ティーナの物語12
Γゼノ。」
見上げてくる彼を見つめると、深い葛藤に苦しみながらゼノは呻いた。
「……いつか、君は私を置いて死ぬ。そして転生し、また出逢ったとしても、また私を置き去りにして死ぬ。…それの延々繰り返し…例え私を君が覚えていてくれても、死は何度も私から君を引き剥がす。私はそれを何度も見送る。そんなの耐えられない!」
何も言えず、ティーナはただ黙って言葉を受け止める。
「始めは、平気だった。また出逢うし、君も私を覚えてくれているだろうから。でも…だんだん苦しくなっていった。…私は、この上無く君を愛してしまった。」
泣いたのは、ティーナの方。
「ティーナ、私は君と添い遂げたい。人間である君は輪廻の理の中。そこから引き出すことは私でも出来ない。それでも君と共に生き、死にたい。だからそうするために、人になりたい。」
感情のままに、ゼノはティーナの唇を求め顔を寄せた。
ぐっと目を瞑り、ティーナは顔を背けて、それを拒絶した。
「…いけません。」
絞り出すように声を発し、彼女は立ち上がった。
そして彼から数歩後ずさった。
にこやかに笑う人だったのに…
そんな屈託ない笑みを消してしまったのは、自分。
こんな苦しみを与えてしまったのは、自分。
だから、もう楽になって…
「ティーナ?」
「いけません、ゼイノス様。」
手を伸ばす彼に捕まらないよう後ろへ退き、ティーナは言った。
「貴方は神です。人々に敬われ、愛される神です。私一人が独占できる方ではありません。」
ゼノが、美しい顔を歪める。
「…………私を置いて行くな。」
「…もう二度と人になるなど仰らないで下さい。もうそんなに苦しまないで下さい。貴方は全ての人を愛する神。全ての人に愛される神。」
「私を一人にするな。」
「いいえ、貴方は最初から唯一の世界の神。どうか以前の貴方に戻って下さい。貴方が苦しむのが、私と出逢ったことが原因なら、私はもう貴方に会わない。」
涙を流しながらも、きっと顔を上げ、突き放すように言葉を投げる。
「私を忘れて下さい、ゼイノス様。」
「ティーナ!」
「私は、平気です。貴方を忘れます。別に貴方がいなくても、元の生活に戻るだけです。」
身動きしないゼノに、ティーナは微笑んだ。
涙を拭って、にっこり笑った。
「私はもう貴方を愛していない。貴方は必要じゃない。………もうどこかへ行って下さい。私は人になりたがるような貴方に、二度と逢いたくない!」
身体を揺らしたゼノが、目を見開き、その瞳から涙を流した。
神の涙を見た。
酷いでしょう?
どうか嫌いになって
私のことなんか
人間一人のことなんか
ティーナは、走ってゼノから離れた。覚悟が揺らがない内に。




