表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された遺物回収屋の俺、【解体】でハズレ遺物の中身まで抜けるので、攻略組より先にレアスキルを独占する  作者: 小狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/22

第22話 解体Ⅲ

 廃棄区画の前に来ると、廊下に管理部門の作業員が2人いた。


 昨日まで1人だったのが、今日は2人だ。

 端末を挟んで何かを確認している。蓮司がシャッター前に近づくと、片方が顔を向けた。


 「今日の昼前に正式な確認が入る。担当者が来て区画内を記録するから、作業の邪魔になるかもしれないが頼む」


 「分かりました」


 「夜間巡回の記録で、この区画前の痕跡が3日分連続している。音の報告も重なったから上に上げた。今日の確認はその対応だ」


 もう一方の担当が端末をスクロールして「搬入ルートの変更案が出てる。後で確認を取る」と言った。


 「ルートが変わりますか」


 「まだ案の段階だ。七層品の搬入量が増えてから流通の見直しが入っている。決まったら通知が行く」


 2人は端末に戻った。

 「夜間の傷、3日前と昨日で量が倍以上になってるな」「この写真と比べると分かりやすい」という声が続いていた。


 蓮司はシャッターを引き上げた。


 中に入って【魔力感知Ⅲ】を起動すると、分散させた遺物の流れが廃棄区画全体から届く。

 昨日より強くはなっていないが、台車の脚に新しい引っ掻き傷が入っていた。

 夜の間にも来ていた。


 廊下から「このまま痕跡が続くなら夜間の封鎖時間を延ばす方向で話が進む」という声が聞こえた。



 ◇



 午前中は六層品の残りを処理しながら昼前を待った。


 外殻に触れると構造が分かり、力の通し方が先に見える。

 3件を処理するのに20分かかった。

 手を動かしながら、頭の中では別のことを考えていた。


 壁際の先行品を時々確かめた。

 『流れを一段絞れた』感触まで来ていた遺物は今朝も同じ状態で置いてある。

 昨日絞った流れの形がそのまま保たれていた。


 昼ごろ、廊下から複数の足音が近づいてきた。


 「確認に入ります」


 管理部門の担当が3人入ってきた。

 記録担当が端末を構えており、棚の確認担当が別に動き、入口付近で全体を見る担当が1人いる。


 「夜間の痕跡記録に基づいた正式確認だ。作業中に失礼するが、区画内の状況を記録させてもらう」


 「どうぞ」


 3人が廃棄区画の中を順に確認していく。

 棚に積まれた遺物の配置と数を端末に入力する者、床の状態と傷の位置を記録する者、入口から全体の配置を確認する者。

 懐中電灯の光が棚の奥を走り、台車の脚もとを照らした。


 「遺物の配置を変えたと聞いた」


 「七層品が来てから、密度の高い遺物を入口に近い側に集めました。何か起きたとき対処しやすい位置で管理するためです」


 「配置変更は作業者の判断でできるから問題ない。記録しておく」と記録担当が端末に入力した。


 棚の確認担当が奥まで入って木箱の数を数えている。

 台車の周辺を確かめたもう一人が「傷の量が増えてるな、前回の確認より多い」と言い、記録に追記していた。


 「七層品が来てからですか」


 「記録上はそうなる。七層品の搬入が始まった日から痕跡の密度が上がってる。なぜかはまだ特定できていない」


 蓮司は作業を続けながら3人の動きを見ていた。

 廃棄区画の中を丁寧に確認しているが、壁際の先行品には近づいていない。

 【魔力感知Ⅲ】で確かめると、先行品からの流れは今も続いている。

 担当者には届いていなかった。


 確認が終わり、3人が入口付近に戻ってきた。


 「現時点では記録上の問題はない。ただし夜間の痕跡が続くなら封鎖時間の延長が入る可能性がある。その場合は事前に通達が出る」


 「搬入ルートの変更はどうなりますか」


 「まだ検討中だ。七層品の扱いが増えてから流通の見直し案が出ている。変更になれば廃棄品の扱いも変わるから、詳細は別の担当から連絡が行く」と記録担当が端末を閉じた。


 足音が3つ、廊下の向こうへ遠ざかった。


 廃棄区画がまた静かになった。

 廊下の奥で誰かが荷物を動かす音がしたが、すぐに遠くなった。

 管理部門の3人は事務的に動いていた。

 夜間の痕跡は正しく記録され、搬入ルートの変更も本物の話として進んでいる。

 ただし、危険遺物の流れには誰も届いていない。



 ◇



 廃棄区画が静かになってから、蓮司は先行品の前に立った。


 今日の確認で問題なしという記録が出た。

 封鎖時間の延長も、搬入ルートの変更も、今日の時点ではまだ確定していない。

 だが今朝の廊下の人数と、今日の確認の本気さを見れば、この状況が長続きしないことは分かる。確認が続けば次は制限が来る。


 『流れを一段絞れた』感触まで来ていた先行品を手で確かめた。

 今日の手触りを確かめると、昨日絞った感触がそのまま残っている。


 今日やる。



 ◇



 台車を壁際に動かして、周囲の遺物と間隔を取った。


 【精神集中Ⅱ】を意識して、頭の中の余分な音を沈めた。

 今日の午前中に管理部門が来たこと、搬入ルートの変更案、夜間の封鎖時間の話。

 すべてが遠くなって、手の中の遺物だけが残った。


 遺物の外殻に触れた。


 【魔力感知Ⅲ】で外殻の表面を読んだ。

 先日絞り込んだ流れの向きは変わっていない。

 外に向かっていた流れが内向きに折り返している。

 流れの入口と出口がある。

 今日はそこを起点に、力の通し方を変える。


 【解体Ⅱ】を流し込んだ。


 最初の1層が静かに剥けた。力の余分な部分が出ていない。

 【精神集中Ⅱ】が効いている。

 力の方向が定まるまでの迷いが今日はなかった。


 2層目に差し掛かった。


 跳ね返しが来た。

 今の【解体Ⅱ】でいつも止まる場所だ。

 押し返す硬さの感触を確かめながら、その中に柔らかい場所がないか読んだ。

 硬い中に、力の向きを少し変えれば通せる角度がある。

 これまでの挑戦でその角度の手触りが少しずつ分かってきていた。


 角度を変えた。


 力が食い込んだ。2層目を越えた。


 3層目に入った。

 ここも跳ね返しが来るが、2層目と構造が違う。

 向きを変えて入れる場所を探した。

 時間をかけた。焦りはなかった。

 【精神集中Ⅱ】が余分な緊張を削ぎ落として、手の感触だけに集中させていた。


 3層目を越えた。


 4層目が見えた。

 以前は3層目で押し返されていた。

 今日は違う。4層目に入ると構造が前の層と変わっていた。

 密度が均一ではなく、方向によって硬さが違う。

 どこから力を通すかを探しながら、少しずつ奥へ進んだ。


 4層目を越えた。


 5層目で一度止まった。


 ここの密度は4層目より高く、単純に角度を変えるだけでは跳ね返す。

 力の通し方そのものを変える必要があった。

 力の流れ込む速度を変えた。

 速くではなく、ゆっくりと、ただし細く一点に絞って送り込む。


 少し食い込んだ。


 続けた。

 跳ね返しの中に隙間が生まれた。

 その隙間を広げるのではなく、隙間を通して力を奥へ送り込む形にした。


 5層目を越えた。


 6層目が目の前にあった。


 内部核がある。

 今まで輪郭しか届かなかった位置が、今日は具体的な形として手に届いていた。

 核の表面の構造が分かる。力を入れる場所が分かった。


 細く絞った力を、核の表面に向けて送り込んだ。


 跳ね返しが来た。角度を変えた。もう一度。


 今度は食い込んだ。

 外殻の奥に固まっていた何かが動く感触があった。


 もう一度。


 核が手の中に出てきた。


 六層品のものより濃い色をしていた。

 形は不規則で、入り組んでいる。

 触れた瞬間に何かが来るかと思ったが、核は静かだった。

 流れを出し続けていたのは外殻だったということだ。


 吸収した。


 その瞬間、手の感触が変わった。


 体の内側ではない。

 廃棄区画の棚に積まれた遺物が、触れていない距離から届いてくる。

 層の数が、空気の中に滲んでくるような感触だ。

 今まで触れて初めて分かっていたものが、触れる前に届いている。


 頭の中で名前が変わった。


 【解体Ⅲ】。



 ◇



 廃棄区画を見渡した。


 棚の木箱、床の台車、壁際の遺物。

 それぞれから構造の情報が届いてくる。

 層の多さ、内部核の位置、流れの入口と出口。

 触れる前から届いている。廃棄区画全体が、以前より立体的に見えた。


 壁際に残っている危険遺物に目を向けた。

 4件。先行品の残り1件、それから本格搬入で届いた3件だ。


 先行品の残り1件を確かめた。

 今まで届かなかった遺物だ。

 【解体Ⅲ】で感触を確かめると、層の輪郭が前より明確に分かる。

 以前は「届かない壁」として感じていたものが、今日は構造として見えている。

 どこまで届くかの境界線が分かった。

 まだ簡単にはいかないが、「届かない」から「どこまでなら届くか分かる」に変わった。


 本格搬入で届いた3件を順に確かめた。

 こちらはまだ重い。層が多く密度が高い。

 【解体Ⅲ】でも3件の構造は一段複雑だ。

 どこから入れるかの輪郭は前より読めるが、今日すぐに届くものではない。


 今日処理した先行品があった場所の流れが消えていた。


 廃棄区画の空気が少し変わった。

 今まで感じていた複数の流れの重なりから、1件分が抜けた。

 残り4件の流れは続いているが、重なりが弱まった分、廃棄区画の感触が前より静かになった。



 ◇



 台車を壁際に押して、廃棄区画の中心に立った。


 廊下の外で台車の音がした。

 別の区画の作業員が荷物を動かしている。

 廃棄区画には関係ない。

 音が通り過ぎて、廊下が静かになった。


 4件残っている。


 先行品の残り1件は今日の感触で次に向かう方向が見えた。

 本格搬入で届いた3件は今日より先がまだ重い。

 管理部門の確認は今日終わったが、夜間の痕跡が出続ければまた来る。

 封鎖時間の延長が決まれば廃棄区画で動ける時間が削られる。

 搬入ルートの変更が決まれば、次の七層品がいつどこから来るか分からなくなる。


 シャッターを下ろそうとして、廊下の壁に目をやった。


 掲示が1枚増えていた。

 今朝にはなかった紙だ。

 『廃棄区画周辺 夜間立入制限 強化』という文字が見えた。

 開始日時が記してある。明日からだ。


 突破口は開いた。

 今日の1件が証明した。

 だが管理部門は今日より動いていて、次の搬入がいつ来るか分からない。

 4件が廃棄区画の中に残っている。


 シャッターを下ろして廊下に出た。



【相馬蓮司 現在取得スキル】※【解体Ⅲ】進化


 ■ 固有

 【解体Ⅲ】★進化

 ■ 感知

 【危険察知】 【遺物探知Ⅱ】 【魔力感知Ⅲ】 【闘気感知Ⅰ】

 ■ 身体強化

 【身体強化Ⅲ】 【強靭化Ⅲ】 【反応速度強化Ⅱ】

 ■ 耐久・回復

 【治癒Ⅰ】 【毒耐性Ⅱ】 【炎熱耐性Ⅱ】 【精神耐性Ⅱ】

 ■ 移動・作業・その他

 【軽量化Ⅲ】 【暗視Ⅱ】 【空間把握Ⅱ】 【気配遮断Ⅰ】 【精神集中Ⅱ】

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ