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互いに

互いに



 いきなりダイランと連絡が取れなくなった事でフィスターはロジェスキー=グランディス=ジェポンの実家葬儀へと駆けつけて来たのだ。

ダイビング自殺した女性の身元が、実は投身自殺したロジェスキー=グランディア=ジェポンの父親の会社の人間だった事が分かっていた。ラヴァスレッイリが各州の警察に入り溺死身元不明者、重点をジェポン、サダン周辺に回り行方不明者を仔細に調べたという。その事で挙がったのが、ジェポンの会社の女設計士、マリアの事だった。

その設計士の携わった仕事を全て調べて行くと、浮上したのが例のマリー=ローズが飛び降り自殺したマンションだった。その事を老婆は言わなかったが、設計士の自殺を知っていた可能性は低かった。

ずっと身元が唯一不明だった女の正体で3人の関連が繋がった様に思えた。

ダイランが、遺体が消えた少女の父親が実は州警察本部長だった事を言うと、フィスターは驚いた。

「今、ここにMMとマンションオーナーが共にいるのでしょう?事情を聞きましょう。グループのサダン社長はいらっしゃって?」

「いや。弔問には訪れていない」

「紫の会……」

「何がだ?」

「はい。銀や黒もあります。マンションオーナーはココ・ソカと同じ性癖を持っていて、ダイビング自殺した女性もそれらの会に関わっていた可能性があります。その頃から知り合いだったのではと。その中での怨恨の可能性や企業に関わってこれはMMが彼等を指揮した元での営利目的の殺人なんだわ!」

「また、決め付け……おい!だから待てって言って」

フィスターは急いで走って行った。

ダイランは追いついて腕を引き、自分の後ろに行かせてから少年少女を保護している様に言い、コーサーを見つけ急いで来させるとドアを潜り室内に入って行った。

ダイランはポッカーの両親を呼び寄せ、MMは葉巻を灰皿に置き、マンションオーナーは髪に手を当て整えていた。

コーサーに2人を見張らせ、彼はMMをいつもの横目で見ては、MMも冷たい目で見ては互いに顔を反らし合った。

室内隅に設けられた応接セットでダイランはジェポンに尋ねた。

「サダン社長は来たのか」

「いや。彼は忙しい身だ。今の時期は特にね」

「仕事の関係で?」

「常に忙しいと言った方が適当だが」

「MMはサダン社長とビジネスに関わる深い交流が?」

「それは本人に聞いてくれ」

MMは目を伏せて彼を見て、彼は目を反らしダイランの目をまるですがるように見て来た。

「おい。お前はサダンと関わりがあるのか?会員繋がりなんだろう。ポッカーの母親は確実に会員だったんだぜ」

妻はMMの横顔を見て、契約破棄された事実は黙っていた。

「あんもグループも巨大な企業だ。アメリカ進出の一角ろしてビジネスで関わっていた筈だ。その関係でジェポンや溺死自殺した女設計士とも関わっていた筈だ。どうなんだコーサー。お前、俺より企業に詳しい筈だろう」

「ああ。サダングループは今、革新的に大きなプロジェクトを実行しているからな。だが内容はいまだ極秘事項だ。そうですよね社長?」

「当然」

「あんたも当然そのプロジェクトに子会社として関わっているんだろう。MMは指揮官や役員に加える契約を進めているからこそ現在プロジェクトを共に推し進めるジェポンの屋敷の訃報時に来たとしか思えねえな。それか、全員が特別な繋がりのある会員だったからだろう。ポッカーもローズも女設計士も妻もな」

ジェポンは視線だけを他所の床に向けたまま、MMは髪を流してから鋭い上目で立ち上がった。

「そんなに俺を何がしかの犯罪にこぎつけたいのか」

「ああ」

「そこまで俺を犯罪者にしたいって言うなら裁判でも起こそうじゃねえか。え?あんたは、」

そう、ダイランの前まで歩いて来てとんっとその鳩尾を小突いてダイランは立ち上がっていたのを背後のソファーにバランスを崩しどさっと倒れ胸部をさすってMMを上目で睨み、口をつぐんだ。

「俺より相当犯罪経歴に長けているのはあんただろう。それを警察に揉み消さ」

「何が言いたいんだお前。お前が製作した自殺映像の事を言ってるんだろうが」

「俺には犯罪経歴がまっさら無い。だがあんたは強盗殺人、麻薬密」

勢い良く飛び起きたと共にMMの額に銃口を突きつけ黙らせた。

「事実を詐称してまで一警官を犯罪者にしたいって言うならお望みお通り強硬手段を取ってでも連行しようじゃねえか。元々生ぬるいやり方が大っ嫌いなんだよ。今すぐ強制的に署だろうがムショだろうが突っ込んでやる」

「ガルド。余り感情的になるな」

そうコーサーに肩を引かれ、ダイランは冷静だが睨む様な鋭い目を肩越しに見てから、またMMに顔を戻すとMMはダイランを艶っぽく上目で口端を妖しく引き上げ微笑み見た。ダイランは眉を顰め、俯いて口から血が絨毯に流れ出た。

口を押えて指から血が落ち、コーサーが首を振りハンカチを渡した。さっき、ただ鳩尾を小突かれただけだ。しかも指一本だったのに強烈にどつかれた様に吹っ飛んだのは、気孔をついたからだと分かっていた。だがあれが修行を重ねた人間が出来る中国の気孔術だ。

MMが2メートルの背の上スレンダーな素晴らしいプロポーションに恵まれた均等の取れた等身だと言う事は分かっている。だがそれだけだ。

ダイランは口元を拭いてから、吐き気がして部屋から大股で出て行った。

フィスター達の横を通り抜けレストルームに駆け込み競りあがった胃の中の血を吐き出し咳き込んだ。血が跳ね返り洗面器に広がり、それを蛇口を捻り流してカウンターに手を着いた。

「大丈夫?」

ざっと振り返り、エリーに向けたままの先程の優しい声音でMMが底意地悪く微笑み、口元を目元を引き上げ背後から彼の顔を覗き見た。

ダイランは一瞬、ぞっとして上目になった。首を伸ばし真っ赤な血の出る口端をぺろりと舐めたからダイランは多少白くなってそれと水銀の瞳を手を震わせ見ていた。そのカウンターに付ける両手に両手を重ね微笑し、口の中の血を全てさらって行き喉を鳴らしたからダイランは一瞬不気味さに恐怖を覚え動けなくなった。まるで血肉を貪る獣の冷静な目は奥だけが悦とし、引き上げた口端から牙が赤く一瞬覗いた。

「ダイラン、何か怖いの?」

そう人間味ある微笑みで言い、逃げようと視線を反らした真っ青のダイランの冷たい頬を捕えキスをし、牙で舌を噛み千切らんばかりに噛みついた。

ダイランは叫んでMMの背中をバンバン叩き、頬を掴まれる手の甲を引っ掻き口の中が血でむせ返った。目を開くと美しいのに悪魔の様な恐ろしい顔で冷たい色の目を剥くMMが食い殺すかの様な形相で牙を離さないままカウンターのミラーに背を叩きつけ、後頭部と背後でバリンと音が鳴った。背中の痛みは無いが、舌を噛み切ろうとする激痛は耐えられなかった。

ダイランは殺される前に逃れようとしたが、MMは噛み付く牙を離さなかった。頬から手を離すとミラーに爪を立てMMの血まみれの手が4本の線を引き、正気とも思えない。

糞、こいつ狂ってやがる。

自分の血で溺れそうになり、一瞬この20年も忘れていた溺れた恐怖が蘇ると呼吸を奪われ、MMは死を嗅ぎ取るかの様に目を氷の様に鋭く光らせた。ダイランの目が弱まり牙を離すと、真っ赤な口元を微笑ませ、血に染まる淡いローズクオーツ色の唇を舐めた。

ダイランはMMを睨み手の甲で口を押え、MMの頬を手の甲で払おうとしたが手首を掴まれ壁に叩き付けられた。ダイランはバウンドし跳ね返り支えられ、MMの真っ白の服に血が舞い飛び間近のMMの顔を鋭く睨んだ。

「まだ好きだって言える?」

「……、」

ダイランは泣きそうになっては顔を反らし、MMは妖艶に微笑んでダイランの頭を両腕で抱き寄せ頬を付けながら言った。ダイランは自分の血に染まる白の肩の向こうの床に視線が硬直した。

「あたしは、好きよ。あんたって可愛いんだもの」

そう耳に囁き言い、ダイランは口を噤んで真横の瞳を見た。耳が熱くなったのが分かった。

だが完全にSだこの女は。ダイランは逃げようと頭は訴えているが、足が動かなかった。動きたくも無いのかもしれない。血は流れなくなると徐々に息苦しさも薄れて行き、MMから顔を背けて流れそうになった血を飲み込んだ。

「ねえダイラン?」

顔はまだ真っ青なまま背を付け床を見ていた。その冷たい頬にキスを寄せ上を向かせた。

「まだ好きならなんだよ」

「嬉しい事言うわね。本当?」

ダイランは視線を上げ、壁に手を着けるMMの顔を見つめると、顔を傾け瞳を閉じ、キスして首に腕を巻きつけた。

駆けつけたフィスターはビックリして邪悪な空気の中、血にまみれながらキスをし合う異常な2人を見上げ驚き、リグの目を塞いでエリーの後ろに行かせ、何やら真っ青なダイランから血まみれのMMの高い位置の肩を必死になって引いた。

「犯罪者から警官への油断させる行為は犯罪です!!」

ダイランは冷たくなっていた腕をさすって口を噤んだ。

MMは両手を広げてくるんと向き直り、フィスターに言った。

「ハッ随分だな。治療してただけじゃねえか。傷口をぺろりと舐めて消毒しただけだ」

「あなたは紫や銀だとか黒の会を持っているわ。自殺した者達もあなたの会に入っている」

フィスターはMMを睨み、ダイランの様子を窺う様に目を向けるとダイランがMMの背を見つめていたからショックを受けた。まるで、子供の雄猫や叱られた少年の様に上目で見つめているのだ。壁に寄りかかり両手をだらんと下げて。いつも毅然と恐い顔をしている彼のあんな顔、見た事も無かった。

「警部しっかりして下さい、」

ダイランはハッとして口を閉じ、目元を引き締め冷たい顔を擦った。

「自殺に導かせる様な日常や活動内容や脳内的な自然ドラッグであなたは会員達を暗示や洗脳を掛けてるんじゃないの?!映像ドラッグ、活動ドラッグ、音楽ドラッグなどでよ!さっきみたいに強力な何かで警部を恐怖に自然に陥れた様に!」

「失礼言うなよ」

「眼力だって犯罪になる時があるわ。集団暗示というね。それに引き込まれて集団ヒステリーや集団自殺、暗示による殺人命令、集団殺戮だって有り得る事だわ。自殺をして行った彼等をあなたは何らかの形で暗示に掛けたんでしょう」

「俺の会は麻薬を厳禁にしてるんだよ」

「だから、脳を直接個人が洗脳するって言う事をね」

「そんなマジシャンみたいな真似出来るわけねえだろう」

「あなたなら可能な筈よ何かの強力なカリスマ性を備え持つから間接的に人を操り犯罪に傾けさせる事に長けるんじゃないの?」

「誰を傾けさせるって言うんだよ」

「全ての人をよ!!会員全ての人、それにココ・ソカやジェポン社長やサダン社長をね。設計士の女性との因果関係を言いなさい」

「お前、よく警官なんかになれたな。俺が上司ならそんな訳分からない当てずっぽうの適当を言う部下は即刻首だぜ」

フィスターは呆れて、せせら笑うMMを睨んでから地団太を踏んだ。

「感情的だってBRとさっきも話し合ってたんだぜ」

フィスターの眉がぴくりと動いた。

「お前、この兄さんの事早々に気になって狙ってるんだろう?」

ダイランが驚いてぽかんと口を開きフィスターを耳を赤くし見て、フィスターはしどろもどろになり、MMを睨んだ。

「マイアミの恋人が死んでまだ数ヶ月だってのに、涙も乾かぬ内からよくよく酷い女だな」

ダイランは瞬きしてフィスターの顔を見た。

「死んだ?」

「……、警部、あたしは、」

フィスターは真っ青になってダイランを見てから、言葉をなくした。

「いつも天使みたいに気取りやがってこの女は、マイアミの故郷じゃあ大した嫌われ者だよなあ?無残にハイジャックで殺されて失った男の葬儀にわざわざ行って親族や友人の前でお前は、冷めた面して彼が勝手に殺されて死にに行ってくれてせいせいしたとかどうとかさらりと言ったそうじゃねえか。エリッサ署のアイドル、エンジェルフィスター?命も何も本当はどうも思わずに自分の恋人も死ねば、もう用無しで即刻切り捨てて今じゃあ他の男にエンジェル顔かよ。浅ましいんじゃねえの?」

フィスターは足元を見て大きく息を吸い吐いてから、戦慄いた口をきつく閉じて言った。

「……確かにそうよ、あたしは最低だわ」

フィスターは顔が上げられず俯いたままそう言い、ダイランは今にも涙が零れそうなフィスターを、口を微かに開き見つめた。

MMは嬉しそうにダイランの腰を引き寄せた。

「こちらでもらう。冷淡な悪女は去りな」

そうフィスターの細い肩を軽くどついて、ダイランを向き直り地面を見つめたダイランの睫を見下ろした。

「最低なのはお前の方だ」

「最低?結構。手に入れたいなら方法なんか糞食らえだね」

「腐った女だ」

「……」

MMは口を噤んでダイランの鋭い目を見て、エリーはフィスターの手を握って上目でMMの背を見た。リグはそのフィスターの背後で隠れていた。

「こうやって人の荒を掘り出して警官内の不信感を与え自分への犯罪的注意を反らさせて、捜査攪拌だぜ」

「言っておくが」

フィスターをMMは睨み見てから言った。

「ダイラン=ガブリエル=ガルドには俺の方が早く目を付けてたんだぜ。お前等が出会うよりずっと前にな。あんただってそうだった」

「お前みたいな奴願い下げだ」

「ああそう。嫉妬深くなったようだな。だが分かっておけよ。正義ぶってるフィスター=クリスティーナ=ジェーンという人格をな。清楚で純粋そうで年下で可愛らしい世間知らずの令嬢だなんて思わない方がいいんじゃないのか?演じてるんじゃねえよ」

そう、顔を怒らせ顔を反らし、血もそのままに大股で出て行った。その背を4人は顔を覗かせ見ていた。

「……。おいジェーン注意しておけよ。あそこまで融通利かねえ事に嫉妬深いとあの我がまま王子様に何されるかわからねえぞ」

「そうですね……」

フィスターは俯いて頷いた。

エリーは彼女の手を握り振って、ダイランはフィスターの肩を叩いた。

「俺がお前の上司だ。何があっても首になんかさせねえ様に部長に取り合う。気にするな」

そう言って歩き出て行った。フィスターは2人の手を強く握り俯いていたのを顔を上げその背に言った。

「軽蔑しないんですか?!」

ダイランは小さく首を振ってから振り返った。

「少しは人間っぽさがあっていいんじゃねえのか?お前、いつも良い子にお嬢様お嬢様し過ぎで近寄り難いんだよ」

「え、ええ、ショックなんですけど……、」

「どうせお前の事だから同情されたり泣きたくなくてきつい言葉ぺらぺら言ってマインドコントロールが働いたんだろう。お前の顔見ればそんな事位分かるんだよ。お前はたまに抜けてて態度が稀に冷たいのは自分にガードを引いてるからだ。自分に厳しいから純粋で頑固だって事はよく分かってる。それがきつく出ただけだ。人間の心理なんてそういう物だろう。自分を攻めるな。故郷の奴等や親族の怒りもご尤もで一発ぶん殴られもしたかもしれねえが、お前の性格はお前の一番身近な人間がしっかり分かってくれてる筈だぜ」

そう言うとダイランは歩いていき、フィスターはずっと立ち尽くしていた。

「……、」

彼女は涙が潤みそうになって閉じた口元が震えたのを俯いて、2人の手をきゅっと強く握りしめた。

リグは真っ赤で泣きそうなのを堪えている顔を見上げ、僕と同じだ。すごく似ているんだ。と思った。彼女の、自分よりも大きな手をもう片方の手で撫でてあげた。

フィスターはそれに驚いて目を開けてリグの艶掛かる黒髪を見下ろした。

「行こう?」

リグはそう笑って、エリーも笑ってフィスターの手を引っ張った。

フィスターは涙を引かせ微笑んでから2人と共に歩いて行った。

 MMにいいように弄ばれるわけには行かない。明日にでも、一度大元のサダン社長の自社の元、子会社周辺起きている事件についてをどう思うのかを聞きに行く。何らかの怨恨や利害関係は無いのかを。失った彼等はサダンにとってはどういう人物だったのか。

設計会社社長や妻は、どちらにしろMMがここにいる以上は口を割らないだろう。会社についても、行方不明自殺者の事も、MM会員の事も。

連れて来たのはやはり間違いだったとダイランは苛立った。完全に黙らせる程の影響力など、存在するだけでも軽く成立したのだ。だが、彼等の位置関係は探れた。

「今日は泊まって行って下さい。どうせお車の事もありますし、今日は皆さんは宿泊なさって行くので、お部屋は多く用意されています。それに、お嬢さんとお坊ちゃんの所にも、ミスターレガントが連絡をして下さったのでご心配なく」

妻はそう言い、MMは警官を泊めさせようとするポッカーの両親を睨んだ。きっと、自分への不信感を抱いているのだろう。

妻はMMの顔を一度も見ずに俯いた。MMは溜息を吐き出してから彼女の肩をぽんと叩き、妻は頬を染めてMMの横顔を見上げると小さく微笑んだ。

「ところで、俺も宿泊可能なのか?」

そう、ダイランとフィスターの顔を目を伏せ言った。ダイランは歯を剥き威嚇して、フィスターはそのダイランの顔に顔目を引きつらせて口がガクガク言った。

「もちろんありますわMM。この屋敷で申し訳無いのですが、ご不憫の無い様に特別室へご案内いたします」

「この大人数が泊まるんだ。気をつかうな。そこの子猫2匹と親犬2匹と同室で結構だ。どうせ、この兄さんが俺を逃がさない為に見張り続けるだろうからな」

「当然だ。お前は容疑者だからな」

「何の犯罪も犯していないどころか企業拡大は仕事上の必要条件だ。逆にビジネスの邪魔をするようなら、企業を上げて警察を訴えてもいいんだぜ」

「今更味方を付け様って魂胆か?」

「元々味方だが」

そう身をゆっくり返し颯爽と歩いて行くと、書斎机横に来て腰をつけダイランを見た。

「第一、あくまで自殺という物は個人の心の変動でこちら側が止められる物でも、心を救い切れるものでも無い。あんたも分かっている筈だぜ。人は心を打ち明けたがらない。打ち明ける事も出来ない。出来る人間は少ない。今以上に弱くなる前に消えて行く。理解したいというのに出来ない。止められるまでに至らないのかこちらのそれは力不足だ。人がどんなに心を尽くそうが、自殺をして行く者達の一部は全く思いとどまれずにああやって死んで行く。俺が説得し止める事と身近な人間が理解し止めるのでは違う。止まった後接しつづける体力はどちらにも必要だ。どこにも甘えは許されない。止まった人間はケア団体に入る事で復帰して行く事もあるし、身近な人間を呼び出して説得させる事も出来る。だがそれも一部だ。そして一部は死んで行く。別に、誰だって失いたくは無い。営利目的も何も無いからな。確かにあったら犯罪だ」

「お前の事が分からないな。自殺を促す悪魔にしか思えねえ」

「俺は逆に利用されているだけだぜ。公のメディアの目としてな。そうやって俺の回線に乗せて、それを利用してこいつ等が警察に俺を貶めようとしているようにしか思えねえんだよ。こいつ等自身が自殺者を促して、日の目を浴びて出てきたばかりで力もまだ着けていない俺をこうやって失脚させようと目論んでるんじゃねえのか?それこそ、勘違いした営利目的でな。実際俺の存在をジェポンは疎ましく思ってるんだ」

「そうにまで至るには理由があるだろう。ローズのマンションを手がけた設計士の自殺も含めてな。確かに幾らでも利用して隠蔽出来るだろうが、気に食わない存在にはそれなりの行ないあっての上だ。消されるか、使うか、手を結ぶか。サダンとは手を結んで、お前はジェポンを切り捨てようとしているだけだろう」

「そんな事はサダンの決定事項だ。俺の会社じゃねえからな」

ダイランとフィスターはジェポンと妻、老婆を見た。

「冗談じゃ無いわ。MM?あたしが共謀していると?勝手に反抗しているらしいのは彼等でしょう?あたしは関係無い話じゃないの。あたしも利用された様な物だわ。設計士の関わった仕事のマンションまでまるで道連れにされてその設計士が自殺したりして、あたしから顧客を奪ったりして」

老婆はついと組んだ腕を広げると、アームに手腕を掛けた。ダイランは目を上げてから言った。

「マリー=ローズの父親はお前の敵なのか?」

MMにそう聞いた。

「何故」

「身分的にな」

「さあ」

「誰もがぐるになっているなら、その父親も今回の件に加わっているんじゃねえのか?」

ダイランの長い足にしがみついていたリグの小さな手が強くダイランのパンツを握って、大人達を上目で睨んでいた。

「マリー=ローズの父親は警察の上層だ。娘は身を持って投げ出しちまったんだよ。大人の世界で起きている事を提示する為にな。それを無視したままでは終る気は無い。俺達が正当に一斉に取り締まる」

 部長は重い腰を上げ、FBIにダイランから受けた報告を連絡した。

自殺事件の被疑者が集中した州の警察本部長はそれらの事件を全て揉み消した疑いがある。それがMMに言われての事ばかりと思えば、それだけでは無い。何やら彼自身の身内も関わっていたと言うのだ。

彼の周辺にFBIの掃除係、ジェイビス=ロッソに向かわせる。それと共にサダングループの周辺も捜査官に張らせた。MMや他の人間から命を狙われる可能性もあり、監視させる為だ。


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