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※フランス語表示が文字化けしていましたが化けている部分を普通のローマ字に変えました。フランス人に通じるかは分かりません。
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フィスターはフランス語の本を開き、熱心にそれを見つめていた。
その内、口に出し無意識下で呟いていた。
「……Quelle est votre opinion?貴方の意見は何ですか?
important 重要である事。
Comment ca ? Tu es prise? どういうことですか?
Que faire?何をするために?
Et avec ca, ca sera tout ? それが全ての真意ですか?それで?
sur ce pointこの点で。
Quest-ce que vous en pensez ? それをどう思います?
Personne ne sait la verite. 誰も真実を知り得ない。
Tu las vu? Et bien?それを貴方は見ましたか?それでそうでしたか?
selon一致した。
Cetait comment,votre voyage en Grece?あなたの意見はどうですか?
Cest facile,non?どうでしたか?
par example例により。
Vous venez de quelle region ? どんな地域からあなたは来ますか?
Vous savez bien la verite. あなたよく真実を知っています。
Ca alors, quelle surprise ! なんとも驚いた。
Comment secrit votre nom?方法がわからなかった」
彼女は囁きつづけ、ページでふせんを付けた部分をめくりながら頭に叩き込んで行った。
進めて行く内に、ふと、「Love」の文字が視野に掠めた。
「Je taime. あなたを愛して……」
フィスターは耳を赤くし背筋を伸ばした。即刻浮かんだダイランの顔に、顔を赤くしては細い手を頬に当てた。
「嫌だわあたしったら、まさかそんな、どうしよう、彼をあ、ああ、あい、あいし、あああああいし、つ、そ、そんな何も彼に言ってなどいないのにそんな勝手にそんな独り言を言ったりなどしてばばばばばれてしまうわ、か、彼はあたしの事をどどどどどうこう思ってなどいないのだし勝手にそんなどどど」
一人のアメリカ女が突如として一人で赤面し喋り出した事で周囲のカフェテラスにいた人間達は顔を見合わせ、怪訝そうに見ては、可笑しそうに笑っていた。
彼女は割と独り言が多いのだ。寂しがり屋のせいもあった。
「どどどう、あたしの事どう思っているのかしら、え、ええ?!あたしってば何を言っているのかしら彼があたしを?ど、どどどどどどう思ってるのかなんてそ、そんなどどどどど」
「さっきのやんちゃな猫君な彼氏とはしばらくのお別れかな?」
フィスターはコーヒーを噴出しそうになり驚いた。
氷がガランと音を立て、冷たい滴が伝い少し身が震えた。
知らぬ内に背後に人が立っていたのだ。「やんちゃな猫君」なんだか、どこかで昔同じフレーズを聞いた。
一点の曇りも無い南部訛が耳をくすぐり、声の主を警戒し振り向いた。いない。
「君は」
フィスターは身をガタンとさせ、白アイアンのカフェチェア毎再び前方に向け、反射的に振り向く。
彼はそのカフェチェアにゆったりと進み腰掛け、白アイアンのテーブルに片腕を乗せた。かなり長い足を組み、フィスターと目が合うとニッコリ笑った。
この男のその笑顔につられ、ニコッと自分も笑っていた。慌てて顔を引き締め、必死に取り繕う。
「恋人だなんて、滅相もございません」
始めにそれを断っておいた。
「やんちゃな猫君は否定しないんだな」
「なんだか、例えが可愛くて……」
そう、また頬をピンクに染めては笑う。
そういえば、フィスターはダイランの笑った顔を一切見たことが無い事に気が付いた。いつも恐い顔をし眉を潜めている。いつも鋭いつくりの目を更に吊り上げて、口端を下に吊り下げている。
最近、初めて意図していた物らしいと気付いた。険しいその顔が途切れ、彼本来の顔を見た事も初めてだった。
笑えばとても素敵なのだろうに。
少しは優しい顔をしてみればいいのに。そう思った。
男性に今までされてきた様に優しくしてもらいたいとか、そう思うわけじゃ無いけれど……。
彼は切り抜かれた様な大きな目は顔全体の彫りが深く、そして多少の独特さがある。自制心全く無しというエメラルドの瞳がよく似合う健康的な若々しい肌の色をし、ブロンドの髪も太陽の様だ。奔放そうでもあって、我の強い整った顔立ちだ。大きな口は色っぽい形をして思えるし、頑固そうな筋の通った鼻梁は引き締まった顎共に顔立ちにマッチしている。
自我で出来上がっているという頑固で我が侭そうな態があり、それでも冷めていそうでもあるのに、どこかしらに漂う風格が根強くある。なぜかそして甘く可愛らしい感じ風が顔にあるのは、横顔の睫が短いがくるんとなっているからだろう。
それが口を開けばガラリと変わり、まるで狂犬が鬼神にでも乗り移られたかの様な恐ろしい声で怒鳴り始める。
彼は今、自分をどこまで認めてくれているのだろう。
自分をチームの一員と思ってはいないのでは無いだろうか。部下とはまだ認めてはくれていないと。
きっと、お嬢様お嬢様した自分を嫌って、苛立っているのは目に見えて分かる。彼からは避けられている風を思い出し、フィスターは気落ちした。
認められたい。彼にチームの力になる一員として。その為ならどこまでも頑張るつもりだ。
みんなはよくあいつはどうしようも無い。あいつは嫌な奴だ。そう呆れて言うが、誰もが口ほどには思ってはいない風を感じていた。
彼が必死になっている風を、誰もが分かっているのでは無いだろうか。彼自身、認められたいと思っているのではないだろうか。警官としての心を持っている。それを誰もが本当は気付いているから、口々に嫌な奴だとは言っても、確実に署の人間は彼のことを仲間と認めている。それは深くだ。
それをフィスターは感じていた。
無謀な奴。心配されている。その言葉がどことなく当てはまる。
彼自身がどう思っているのかは分からないものの。
確かに署内には彼を本気で毛嫌いする刑事も多い。警官を辞めさせるために八方手を尽くす年配警部も多くいる事に変わりは無い。
彼女は、自分が彼の手を煩わせない為にもレベルアップに勤めなければと思いつづけて来た。
ダイランはまだ20代になったばかりの若い、しかも体力も無い頭脳だけのフィスターが、気違いなどにもしもの目に合わされる事になるかもしれない部長の判断が許せ無かったのだ。
確かにダイランの言うようなそんな甘い考えなど、警察組織の意識下では一切通用しない。それはダイラン自身もよく分かってる事だ。
だが、順序が違う。人選を間違っているだろうと思ったのだ。なよなよしたしかも女だ。
新任刑事は、ダイランはFBIからのしっかりと体力の整う経験豊富なエージェントとばかり思っていた。年齢も36辺りの男だと思っていたのだ。これから特Aを発足していく事に妥当な。
それが、来たのは世間の事など見た目だけで踏み行った事の無い、署内と分かった上での仲間内からの攻撃にも真っ青になっては考えがストップしたようなお嬢様だ。
フィスターはレオンの様に体力が整い、犯罪者とも対峙しやっていける様な女では無いのだ。
だから、当初彼女を特Aから外し他の部署へ回しそこで成長させる事を部長に願い出てきつづけた。だが、部長の意見は変わらない。
ダイランは負け犬に成り下がったと本気で欺かせ、FBIの目が落ちた後に再びZe−nとして闇に戻るつもりでいる。
ハノスが問題で、今でもダイランを監視し続けていた。再び彼が警官も辞めて闇市場に戻るつもりと分かっている。
だからこそ、警官の女であるフィスターにはなお更手を出すわけにはいかなかった。そうすれば、自分は利用する事を考え始めるからだ。フィスターに対して、そんな事はしたくは無い。レオンには悪かったのだが。
「あなたはどなたですか?あたし達の関係者ですか」
フィスターは男に聞いた。
イタリア系だろうか。黒髪の男性は目が深青に澄み渡っており、3ピースのスーツジャケットをお洒落且つスマートに着こなしている。
顔立ちが整い、鋭利な目元は鋭くまるで石膏を彫り込んだ彫刻の様に丹精だ。その目元を、縁無しの細身の眼鏡で和らげてはキラリと反射した。
笑顔はとても爽やかだ。
男は自分の手帳を見せ、彼女は男の顔を窺った。
連邦捜査局の人間だ。
「あなた方が動き出した連絡は受けてはおりませんでした」
フィスターも手帳を見せ仕舞い、彼は先程までの南部訛が一切消え去った。淀み無く英語がすんなりと入る。
署から出てきた所を追いかけたのだそうだ。
「何故今回のような事件であなた方が?やはり、バックに何がしかが潜んでいるのでしょうか。あたしは今からこの国を出るのですが」
「イングランド警察から連絡は受けています。僕もあなた方と共に向うよう言われています。ガルド君にも面通しを済ませた後に共に向う筈だったのだが、どうやら携帯電話やポケットベルを持ち歩かない人間だと聞いて困っていた。さあ、行きましょうかジェーン君」
その頃、当のダイランは家主についての調べを進めていた。
フィスターはタクシーで空港へ向い、今からパリで面通しを済ませた連邦捜査局の捜査官、ミザ・レティッオ・ラヴァスレッイリ氏と共に、イングランドヤードへ向かう事を報告し、飛行機へ搭乗した。
「本当はもっと彼といたかったようだね。パリは初めて?」
もしかして、さっきの言葉を聞かれていたのだろうか。
「はい。とても素晴らしい風雅の街ですね。歴史深く落ち着き払っていて立派で重厚。威風堂々として晴れやかです。美しく残され続けたパリという街も、何もかもが真の壮大さで洗礼され尽くした上品さも素敵」
確かにこんなに素敵な綺麗な街ではダイランはどこか殺伐としすぎていたけれど、もう少し共にいたかった。
「彼のことが好きなんだね」
フィスターはそれを言葉に出されて言われると、何が味方してかいつものようには青ざめずに否定する事も無かった。
今までは、彼の余りの恐ろしさに同僚には言えなかったのだ。もし、あの鬼のような彼に人伝で伝わってしまったらもっと彼から避けられる筈だと思ったからだ。好きな相手から嫌われるのは辛い。優しくされたいわけでは無いけれど、そうと分かった後の彼の反応をみる事が、フィスターにはまだ恐かった。
自分が認められてから、そこから始めたかった。
「はい。でも、女としても求められる人としても今の自分に自信の持てない内からは何も言いません。半端な事はしたくは無いから。彼にもっと、上司と部下という間で育ててもらいたい事も多いです。きっと、彼を彼氏と思ってしまえばあたしは彼に甘えてしまう。自ら強くなろうとは思わなくなってしまうわ。それは、彼の求めるCIジェーンでは無いんです」
「CIジェーン?」
男は別に笑う事もせずに微笑んで言った。きっとCIAジョーの女版の言い回しだろう。
「ええ。ガルド警部がそう言いました。目指せCIジェーンって。FCジェーンだわって、その時はあたしは泣いていましたけれど」
男は「そうか」と笑って続けた。
「彼も君を支えてやろうと思っているんだろうね」
フィスターは嬉しそうに頬を染めた。
「例えは可笑しいかもしれないけれど、あたしも少しは頼りある面をつけないと。自己レベルで努力した先が他からは最低限になろうが、構わないんです。願わくば精鋭に」
一番初めに街が決まった時、幼少まで生まれ育った街で勤務ができる事で大喜びしたものだ。
マイアミの故郷を離れ、トアルノに残る祖母の介護も出切るようになって、生まれ育った街の本当の様々な部分を知っては、特に安全に導きたい心はなおの事強まった。
「他の同僚は、他にやれる事も多いしその人の特性があるんだからそのままで言いとおっしゃる方もいるけれど、あたし自身が彼の精鋭になりチームにお役立てしたいんです。あたしはあのチームに選抜され、何の為に部長率いる彼等2人に役立つことが出切るために来たのか、犯罪の防止と捜査にどこまで踏み込めるのか、然るべき対処を取りたい。犯罪を無くしたい心は、ガルド警部にも負けていません。誰もがそうです。特Aは意味ある場だと、あたしは強く思います。狂犯罪へと駆り立てる心理を解く事は、どのような犯罪捜査にも役立つ資料を揃える事も出きる。本当は事件は起きないほうがいいけれど」
フィスターは窓の外を見下ろしながら言った。
「美しい街にも犯罪は多いわ。それは起源からそう。人に喜怒哀楽の感情がある為。あたしはそんな起源から続く犯罪や争いを減らす事を考え始めた警察組織の存在の発祥自体を誇りに思います。長く対面を置き警察は犯罪と戦いつづけ、これからもそう。頑としてあたしは平和への方向を示します」
彼女の瞳からは、透明な涙が表情も無いまま流れた。
「……。ジェーン君?」
空港はもう既に見えなくなってどれくらいも経っている。
「ごめんなさい、あたし泣いたりなどして」
彼女はハンカチで目元を押え、膝の上に置いた手を見つめた。
空港。ヨーロッパ。美しい街並み。歴史ある芸術の街。そして、……。
暴動に突き動かされる心に拍車をつけるのは、過去などの様々な思いも加わっていくのだろう。彼女はそれを心に仕舞い、窓の外をもう一度見てから顔を戻した。
どこまでも空は澄んで思えた。そうだったのだろうかと思う。晴れだったかしら。窓から最後に眺めた空は。どうだったかしら……。
天を淡い瞳で見上げて、初めて彼女は感慨深く想った。
そうだとしたら、真冬の寒空に雪が降る合間でも綺麗に思ったのだろう。リキーは既に今の空を見れない
ダイランは深い色香があり、高級なパルファムを形にしたような街を見回した。
リサはパリ、行った事も無い街に憧れを抱いていた。行きたがっていた。パリが好きだと言っていた。自分達白人の起源のヨーロッパの地に、足を踏み入れることに憧れていた。
深い歴史を一身に受け止めてきた、人々の心を見続けて来た街に身を置きたがった。そういう、なんだか難しい事を言っていた。
何故パリの人等が紳士的なのか、何故人々は美しく着飾るのか、何故芸術が浸透しつづけたのか、何故パリは深く人々から愛されるのか。何故美しい街なのかを知りたがった。
戦時でさえ、パリの街を護りたいと思って来た者達と共に踏み入った敵は、パリの美しさに心打たれ、戦争の坩堝になる事を避けたらしいと言った。真の人々の心の平安を産む芸術の美しさが、そこには息づいている筈だと、リサは思いを馳せた。
ステレオタイプのパリでは無く、真のパリを見たがっていた。パリを知ることは、ヨーロッパの歴史をしる事に繋がる筈だと。発展、芸術、市民戦争、大きな戦争、織り成される人間模様の歴史、様々が、美しく形作られ残ってきた街にはある。現実の残酷さと美と古い歴史が混在する街。
高級で優雅なホテル、お洒落なモデル達、上流階級と市民達、人々が涙を流す精巧な芸術を集めた美術館、壮大な礼拝堂、様々な趣向、この街だからこそ生み出されたしなわれる趣味の歴史、芸術家を夢はさせては自分の無力さに絶望させられもする街。心と作り手の人生を掛けたからこそ美しく心を打つ芸術と曲。人々を微笑ませ幸福を抱き続けた芸術の域の料理、古城やシャトー、治安は良いとは言えない街。そこで現行し生きる人たち。
全てには人の心と魂が篭るからこそ美しい。芸術や建築物に乗せ。空気に含ませ。
彼女は優雅で上質を極めた上品な全てを知りたがった。他にもまだ知らない様々なパリの本質と人と人の間を。素朴な心も。
彼はそのステレオタイプ、シャンゼリゼ通りやオープンカフェ、凱旋門しか知らなかった。女が思うようには興味が無かったのだ。
だがこうやって肌に心地良さが風に乗せ空気に漂う雰囲気に立つと、今は思う。一度はあいつを連れて来てあげたかった。それ程麗しく感じた。
風を切り、歩き出した。




