音。
あああああああ!!想像すんな俺!!するなって!!
もうほんと、心臓もたない。
そして……シャワーの音が止まった。
く、く、来る……!!!
しばらくすると、ドアノブがカチャリと鳴る。
思わず姿勢を正す俺。
でも、そのとき――
「……アルト」
ドアの向こうから、サクラの小さな声がした。
「な、なに……?」
「目……まだ閉じてて」
「――っ!!!」
な、なんだとぉぉぉ!!!
ドクンドクン、心臓が跳ねまくる。
「……恥ずかしいから……お願い」
そう囁くサクラの声が、耳元に直撃した。
「わ、わかったっ……!!!」
俺は即座に、ぎゅっと目を閉じた。
視界を奪われた分、他の感覚が鋭くなりすぎて、逆にやばい。
足音……こっちに近づいてくる……
や、やばい、心臓止まる!!!
ふわっと、甘いシャンプーの香りが鼻をかすめた。
それだけで、頭が真っ白になる。
あああああああああああ!!!
そして――
サクラの、柔らかい声が落ちてきた。
「……もう、いいよ」
おそるおそる、目を開けると――
そこには、淡いピンクのモコモコうさ耳ルームウェアを着たサクラが、顔を真っ赤にして立っていた。
短パンから覗くすべすべの脚。
ふわふわソックスで足元まで完璧。
そして、恥ずかしそうに指をもじもじさせながら――
「……へ、変じゃない……?すっぴんだし……」
そう聞いてくるサクラ。
かわいすぎて直視できねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
完全に、言葉を失った。
ただ、呆然と、サクラを見つめるしかできなかった。
すると、サクラがそっと……そっと、近づいてきた。
そして、俺に手を差し出した。
「……アルト……」
「……っ!」
サクラの差し出した小さな手。
俺は、震えそうになる指先を必死に抑えながら、優しくサクラの手を取った。
ぴとっ。
触れた瞬間、ビリビリって電気みたいな感覚が走った。
サクラも、びくっと肩を震わせた。
でも、すぐに俺の手を、ぎゅっ……と、握り返してきた。
「……アルトの手、好き……」
小さな、かすれた声で。
「……やさしくて、あったかくて……ドキドキする」
や、やばい……尊死する……!!
俺は顔が熱すぎて、どうしようもなかった。
それでも、ぎゅっとサクラの手を握り返した。
「……サクラの手も……すげぇ、あったかいよ」
照れくさくて、視線を外しながら言うと――
サクラは、恥ずかしそうに笑って、さらに、俺の手に指を絡めてきた。
そして、サクラは小さな声で、ぽつりと呟いた。
「……ねぇ、アルト……」
「……な、なに……?」
「……ギュッてして……?」
まるで子猫みたいな声で、そんなことを言われた。
俺、もう無理だ。
心臓が爆発する音を聞きながら――
俺は立ち上がって、そっと、サクラを。
ぎゅっと、抱きしめた。
サクラの小さな体が、俺にぴったりくっつく。
ふわふわのルームウェア越しに伝わる温もり、湯上りのふわっと香る甘い匂い。
震える肩、ドキドキする心臓の音――
全部、全部……サクラのものだった。
「……アルト、あったかい……」
サクラが、小さく呟いた。
「……サクラこそ、反則級だっての……」
俺も、かすれた声で返す。
でも、サクラは嬉しそうに、胸元に顔をすり寄せてきた。
「……アルト、大好き」
その小さな囁きに、俺の心臓はまたひとつ、爆発した。




