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イングランドヤードへ到着した。

エジンバラで自殺した老夫婦の遺書が発見されたという。

その内容には、例のマークに関する事が記されていたというのだ。

これは大きな獲物。ここにダイランがいたのなら良かったものを。

 団体はかなり高いレベルの金持ち、城を自宅にする大富豪と呼ばれるレベルの人間達が名を連ね、王侯貴族、由緒正しい最上流貴族達の域が加わっている。

世界的に格調高い者達ばかりが加盟しているようで、誰もが身分を明かさずに不明である理由は、王族も多く含まれている所以からだという。格式の違う彼等特定の社交界でのみ密かに囁かれつづけたステータスのようだ。

 老夫婦がその荘厳な城内での宴に招待された。どうやら相当異彩を放つ宴だった様だ。

誰もが仮面と変声期を使用していたようで、その催し物は世界中のサーベル、剣コレクターの集まるクラブのコレクションパーティーだった。

西洋サーベル、日本刀、短刀、海賊やヴァイキングの剣などといった美しい剣関係が集まり進行する。

会場は毎回異なるようで、会員達の持ち島やリゾート運営する者お抱えのホテル、城、世界中都市の会員制秘密高級クラブ。

 その会の主催者に付いての記述は見られない。

自殺幇助映像についても一切記されてはいなかった。

 パーティーでは誰もが恍惚として笑い賭け、ロイヤルカジノが行われ、闇にもお目見えしない珍品のオークション、初めて世に出た妖刀の発表と由来、剣を使用した激しくも美しい乱舞・舞踏、達人達による剣や刃物を使った東洋武道、危険な宴術の道化、プロフェッショナルの芸、華麗な緑炎と剣の肉体パフォーマンス、上流貴族達同士のフェンシング、剣を使用した高級料理やドルチェ、精巧な紛い品と本物の目利き、優雅な遊びの数々がなされる。

 城内ホールは薄暗く、ゴシックの見られる空間はどこまでも混沌とした広さに闇が浸蝕し、太い構造柱が立ち並ぶ中、誰もが顔も正体も不明とされている。

 問題はここからだった。宴は佳境に突入すると、奥の闇から現れる。

闇市場で競り落とされた凶悪犯罪者達が、檻に入れられ運び出されるのだ。高い天井にはシャンデリアが下がり、上の絵画すら望めない暗闇からガシャンと音が轟き、格子が降ろされる。その中で犯罪者同士が剣で殺し合いをする。

誰もがワインやブランデーを手にそれを鑑賞するらしい。生の肉が切られ、内臓が出ては、彼等は高級チョコレートを銀のスティックに差し妖艶なアイマスクや仮面の中から美しい笑みで観戦している。

何らかの契約の元でか、それとも気に食わない存在と決めてか、ハイランク達から見切られた貴族達同士が指名され、死の決闘をさせられる。勝利すれば契約を再び結ばれるチャンスを渡される。

いきなり観戦やギャンブルカジノをしている横で誰かしらが毒殺により貴族が倒れ絶しても、誰もがグラスを傾け仮面の下から冷たく見下ろし、各々の会話へと朗らかに戻って行く。

それらの死体は全て、人々の足元を練り歩く遺伝子改良され独自に組み合わされた美しい猛獣達に骨まで食い終わらされる運命にあった。

それらの人間の肉が黒の硬質の仮面を填めた料理長にその場の大理石の台で解剖、調理され、優雅に振舞われカニバリズムに突入する。

中には、自らの肉を食してもらいたいと、磨き上げられスパで美しく仕立て上げつづけた最良の肌と肉体、内臓を持ち合わせる者が名乗りをあげ、ドレスを脱いでいっては自らが調理台に上がる。

最強のマゾヒストが生きたまま捌かれて行っては、自分の身も切り裂き貴族達や夫に差出与え、自らも食しながらも食べるもの達を微笑み見つめては、死んで行く。

 あの老夫婦はもちろんそれらのクラブのコレクターでは無かった。

姿無き者からの招待だとだけ記されていた。

 彼等の他にも多くの装飾職人達が参加しては顔を並べていた中の一人だった。

その老夫婦は貴族の気分を害させ、その事により職人には大切な命の手を、わざとの弾みで潰されてしまった。

人生を掛けて来た職も奪われた事に苦しみ、自殺をする。そう、記されていた。


「……なんて醜悪で非道な宴かしら、邪悪で悪意に満ちているそれらを悦楽しているだなんて。しかも最低の内容だわ!」

思わず声を大きく叫んだ。フィスターは激しい嫌悪と怒りを覚えて唇を震わせた。

遺書の文字は、映像でも見られたあの震えから優雅な筆記体は乱れていたが、それでも一句一句を丁寧に書かれていたのだ。

「僕が世界中の剣コレクターを当たり、地下オークションや秘密クラブを当たる。ジェーン君は老夫婦の最近の仕事関係でのトラブルや仕事状況を調べて欲しい」

フィスターは硬く頷き、目を鋭くさせ身を返した。

 会はいつ開かれたものかも、場所も不特定だ。招いた人物も分からない。主催者なのか、それとも他の貴族達なのか。

一つ一つ当たる必要があった。




 彼は招待状を見下ろし、彼女に渡した。

彼女はそれを見下ろし、いいんじゃない?と言ってソファーに転がった。

行って来れば?そう言いローズエキスを飲んだ。

彼はチェストに腰を着けその上に招待状を置き黒の葉巻に火を着けた。お前は、と軽く聴くと、彼女は顔を上げた。

「出ないわ。警戒されてるんだもの」

彼は呆れて首を振り、くゆらせ葉巻を置いた。

城内は闇を迎える時間だ。彼は身を返し歩いて行った。

彼女は下手な事考えてるんでしょう。その顔は。と肘を付き頭を支えてその背に言って、わざとっぽく同じような顔をして見せた。

彼は肩越しに口端を上げ微笑み、歩いて行った。

「あまり無謀な悪さやらかさない方がいいわ」

そう言い、ナイフに手を伸ばして皿のパパイヤを切った。


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