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てんしとこいぬ (漢字あり)


みずいろの空を、小さなてんしが飛んでいました。


その時、びゅうっと強い風。


どこからか飛んできた布が、てんしをすっぽり覆いました。


布は、なかなか離れません。


「わっ……!」


てんしは、ひゅるひゅると地面へ。


翼を、痛めてしまいました。


草むらで、こいぬがてんしを見つけました。


「大丈夫?その怪我…」


てんしは、怖そうにこくんと頷きました。


「おうちに帰りたい…」


でも、翼はうまく動きません。


こいぬは、てんしのそばに寄り、そっと体を支えました。


温かいぬくもりが、伝わります。


「一緒に探そう」


てんしは、少し驚いたようにこいぬを見ました。


「一人じゃないよ」


こいぬは、優しく言いました。


てんしとこいぬは、寄り添いながら森の仲間たちの元へ尋ねに行きました。


草むらで、しかに会いました。


しかは、そっと丁寧に言いました。


「この草はね、痛みを和らげてくれます」


「大切に、使ってくださいね」


川で、かめに会いました。


かめは、ゆっくりと落ち着いた声で言いました。


「急がなくていい」


「ゆっくりでも、進んでいれば大丈夫」


湖で、はくちょうに会いました。


はくちょうは、まっすぐ道を示すように言いました。


「きみは、空に帰る子だよ」


「飛ぶ練習をしよう」


てんしは、はくちょうと一緒に少しずつ翼を動かします。


「……怖い」


翼が、少し震えていました。


てんしは、こいぬを見ました。


こいぬは、頷きました。


「いっしょにやろう」


こいぬは、そう言っててんしの横に並びました。


「せーの、でいこう」


てんしは、ぎゅっと目をつぶって、こいぬと一緒に地面を蹴りました。


とん、とん、とん。


ふわり。


てんしの体が、そっと浮き上がります。


こいぬは、下で一緒に駆けながら、嬉しそうに見上げていました。


今度はもう、落ちません。


てんしは、空へ帰っていきました。


こいぬは、しばらく空を見上げていました。



寒い日。


こいぬは、雪の上で伏せていました。


その時——


空から、優しい形がたくさんあふれるように降ってきました。


それは、てんしの「ありがとう」がこぼれて形になったものでした。


「ありがとう」は、静かに森中へ広がって、みんなを温かく包みました。


てんしが、空から降りてきて、みんなの前に立ちました。


一つ一つ渡すように、少しどきどきしながら——


「ありがとう」


てんしは、はっきりと言いました。


そして、こいぬのほうを見て、ふわりと笑いました。


「また会えたね」


こいぬは、嬉しそうにしっぽを振りました。


こいぬの心も、ぽかぽかになりました。


おしまい。

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