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⑫聖地アヴァロンの罠師 1879年5月
その時、斧がステンドグラスを叩き割る音がした。
血まみれで壁をよじ登り飛び込んできた男が、純銀製の巨大なシャンデリアへ跳ぶ。
その恐ろしい顔を、フレディは忘れられない。
あれは、人間の顔ではなかった。
しかし間違いなくその姿は、聖地アヴァロンの盾――父だった。
父はシャンデリアにしがみつき、斧で金具を叩く。
幼いフレディにも理解できた。
父は、死んでも人狼を殺すために、このシャンデリアを落とすのだ。
舞踏場の全員が、息を飲んで微動だに出来なかった。
ただ一人、狩人だけが、静かな目をしていた。
人狼の心臓近くへ、一弾。
次の瞬間、逆上した人狼の爪が、母を裂いた。
そして――アヴァロンの盾は、純銀製の巨塊もろとも、人狼王目掛けて落ちた。
轟音。
人狼王は、ひとたまりもなく絶命した。
そして・・・・・・
フレディ「父は、即死だった・・・母も。」
彼の眼は虚ろだった。
館の窓の外、白い雪が降り積もる。
フレディは何事か低く呟いたが、風の音がそれを消した。




