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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
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伍章・参ノ肆 ~四人の和~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、90本目です。


一刀と天和たちが合流します。




華雄は苦戦していた。


「くっ…」


苦しげな声を出しながらも、眼前の獣を切り伏せる。

苦戦の理由は、相手が強いと言うこともあるが…


「押せっ!返せっ!気合で敵を止めるのだ!!」


華雄自身の指揮能力が低いこともその一つだった。

当初は豪傑の登場に士気も上がったが、華雄一人で対応できる範囲は限られているので、戦線は徐々に押され気味になる。

その際の華雄の指示は『気合で押し切れ』の一点張りで、具体性に欠けるものだった。

中隊長級がいないという止むを得ない状況もあったが、兵の士気は上がらず、複数で一体を相手にするという以上の策もないため、ジリ貧になっている。

それでも戦線を何とか維持できているのは、偏に張三姉妹を護っているという想い故だった。

しかし、それも限界を迎えつつあった。

想いだけでは越えられぬものもある。


この軟弱者共がっ!


こんな言葉が幾度となく華雄の頭を過ぎったが、それを口にするほど愚かでもなかった。

しかし、自分が一軍を率いていた時には先程の指示だけで動いてくれていたので、このように困る事はなかった。


どうすればよいのだ…


と、普段はさほど回さない頭で考えを巡らせたのが良くなかった。


「華雄殿っ!!」


名も知らぬ兵の声に気付いた時には、既に遅かった。

背後化け物が二体。

右に振り返ったため一体しか視認出来ないが、背に気配を感じる。


華雄の中では、刻がゆっくりと流れていた。

敵の動きがゆっくりと見える。

しかし、それ以上に自分の身体は緩慢にしか動かない。

一撃目はこなせても、二撃目は確実にこの身を襲うことが分かってしまう。


武人として戦場で散ることを望み、傭兵稼業に身をやつしていたが、よもや獣相手に不覚を取るとは…


無念、この二文字が頭を過ぎった、その刹那。


「大丈夫ですか!?」


紅い風が吹いた。


「お、お前は…」


長刀で獣を切り伏せた後、軽く華雄を見やったかの者は、先ほど華雄がそうしたように戦場へと大音声を発した。


「我が名は周幼平!孫呉に仕える武官です!張三姉妹の身柄は我らが無事保護し、ここにも援軍が向かっています!もうしばらくの辛抱なのです!!」

「「「うぉおおおおお!!!!!」」」


周幼平の、明命のその声に、兵の雄叫びが鯨波のように広がった。


「三人一組で一体に当たるのです!背をとられないように!敵を倒すことよりも、まずはやられないことを考えるのです!」

「「「応っ!!!」」」


士気が上がったところへ、明命の具体的な指示に、兵たちも即応する。

元々、兵の練度は高いのだ。


数え役満姉妹は同盟内でも、三国同盟の盟主・北郷一刀、そして三国の王に次ぐ護衛対象となっている。

しかもその活動内容ゆえ、遠方へ赴くことが多い。

なので護衛部隊には、有事に即応できる智力、遠征に耐えうる胆力、果ては舞台設置のための工兵としての能力まで必要とされている。

護衛部隊の選抜試験は難関中の難関。

ある種、三国の精鋭中の精鋭と言っても過言ではない。

だが将と呼べるものはいなかった。

そこに、明命という歴とした武将が加わったのだ。

数では勝っているこちらが、負けるはずがなかった。






――――――

――――

――




「周囲に敵影なし。もう間もなくです」


湖衣の案内で、俺たちは張三姉妹の元へと急いでいた。


「三人とも、大丈夫そう?」

「はい。少しお疲れのようですが、お三方ともご健在です」

「よかった…」


天和たちもあの戦乱を生き抜いたんだ。

よほどの事がなければ大丈夫だとは思うけど…


「ねぇねぇ一刀さま!『あいどる』って、どんな人たちなんですか?」


天和たちの話を聞かせて以来、ずっと三人に会うのを楽しみにしていたひよ。

こんな事態になってしまったけど、この明るさには救われる。


「もう…ひよ、不謹慎だよ。すいません、一刀さま」


申し訳なさそうに頭を下げるころ。


「いや、全然構わないよ。ん~そうだな…」


と、何度かひよにせがまれて話したけど、なるべく同じようにならないような説明を頭で組み立てる。


「歌うことが大好きで、みんなに元気を届けたいって想いがとても強くて、そのための努力は決して惜しまない。そんな素敵な女の子たちだよ。きっと、ひよたちとも仲良くなれるよ」

「本当ですか!?えへへ…楽しみだなぁ~♪」


顔が綻ぶひよ。見ているだけで幸せになれる笑顔だ。


「た~~いちょ~~…鼻の下が伸びてるの~~」

「…伸びてないよ」


いかんいかん。ひよの顔を見すぎてたみたいだ。

沙和のジト目が俺を刺す。


「止まって下さい」


やいやいやってるところに、湖衣のストップがかかる。


「このまま真っ直ぐ、約四半里ほどの所にお三方がいらっしゃいます。あまり大勢で行くよりは、まず一刀さまがお一人で行く方がよろしいかと」

「うん、そうだね。ありがとう、湖衣」


いきなり知らない人がぞろぞろ行っても無駄に怖がらせるだけかもしれない。


「それじゃあ行ってくるよ。頃合を見計らって後から来て」

「承知しました」


湖衣の言葉を聞き、俺は一人、森の奥へと入った。






――――――

――――

――




「まだかなぁ、一刀…」


膝を抱えて座る天和は、沈んだ顔をしていた。


「多分、明命と湖衣って人が先遣隊で出てたんだろうから、そこまで遠くはないはずよ。もうすぐ来るわよ」


人和は小声で応える。

中腰で茂みから顔を少し出し、耳目をそばだてている。

いつまた化け物が襲ってくるとも限らないのだ。


「それにしたって遅くない!?もう私こんなところに居るの耐えられない!」


そう言いながら地和は立ち上がった。

森の奥まった所の、さらに草木の中に隠れているため、虫はいるし地面も湿っていて気持ちが悪い。


「姉さん少し大人しくしててっ。化け物が近くにいたらどうするのっ?」


大声で文句を言う地和を小声で叱りつける。


「大丈夫よ。明命たちもこのあたりには一匹だけって言ってたじゃない」

「あれから時間も経ってるし、分からないでしょ…」


明命たちを信じていないわけではないが、索敵に絶対はない。

仮にその時はそうでも、入れ違いやその後に来ることも考えられる。

姉二人が楽観的な分、人和は常に最悪を想定しなければならない。

二匹目三匹目の化け物が現れることを『前提』に動かなくてはならないのだ。


「――っ!姉さんしゃがんで!」


仁王立っていた地和の手を引っ張り、無理矢理身を屈ませる。


「痛っ!ちょっとれ…」

「しっ!静かに…聞こえない?」


真剣な人和に気圧され、口を噤み、耳を澄ませる地和。

まだ遠いが、ガサガサと何かが草木を掻き分けているような音が聞こえる。


「ちょっ…なによ。何かいるじゃないっ」


静かに頷く人和。


「ただ、あの化け物にしては音が小さい気もするけど…」

「一刀じゃないの!?」


塞ぎこんでいた天和が顔を上げる。


「それもおかしいわ。確か大勢連れてくるって言ってたはずだもの。音が一つしかないのは変よ」


武人のように気配を感じることは出来ないが、音は聞き分けることが出来る。

森を動いている音は一つだけだった。


「とにかく、何か分かるまでは大人しくしておきましょう。化け物じゃなくて熊や猪でも、私たちだけじゃ対処出来ないんだから…」

「――――…い!――…和ー……」


その時、はっきりとは聞き取れなかったが『声』が聞こえた。


「ねぇっ!!」

「「うんっ!!」」


だが、彼女たちにとっては、それだけで充分だった。

長姉の呼吸で、息を合わせ、


「「「一刀ーー!!」」さん!」


愛しい人の名前を呼んだ。




――――

――




「「「一刀ーー!!」」さん!」


森中に響く、俺を呼ぶ声。

マイクなんかなくたって、その声はどこまでだって届く。


「天和っ!地和っ!人和っ!」


だから俺も負けないくらいの声を上げながら、声のした方へ駆ける。

少しでも早く、安心させてあげるために。




――――

――




三人も駆け出していた。

愛しい人の声。

疲れや不安など全て吹き飛び、三人は全力で駆け出した。

やがて、その姿が目に入る。


「「一刀っ!!」」


天和と地和は一刀の身体に飛び込む。

一刀もそれを優しく受け止める。


「天和!地和!無事でよかった…!」

「かーずと!本物の一刀だぁ~」

「良かったじゃないわよ、バカっ!遅いじゃない…!」


一刀の身体に頬ずりするように抱きつく天和に、文句を言いながらも一刀の胸に顔を埋める地和。


「人和も、二人を護ってくれたんだよね。ありがとう」

「ううん…私もその……一刀さんとまた会えただけで…嬉しいから」


そう言いながら、少し離れたところで目を伏せる人和。

瞳に光るものと赤らんだ頬を隠したいのだろう。


「人和は、抱きついてくれないの?」


一刀がそう、悪戯っぽく尋ねる。


「私は…そういうの、苦手だから。それに……」


チラリと目線を上げ、一刀たちの方を見やる。


「ほら、二人とも」

「ん……人和ちゃん」

「アンタも来なさいよ」


一刀を二人占めしていた天和と地和は人和を招きいれるように二人の間、一刀の正面を空ける。


「あ……」


人和は一歩二歩と、そこに吸い込まれるように歩み始める。

そしてそのまま、一刀の胸にストンと顔が収まった。

途端、肩を震わせ、


「よかった……怖かった…もう、会えないと思った……」


声も震わせながら、一刀の服をギュッと握り締めた。


「うん。俺も人和と…三人とまたこうして会えて嬉しいよ」


人和を、天和と地和ごと抱き締める。


「ちょっと…苦しいわよ、一刀…」

「いいじゃん。ね?天和、人和」

「うん!ねー、人和ちゃん?」

「…うん。そうね。たまには…」


天和は一刀と人和の、人和は天和と地和の背に手を添える。


「もう…仕方ないわね~」


そう言いながら、地和も一刀と人和の背に手を回す。


「……幸せだね」


天和の呟きに応える声はなかったが、この沈黙こそが、何よりの肯定だった。

四人はしばし、一つになるのだった。





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