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 パリの署で電話を借り、イングランドヤードへ連絡を入れた。

その間にもダイランはあの家主の近辺や姉を調べる手はずを取りに向うが、何しろあまり協力的では無いパリ警察は、資産家のスキャンダルを恐れてか全面的に協力拒否をして来る。

ダイランが怒鳴り声をがなり立て、駆けつけたフィスターは気が遠くなりそうな程の勢いでまくし立てる自分の上司を、どうにか止めようとするものの耳を痛めた。

このめちゃくちゃで大して頭も使わないと錯覚する彼といるととんでもなく疲れる。

「つべこべ言ってんじゃねえ!!国際的な犯罪なんだよこれは!!!」

「君の所はどうかは知らんが、君等の力不足を我々にとやかく言うのは」

「こちとら必死こいてんだろうが次の被害者がその大事な資産家殿から出なけりゃ取り合わねえって」

「君いい加減アメリカの責任者を呼んでこの男を黙らせろ!!」

「申しわけ御座いません!」

 強引に引っ張り荒くれる彼を署外に出した。

「一体どういうつもりですか!らしくもなく誰彼構わず犬みたいに吠え立てて!」

「い、犬、」

「あんな喧嘩腰になったのでは仰げる協力も当然ままなりません。非難されるだけです。幾ら難航していようとも、糸口は見つかったのですから冷静に対処しなさい!」

小声でまくしたてて恐い顔をしてフィスターは車に乗り込んだ。

車に乗り込むとダイランはまるで演技でもあったかの様に静まり返っていた。フィスターはもう彼を飼いならす事に断念してあきれ返った。

完全にあのすかした社長は警察に既に手を回していると見ていい。がっつくダイランの事だから、反対も押し切り単独で調べに入る事をあちらは予測し、自分に尾行を立てるだろう。あの余裕をかます社長にも注意をなさるようにと連絡を送って。

それを狙うのだ。誰が出てきてどういう対策を取るつもりなのかを。どう普通通りに過ごすのか。何も引っかからなければそれでも構わない。

沈んでいるのはフィスターに犬呼ばわりされたからなのだが……。大体、捜査でなければ大好きなフィスターと2人きりでパリ旅行なんてこんな良い事あるか。

「お前はイングランドに向え。俺は残る」

 そう言い残し、彼はセーヌ川で降り立ち、パリの街並みへ消えて行った。

フィスターはその背を見送った後、飛行機の時間までを、もう一度あの家主の言動などを吟味しながら、知り得る心理知識をフルに活用し、マークについての質問を街の人にしていく。

ダイランの様に流暢に多国籍語を操れない分、面倒でもあった。

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