神がいない世界
010
「正一!!眼帯持って来てくれる?」
「は、はい」
正一も私のこの姿に慄いているようだった。
両目は真っ赤に発光し、私の自慢の黒髪も銀色に変色している。
そしてこの圧力だ。
普通の人間には耐えられないわよね。
私はギリギリで理性を押さえつつ、
正一から眼帯を受け取った。
正一の血を全部吸い尽くしたい衝動はなんとか押さえられた。
私は眼帯を左目にきつく結びつけた。
「KILLBLOOD。あなたは神を信じますか?」
『クソ牧師』が話かけてきた。
胴体を両断されて上半身だけでもまだ生きているなんて、
本当ダークソウルに侵された人間の生命力は化け物ね。
半分化け物の私に言えたことじゃないけど。
「『神』は本当に存在します。見なさい。私の後ろの神々しい姿を」
『クソ牧師』に言われた通りに、礼拝堂の奥に飾ってある巨大な絵を見る。
俯いた少年の絵。
少年の足元で、白い服の男と黒い服の男が血まみれで屈服している絵。
どこか虚無感を感じる絵。
歳は私と同じ位かしら。勘だけどね。
「私はあの『神』と出会いこの力を得ました。そして『神』の教えを
広めなさいと『神』はおっしゃりました。
そして私はこの教団を立ち上げたのです。『神』の言葉のまま・・・・・・
ですがこの力は『悪魔』の力なのかもしれませんね、今思えば、
私こそが一番『洗脳』されていたのかもしれませんね」
『クソ牧師』は語り続ける。
「私を処刑しても、この世界から悪意は消えてなくなりません。
人間がいる限りダークソウルは世界に蔓延し続けることでしょう。
この世界の悪意は『神』が広めたもの、
つまり逃げられない業なのです」
「ふ~ん。なら処刑を続けるだけだわ」
「マハハ。それも一つの手ですね」
「最後に言い残す言葉はある?」
「私を処刑することで、世界中の私の信者は虚無に落ちるでしょう。
それはあなたの罪。一生後悔し続けなさい」
「そ。ありがとう」
私は怨月を『クソ牧師』の首に当てる。
「そして最後に『神』の名を聞きなさい」
私は怨月を振りかぶった
「『神』の名は、き」
その言葉を最後に『クソ牧師』は首を刎ねられ、おっ死んだ。
『神』の名前なんて興味ないわ。
そんなやついるかどうかもわからないし。
私、無神論者だしね。
でも占いは信じる。
乙女ですから♡
パサッ
不意に正一が私にジャケットをかけてきた。
「どうしたの?正一。急に優しくして」
正一の顔を振り返る。
正一の鼻からまた鼻血が出ていた。
「正一は何を見て鼻血を出しているのかな~?」
「楓さんのスカートが破れ、その、お、お、おしりが、うぐっ!?」
鳩尾めがけておもいっきり蹴りを叩きこんでやった。
正一が前かがみに蹲る。
「アハハハ。天罰よ」
正一はスカイ・ポリスに連絡し、
サンダードーム邸は内部調査が行われるようになった。
武器庫の前を通りすぎ、
信者達が祈りを捧げる間を通った。
信者達は各々涙を流している。
洗脳から解放された喜び、
その逆に崇拝する者を失った悲しみ、
彼らの精神は一体どうなることかしら。
私の知ったことじゃないけど・・・・・・
『クソ牧師』がいなくなったことで世界はどう変わるのかな?
正一とマッハバイクが止まっている部屋まで歩いた。
ダークソウルズがいないとここはかなりの広さの建物。
調査するスカイ・ポリスもお気の毒。
「じゃあ帰りましょう。楓さん」
「うん。フルスロットルでね」
正一はアクセルをおもいっきり踏み込んだ。
翌日。
神谷処刑事務所 午前十時。
「今回の依頼本当にありがとうございました。
両親もやっと理性を取り戻しました」
杉野鏡花さんは頭を下げる。
グレッグ・サンダーバードの教団「NEWWORLD」は政府の手によって解体され、
世界中の支部もなくなった。
武器密輸や武器製造。
黒い噂も明るみとなり、
一大宗教家はただの悪徳密売人として世間に知れ渡ることになった。
売り出した音楽ディスク・映像ディスクも全て回収破壊となる。
悪は滅びるそれだけだ。
となりの魔夜さんが処刑費用を計算する
「今回のケースですと、Sランク処刑人一人とEランク処刑人一人の出張費。
マスコミへの依頼料。二時間以内での処刑費。その他込みで、こちらの額になります」
魔夜さんは高速でタブレットに数字を打ち込んで、
処刑費用を提示する。
『¥5,500,000,000』
五十五億円。今回の依頼は大物だったからね。でも高いね~。
「あらお安いのね。本当に良心的な金額ですわ」
スケールの違う世界だー。
「お支払は現金、クレジットどちらになさいますか?」
魔夜さんが尋ねる。
「現金で。外に金庫車を待機させておりますので」
鏡花さんの合図で大量の現金が事務所の中に運びこまれる。
五十五億円その総量をみたことがあるだろうか?
本当に山のような札束の量だ。
「カウントアップ」
魔夜さんが金額を数え始める。
その間僕は鏡花さんと雑談する。
「ご両親は沈んでないですか?」
「元々宗教は信じていない人達ですから、すんなりと洗脳は解けましたよ」
「それはよかったです」
「私もこれからもっと杉野グループが発展できるように頑張ります」
「そのいきですよ」
「五十五億円きっちりとありました。ご利用、誠にありがとうございました」
魔夜さんが頭を下げる。僕も頭を下げた。
「では、また依頼がありました当事務所をご利用下さい」
「本当にありがとうございました」
杉野鏡花さんは笑顔で事務所を出ていった。
清々しい笑顔が、裏の世界の僕には眩しかった。
「須藤さん。あなた宛てに世界処刑連盟会長から令状が届いていますよ」
「これですか?どれどれ」
令状を開けてみる。
!!!!?
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!?」
令状はとんでもない内容だった。
処刑対象『グレッグ・サンダーバード』処刑完了。
処刑場所「アメリカ NEWWORLD本部 サンダードーム邸」
依頼№50『洗脳』
完




