Color=EvilBlack
Color=EvilBlack
その蜘蛛の足の背後に見える物は 銀月
空の高みに輝く裏の者は 貴女
暗闇の中で衝突しあう瞬きは 星
死は
その時だった。
いきなりの事。一人の狂声がオーケストラの演奏を打ち消した。
ダイランは夜闇の深い森を振り返り、走った。
会場の誰もが顔を見合わせ開口部から見える森を見つめた。
ダイランはあの死刑の館のある方向へ走って行く。
その死刑と拷問の館から確かに夜闇の星の瞬く空に声が響き渡った。恐怖、いや。分からない。つんざく声が。
500メートル離れたその館へ駆け込んだ。
「……、」
駆けつけた誰もが後じさり、ダイランは顔を険しくして狂った闇の中の女の狂行を見た。
ラヴァスレッイリの連れて来た待機していたFBIの人間達も駆け込んで、その中にはやはりラヴァスレッイリの姿は無い。
見覚えのある着飾った女が狂い乱舞していた。
首輪を填めた彼女のものらしい高級猫を死刑機の中のギロチンに掛け、そのホワイトシルバーの小さな身体を両手に抱え持った。
猫の毛を歯で剥ぎ取り血にまみれて笑い叫んでいた。
くるくると腕を掲げて回っては、その猫の骨をずるりと引き出して胸元に刺し、子供の様にはしゃいでいるのだ。
おぞましい女の姿はそれでも美しかった。
小さな窓からは暗い空間に銀の月だけが照らし、闇の中の血は闇と同じ黒に見え、上品な石材を思わせた。
猫の血のこびりつく暗く深い銀色の刃は、上部の木の支柱の大きな蜘蛛の銀糸の巣をまるで飾りのように彩り、鈍く輝いていた。
女はまるでダイランの予想外の方向へ回り続け、無秩序に回って蝶の様に捕えられない。
彼女のボディーガードも完全に困惑しきっている。
そのボディーガード達の背をどついてしっかりしろ!!手前のご主人だろうが!!そう渇を入れる。
ダイランは咄嗟にカメラを探し見回す。無い。見当たらない。衛星か。
集まる人々の目の前で女は更に狂喜を悦へと変えて行き、何かの歌をラララ口ずさみながら自らのドレスを引き裂き全裸にハイヒールの姿で回っては、数人掛かりでも全く捕えられない。
闇の中に白の迫力ある裸体は浮き、ヤバイ目で舌をだらりと出しては常軌を逸した目で笑み続けている。
鋭く尖る黒の爪で柔らかいグラマラスな肉を抉り、その長い髪を抜き歯で爪を剥がし肌につけては喜び、石床に頭を何度も打ちつけてふらふらになって笑い、その余りの滑稽な狂い様に笑い出す者達までいた。
ダイランは鋭く睨んで腹を抱え大笑いする貴族共をどつき追い出した。
彼女はダイランの振り返った瞬間、思い切り化け物の体勢で走り外へ窓から飛び出し、銀白のガラスが舞い、激しいヒステリックな音と共にガラスの傷にまみれて破片を撒き散らしながら、食い込むガラスは銀色に光り白に近くなっては血の黒が飲み込んでいくガラスをそのままに化け物の体勢で舌を出し疾走して行く。
気分を害し卒倒した貴族の女達は本館へ運ばれて行き、その内にも白目を剥く女は自らを地面の黒茶色の泥で塗りたくり始め膝を着き腕を抱えうな垂れる顔が長い泥に浸る髪から覗いては、その狂気とした目だけが恍惚として引きあがる口元の上、柔らかい月の光を受けその瞳が妙に美しく澄んだ水色に一瞬煌く。
片方脱げた黒のハイヒールで更に奇怪に走って行き、水銀の様な小さな泉へと飛び込んで行った。
彼女は冷たい水に浸り溺れ、初めて自我を取り戻した正常な目を剥き、恐怖として突如として涙を流し片手を月に掲げ激しくぎゃあああ、と、絶望した断末魔を上げ叫んだ……
誰もがゾッとし、固まり何人かが気絶し女が倒れ男に支えられた。
ダイランは全く捕えられずに咄嗟に何かの気配で振り向いた。
MMの純白で一瞬目を痛めたが、その彼の顔は妖しく微笑み……
身を返した背後の残像に残り闇に消える刹那月光に反射した瞳の水銀が冷音をたてた
ダイランは目を見開き、息を飲んだ。
「その男を捕まえろ!!!」
ダイランが叫んだ時には全てが、終わっていた。




