夜の冒険
夜の冒険
僕は目を覚まして布団から外に出ると、窓際に来て肘を着き夜空の星を見上げた。青い星がたくさん波の様に煌いていた。
あの悪者のおばあさんがいけないんだ。マリーが死んだのも。絶対に復習するからねマリー。
そう誓って僕は名刺を見下ろした。あの優しいお姉さんがくれた名刺だ。刑事だから、きっと助けになってくれるよ。あの悪者のおばさんに復讐だってする事手伝ってくれる筈だ。
煌く星を見上げて、ネックレスの十字架を握っていた。なんだが、あの青い星が夜空のロザリオのような形だった。そこにマリーが掛かっているようだった。涙がぽろぽろ流れて下の街に広がるピンクの明りを広げているみたいだった。
大人になったら結婚したかった。何で一人で飛び降りちゃったのか聞きたかった。一緒なら、踏み出す場所は違ったところだった筈なのに。僕等が無力だったから、太刀打ちできない物は多いけれど、でも僕はくじけないでもらいたかった。そんなくじける事なんか許してあげない。
洗面所に行って顔を洗うと僕はいつもの様に抜け出した。
「あ。また逃げ出してる」
そういう囁き声が僕の背後からした。その相手も消灯時間のはずなのに抜け出しているから小声なのだ。
「どうしたの?エリー」
僕も声を小さく背を縮めた。
「だって、あんたがあたしの事可愛くないって言うから眠れなくて沈んでいたの」
「うんそうだね」
エリーは嬉しそうに微笑んだ。
「それって嘘よね。ありがとう。可愛いんだあたし」
「わかんない」
「ふふ」
また嬉しそうに笑ってから2人で立ち上がった。
「あんた、どこに行くの?マリーはもう寝てるわよ。電車だってもう子供は乗せてくれない時間なのに」
「自転車貸してもらったんだ」
「自転車?」
「警備員のおじさんの孫が前使ってた奴運んでくれたから」
「本当は車なんでしょう?なんだか本当に聞こえる」
「見ればどっちか分かるよ」
2人でそこまで歩いて行った。自転車が置かれている。
「乗れるの?リグ」
「ううん。練習したけど転んで腕すりむいちゃった」
「あ。本当だ。後ろ乗りなさいよ。あたしはもう10歳だから乗れるのよ」
このごろ頑張ってお金を貯めているからエリーにキャンディーをあげた。
「ありがとう」
エリーは僕のほっぺにちゅっとキスをしてから自転車に乗って僕は後ろに座った。
「マンションまでどれくらい掛かるの?」
「電車で10分」
「本当?自転車だと遠いわ!」
「5分だったかも」
「また嘘着いてる」
本当は20分だ。僕は自転車から降りてエリーを見上げた。
「やっぱりやめよう。先生達に怒られちゃうよ」
「冒険しようよ。例え電車で1時間の所だっていいわよ。あたしって体力あるんだからね。早く乗ってよ」
懐中電灯の光がうねった。僕等は慌てて自転車に乗り込んでエリーはマンションへと走らせた。
警備員のおじさんはしまったとおでこを押えて僕等の事を見た。まさか、夜使うなんて思わなかったんだろう。
「ねえやっぱり帰ろうよ!警備員のおじさんが怒られちゃう!」
「でもあんた思いつめてるじゃない!放っておけないわ!あたしあんたの事好きだから!」
「ええ?!!」
自転車は滑走して行った。坂を凄い勢いで下って行き、エリーは「やほー!!」とはしゃぎ叫んで僕は必死でしがみついた。風がびゅんびゅん耳の横を過ぎて行った。
自転車で走り始めて結構経っていた。
エリーは腕時計を見てからまた走らせた。夜はまだ9時間つづく。
マンションがあるのはお洒落なショッピングモールのお洒落で広い街だ。その途中に高級住宅地が広がっている。
よく高級住宅街のセレブがお洒落をしてこの街を歩いているのよと、マリーはマンションの窓から見渡して言っていた。お洒落な犬を連れて、お洒落な格好をして、上品な言葉で喋って、格好良い恋人と微笑みキスをしたっているのだと。
僕等は大きな通りを自転車で走らせていて驚いた。
「あ!あの人!
テレビで有名な女優だ。ブロンドを優雅にカールしていて、黒の毛皮のロングコートを着て立っている。黒いレースのグローブでコートの裾を押えていた。本物って、すっごく美人だ。
僕等はその広い優雅な道を見回した。
他にもたくさんタレントもいて、僕の好きなコメディアンもいた。みんな黒い服を着ていた。映画の俳優も一杯いた。よくみると、たくさん有名人がいる。
「ねえ誰かのお葬式みたいね」
「うん……有名人が死んじゃったのかな」
エリーは自転車を木の横に立てかけて走って行った。僕は止めたけどエリーは行ってしまって、僕は腰に手を当てながら横のなんだか壊れてる車を見下ろして首を振って溜息をつくと付いて走って行った。
「ねえねえ!早く!」
エリーは人ごみの中で大きくおいでおいでして僕は走って行った。
有名人はみんな話し合っていて、僕はその足元を潜って行って、人垣を抜けた。
人垣を抜けるとエリーがお屋敷の中へ入って行ったから驚いた。僕は走って行き、エリーを探したのを、わ!と叫んで後ろを振り向いた。
「リグ、何をしているの?」
「おばさん」
マリーのお母さんだった。
エリーは首を傾げてここまで来ると、僕の知り合いらしい女の人に挨拶をした。
「あなた、先生達に怒られるじゃないの。抜け出したのね?」
僕はエリーと顔を見合わせ、一気に走り出した。
「あ!ちょっと、」
僕等は走って行き、明るく広いホールに出ると会場を見回した。なんでおばさんが有名人のお葬式にいたんだろう。でもあの著名人の元旦那さんはいなかった。離婚したからかな。
僕等は歩いて行き、飾られた写真を見上げた。
「あれ。誰だっけ」
「嘘!ポッカー=ベレンよ!あたしファンなの!」
「ポッカー?誰だっけ」
「あんたはお子様だからあの素敵な白黒映画は見ないもんね。アニメばっかり」
「悪くないじゃんそれ」
僕は横のエリーを見上げてから写真をまだ見上げた。分かった。見覚えがあった。電車に乗った時によく雑誌が置いてあって、僕は暇でよく読んでいた。
その中でよく騒いでいたからだ。問題をすぐ起こして、女とライブと喧嘩と薬と酒好きのどうしようもない美形俳優だ。
「信じられない。きっと喧嘩でだよ」
「確かにそうかもしれないわね」
エリーは肩をすくめて見回した。
「ポッカー=ベレンの実家なのかな。やっぱり金持ちだったんだね」
「そうみたいね」
エリーは金持ちそうな男の人の服を引っ張って、彼は話していた奥さんから顔を下に向けてエリート横に立つ僕を見下ろした。
「彼、何で死んでしまったの?」
男の人は奥さんと顔を見合わせて、辺りを見渡してから背を折って小さな声で言った。
「自殺したらしい。余り大きな声では言えないがね」
「自殺?」
僕等は驚いて写真のポッカー=ベレンを振り返って、背を伸ばしたおじさんを見上げてエリート顔を見合わせ走って行った。
廊下に来た所で僕等は止まって、会場を顔を覗かせて見た。
「驚いたね。自殺だなんて」
「本当ね」
マリーもそうだった。さっきマリーのお母さんがいて、映画俳優も自殺していて、何か関係があるのかな。
金持ちだから、マンションのオーナーが知り合いだったのかもしれない。
僕等はもっと奥に潜入して行った。
「ダイビングした人間の?そうか。ああそうだな」
僕は首を傾げて、その男の人の足をぐんぐん引っ張った。男の人は振り向いた。
「? 何だ?ちょっと待て」
「こんばんは。お兄さんも来てたんだ」
「? え?」
さっきは風邪をひいていたのか、声がちょっと高めに戻っていた様だった。あのフィスターお姉さんといた旦那の方だった。そう見えて本当は刑事で相棒だったらしいんだけど。
「コーサーお兄さん」
「俺はあいつじゃ無い。ダイランだ」
「ダイラン?でも顔同じ」
「全っ然同じじゃ無い。ガキには判別がつけられないだけだ」
そう顔を怒らせた。
僕は頷いてからエリーが来たのを見て、エリーはお兄さんを見上げた。
「ねえ、知り合い?すっごく格好良い人ね!モデルかな」
「知り合いじゃ無いよ」
「また嘘吐いてる。あんたって本当よくわかんない」
僕は見回してからダイランお兄さんを見上げた。
「僕、リグ」
「そうか。今忙しいんだ。便所なら他の人間に聞け」
「ええ、」
お兄さんはまた受話器に話し始めて向き直った。
「フィスターお姉さんは今はいないの?」
お兄さんは瞬きして振り返ってしゃがんだ。
よく見ると、こっちのお兄さんの方がすっごく男前だった。コーサーお兄さんは優しそうだった。
「知り合い?」
そう優しく聞いて来て、顔は恐いままだった。まるで唸っている顔の時の恐い恐いライオンみたいだった。
「あははライオンみたい」
「この小僧!」
僕は拳骨されて頭をさすった。
「マンションに来た刑事さんでしょ?」
「……。お前があの自殺したマリー=ローズの連れっていう少」
僕は慌ててお兄さんの口を両手で塞いでエリーを振り向いた。
彼女は瞬きして口を開けていた。
「自殺?マリーが?」
そう目を見開いて、大きなその目をぱちぱち瞬きさせていた。
「ねえ、どういうこと?じさ、じさ、」
いきなりエリーはしゃっくりを繰り返し始めて、僕は体を向けた。口を押え始めていて、僕はビックリしてお兄さんを振り向いた。エリーがいきなりの事で息を小さく何度も吸い始めた。
「過呼吸だ」
お兄さんはそう言って透明のビニール袋をポケットから出した時、エリーは倒れてしまった。
「エリー、」
僕はショックで体がガタガタ震えてきた。
お兄さんが抱き上げて僕は走って行った。




