アスターの民2
シロル=ハーベスターは、外でさえずる鳥の声で目を覚ました。
目を開けると、視界には天井が広がっていた。
もちろん、見覚えなどない今この瞬間に初めて見た天井だ。
なんとなく、天井へ手を伸ばしてみると、手には包帯が巻かれていた。
自分の怪我が手当てされているのを見るに、どうやら誰かに保護され、この部屋で寝かされていたということがわかる。
とりあえず、昨日の記憶を整理してみる。
確か樹海を朦朧とした意識で歩いていた時に、歌が聞こえてそれを辿って歩いていたはずだが・・・そこからが思い出せない。
起き上がって辺りを見回すと、そこは必要最低限の家具が置かれた簡素な部屋だった。
部屋にある机の一番目立つところに飾られているのは、仲睦まじい雰囲気の夫婦とその娘であろう姉妹が四人笑顔で写っている写真だった。
「それは昔撮った私と両親の写真です」
いつの間にかドアから入ってきていた少女が話しかけてきた。
シロルはまずこの異郷の地で言葉が通じることに驚いたが、まず、人様の部屋を勝手に物色してしまったことを謝罪した。
「ご、ごめん勝手に」
「いいえ、気にしないでください。」
「ここは君の家?」
「はい、そうです。ここから少し離れたところに花畑があるんですけど、昨日、その花畑で貴方が倒れていたところを運んできました。」
「なるほど・・・」
だんだん記憶が蘇ってくる。
(歌を辿って歩いていたら、少し開けた場所に出て、そこの花畑で女の子が・・・!?)
シロルは彼女の顔を改めて見た。
「えーっと、君って花畑で歌っていた・・・?」
「えっ!?聞いていたんですか?あの、その、あそこはここに住んでる人もなかなか行かない場所で、だからそのですね・・・油断していたといいますか・・・」
歌が聞かれていたことが恥ずかしかったのか、少女は顔を真っ赤にして弁明する。
「ああ、いや!樹海で迷っていたら、君の歌が聞こえてきて、それを辿ってきたらあそこにたどり着いたんだ!だから君が樹海に響くような声で歌ってくれてなければ・・・」
「樹海に響く・・・!!」
シロルの言葉に、少女の頭のてっぺんからぶしゅーっと蒸気が出そうなほどさらに顔を赤面させる。
「「・・・・」」
(なにやら気まずい雰囲気になってしまった)
重苦しい空気が部屋の中に充満し始め、息苦しくなってくる。
「あっそうだ!名前!僕はシロル・ハーベスター。君は?」
「私は、ヨメナ・アスターといいます。えーっと・・・」
ヨメナが自分のことを紹介しようとするが、目の前にいる少年のお腹の虫が盛大に泣いた。
今度はシロルが頭のてっぺんからぶしゅーっと蒸気が出そうなほど顔を赤面させた。
「とりあえず、朝ご飯にしましょうか?」




