第21話 集積の代償
シャッターを引き上げる前に、一度止まった。
【魔力感知Ⅲ】を起動すると、壁際台車の方向から流れが届いてくる。
昨日とは質が違っていた。
5件の流れが重なって廃棄区画全体に染み込むような感触で、1件のときに感じていたものとは範囲が違う。
シャッターを引き上げて中に入った。
台車の脚の周辺を確かめると、引っ掻き傷の数が昨日の帰りとは比べ物にならないほど増えていた。
台車の周辺だけでなく、棚の脚もとや入口に近い床の端にも、何かが動いた跡が残っている。
【危険察知】には今は何も届いていない。
夜の間に来て、また戻っていったということだった。
◇
台車の前に立って、昨日の判断を確かめた。
5件を一か所に集めた。流れが重なれば引き寄せる力が強まる。
それが昨日の夜に起きたことで、今朝の状況はその結果だった。
集めることで対処しやすくなると判断したが、流れの重なりまで計算に入れていなかった。
配置を組み替えることにした。
5件をまとめて管理するのではなく、廃棄区画の中で距離を取って分散させる。
処理できるものから削って数を減らす方が先で、集積を維持するのは逆効果だった。
3件を棚の奥の別々の位置に移した。
流れの重なりが弱まって、廃棄区画の空気が少し落ちついた。
【危険察知】の揺れは続いているが、複数方向から届いていたものが少し収束した。
◇
昼前に、管理部門の作業員が1人来た。
廃棄区画の入口から棚の状況を確認してから、床に目をやった。
「昨日の夜、この区画の前で音がしたって報告が入ってた。問題ないか」
「今朝確認しましたが、異常はありませんでした」
作業員はそれ以上の確認はしなかったが、帰り際に「最近この棟で夜間巡回が入ってるから、何かあれば連絡を」と言い残して出ていった。
足音が廊下の向こうへ遠ざかる。
廊下の奥で台車の音がかすかに聞こえた。
別の誰かが荷物を移動させている。
廃棄区画の外では、いつもと同じ午前中が続いていた。
蓮司は棚の前に戻った。
管理部門が夜間巡回を始めている。
廃棄区画の中まで踏み込んでくるのは今日ではないが、夜の痕跡がこの規模で続けば、次の確認は入口の外だけでは済まないかもしれない。
◇
午後、七層通常品の処理を続けた。
危険な流れを持たない遺物を3件、棚の前列から順に手に取った。
外殻の密度は高く層が多いが、内向きの反応だけのものは力の通し方が読みやすい。
1件ずつ順に処理して、内部核を吸収した。
棚の木箱は、処理しても次が積まれた状態が続いていた。
◇
夕方、先行品の1件を手に取った。
外殻の輪郭が届く感触があった、あの遺物だ。
触れると力が跳ね返る。まだ届かない。
一度力を抜いた。
【精神集中Ⅱ】を使って、送り込む力を細く絞った。
前回より角度を変えて、流れ込みの方向を細かく調整する。
跳ね返しは来るが、その跳ね返しの手前で、外殻の表面を走っていた流れが向きを変えた感触があった。
外に向かっていた流れが内側に折り返す。
完全には止まっていない。
だが向きが変わった分、廃棄区画に向けて出ていく流れは少し細くなった。
遺物を木箱に戻し、台車を壁際に置いた。
台車の脚の傷は今夜もまた増える。
分散させた分、昨夜よりはましになるかもしれない。
それでも5件が廃棄区画の中にある状況は変わらない。
次の搬入がまた量で来れば、今日の5件に追加が積まれる。
次の搬入が来る前に、今ある分を減らさないとまずい。
シャッターを下ろして廊下に出た。
【相馬蓮司 現在取得スキル】※新規取得なし
■ 固有
【解体Ⅱ】
■ 感知
【危険察知】 【遺物探知Ⅱ】 【魔力感知Ⅲ】 【闘気感知Ⅰ】
■ 身体強化
【身体強化Ⅲ】 【強靭化Ⅲ】 【反応速度強化Ⅱ】
■ 耐久・回復
【治癒Ⅰ】 【毒耐性Ⅱ】 【炎熱耐性Ⅱ】 【精神耐性Ⅱ】
■ 移動・作業・その他
【軽量化Ⅲ】 【暗視Ⅱ】 【空間把握Ⅱ】 【気配遮断Ⅰ】 【精神集中Ⅱ】
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