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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
78/107

肆章・弐ノ参ノ弐 ~陽平関へ~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、78本目です。


函谷関で、念願の紫苑救出を果たした一刀たち。

次なる舞台は漢中。




「そんなことが…」


星から漢中の状況を聞いた本陣は静まり返っていた。


定軍山を拠点に漢中の調査をしていたところ異変が起こり、その中から敵部隊に追われた二人の少女を保護し、今は陽平関に拠っているらしい。

定軍山から撤収の際、璃々を残していってしまい、それを助けたのち、山を降りていた最中だったようだ。


「それじゃあ、綾那と歌夜は無事なんですね!?」


剣丞が二人の無事を念を押して確認する。


「確証は出せないが、少なくとも私が関を出るまでは無事だった。ただ、陽平関がいつ落ちるとも限らん」

「それじゃあ、急がないと!」

「そうだな。ならば先導は私がしよう」


と、話をしながら傷の応急処置を受けたとはいえ、満身創痍の星が立ち上がる。


「いえ、趙雲さんは休んで頂いても…」


止めようとする剣丞を制し、


「大丈夫だ。それと剣丞。私のことは星と呼ぶがいい」

「あ、はい。ありがとうございます!」


柔らかく微笑む星に、剣丞も笑顔を返すのだった。






――――――

――――

――




「うぅ~~~……星はまだなのかーーー!!」


関の上から敵軍後方を見ながら、地団太を踏む鈴々。

そろそろ星が言った二刻が経とうとしていた。

輜重の準備は既に整い、一部は先行して剣閣方面に撤退を開始させている。

あとは星の到着を待つだけなのだが…


「あ!あれはっ!!」



…………

……



「桔梗!桔梗!!」


関の中で綾那と歌夜から事情を聞いていた桔梗。

ひと段落といったところで、上から鈴々が降りてきた。


「なんだ騒々しい。星が来たのか?」

「そうじゃないんだけど!桔梗にも来てほしいのだ!」

「一体どうした?何かあったのか?」

「ん~~!!いいから上がってくるのだ!口じゃ説明出来ないのだ~!!」


見たものを説明できないのがもどかしいのか、手足をばたつかせる鈴々。

こういう風な慌て方をする鈴々も珍しい。


「分かった分かった、いま行く」


桔梗もそれに気付き、鈴々に促されるまま階段を登る。


「…歌夜」

「うん」


綾那と歌夜もこれに続いた。



…………

……



「「「――――っ!?」」」


三人は驚きをもって、その眼下の光景を見た。

その驚きの種類は桔梗、そして綾那と歌夜で違っていた。


「何故孫家がここに!?しかも、月と詠の旗もあるだとっ?」

「そうなのだ!訳が分からないのだ!」


鈴々と桔梗の驚きは単純な疑問。

ここに居るはずのない人物の旗が林立していること。


「歌夜……歌夜っ!」

「えぇっ!剣丞さまが…剣丞さまが助けに来てくださったのね!」


二人の視線は一つの旗で交錯していた。

円の中に太い線が一本入った図形。

鈴々や桔梗には意味の分からないその旗は、綾那と歌夜にとっては救いの旗。

新田一つ引き。

二人の愛しき人がそこにいる証だった。






――――――

――――

――




「いるわいるわ~うじゃうじゃいる♪」


最前線の雪蓮は眼前の部隊を見て、涎を垂らさんばかりに歓喜していた。

剣丞たちの布陣は、先程とほとんど同じ。

第一陣に雪蓮、第二陣に蓮華。

本陣と後備えを剣丞隊が務める。

唯一違うのが…


「私の獲物も残しておいて下されよ、雪蓮殿」


雪蓮の隣には、祭の他にもう一人。

大斧を構える壬月がいた。

もともと彼女は本陣にいたのだが、


「我らが仲間の尻拭いを、孫呉の方々だけに任せておくわけにはいかん」


と直訴して、前線行きが決まった。


「ふふっ、それはどうかしらね?我が孫呉の戦場は早い者勝ちが常なのよ♪」

「これはこれは。それですと、雪蓮殿の獲物が無くなってしまうことになりますが?」

「あら…面白いことを言うのね」


雪蓮と壬月の間に火花が散る。


「これこれ策殿、落ち着いて下され。壬月殿も、あまり策殿を煽らんで頂きたいの」


止め役に回らざるを得ない祭。


「別に本気になってる訳じゃないわよ、祭。なんだか壬月といると昂ってくるのよね~。相性が良いのかしら?」

「そう言って頂けると、私としても光栄の至りですな」

「……儂はなんだか壬月殿の声を聞くと、背筋がゾッとするんじゃがのぅ?」


そんな話をしていると、


「敵軍、動きました!」


敵がこちらに向かって進軍してきた。


「活きがいいわね~!それじゃあ壬月、行くわよ!」

「応っ!」


敵軍に突撃する雪蓮と壬月。

いつもの、主の久遠を諌める姿は影も形もない。

織田家筆頭家老という立場から解放されているからなのか、はたまた雪蓮の気に当てられたからなのかは分からないが、今の壬月は一人の武士(もののふ)だった。






「前線、戦闘始まりました。雪蓮さまと壬月殿が先頭で戦っているようです」

「あぁ…姉様は~もう!壬月殿は何となく止めてくれそうだったのに…」


思春の報告に頭を抱える蓮華。


「ああなった雪蓮さまを止めるのは、冥琳さまでも難しいと思いますが…」


思春の呟きは、悩む主の気休めにもならなかった。


「もういいわ。万が一にも無いと思うけど、突破されないよう警戒だけは怠らせないように。両翼には特に注意しておきなさい」

「はっ!」






「ご主人様」


斥候に出ていた小波が戻ってくる。


「お疲れ様。前線の様子は?」

「はっ。敵軍こちらに攻めかかってきました」

「隘路で関と部隊に挟まれたら、こちらに攻めかかるは必定かと」

「なるほど、それで?」


雫の補足に頷き、小波に先を促す。


「は…お味方前曲が、その…突出して、交戦中です」

「ま~雪蓮さんなら仕方ないですね~」

「雪蓮姉ちゃんなら仕方がないか…」


もはや端から諦めていた。


「いえ、それが…雪蓮さまだけでなく、壬月さまも単騎駆けを…」

「いいっ!?」


想定外の事態に思わず奇声を上げる剣丞。


「それは…本当なのですか?」


詩乃も信じられずに目を丸くする。


「はぁ……金剛罰斧を振り回し、敵をバッタバッタと薙ぎ倒し…あぁいえ、もちろん峰打ちのようでしたが…」

「いや、峰打ちでも死んじゃうんじゃ…」

「そんなことより、陽平関の動きは?」


剣丞の呟きを掻き消すように、詠が質問を被せる。


「まだありません。遠目には、関の上に人影が数人分確認できましたが…」

「桔梗は動かない、か…」


疑り深い星と桔梗対策の董旗と賈旗だが、桔梗に対して効果はまだ出ていないようだ。


「でも、死地に追い詰めないほうがいいのかしら?」


これで陽平関からも兵が出れば、敵は完全に死地に追い詰められる。

死地に追い詰められた敵は、文字通り死に物狂いで戦うため、味方にも大きな被害が出る。

そのため、殲滅戦でもない限り、敵を完全包囲するのは悪手にもなりうる。


「んまぁ~、今のまんまでも死地にような状態ですし~」

「しかも、どうやら敵は正気ではないようですし、早めに兵を繰り出し、無力化することが肝要かと」


風と詩乃の意見は同じようだ。


「待っていればそのうち、桔梗姉さんじゃ止められずに鈴々姉ちゃんが出てくると思うけど…」


いかにもありそうなことを言う剣丞。

そんな時、


「小波さん、私を陽平関へ連れて行く事は出来ますか?」


月が小波にそう尋ねた。


「え?」

「ちょっと月!なに言ってるの!?」

「どうですか、小波さん」


声を荒げる詠に構わず、月は小波に続けて問う。


「は、はぁ…月さまお一人を運ぶことなら、可能だと思いますが……」


剣丞をチラチラと窺いながらなので歯切れの悪い小波。


「私が行って、鈴々ちゃんと桔梗さんに兵を出すようお願いしてきます」

「そんな月、危ないよ!」

「そんなことないよ。小波さんに連れて行ってもらうんだけだもん。小波さんの腕は知ってるでしょ?」

「う…そ、それじゃ他の人に行ってもらおうよ!そうだ!星がいいんじゃない?」

「ダメだよ。星さんは怪我してるし、小波さんの負担を考えても、体は小さい方がいいと思う」

「なら風が…」

「いえ~。風が行っても、事情を説明している間に、戦闘が終わってしまいそうですね~」

「自分で言うなっ!」


ツッコむ詠。


「ならボクが行くよ!それならいいでしょ!?」


しかし、月は首を横に振る。


「詠ちゃんならここに居て知恵を出すことが出来る。でも、私には何も出来ないから。だから少しでも役に立ちたいの」

「でもっ…!」

「詠姉ちゃん」


なおも食い下がろうとする詠の肩を優しく剣丞が止める。


「こうなった月姉ちゃんが梃子でも動かないこと、詠姉ちゃんが一番良く知ってるでしょ?」

「うぅ~~~……はぁ。分かったわよっ…」


詠はガックリと肩を落とす。


「小波、月姉ちゃんのこと、よろしくお願いね」

「はっ!」

「よろしくお願いします」


よほど心配なのだろう。詠は深々と頭を下げた。


「はい。お任せ下さい」


小波はお姫様抱っこの形で月を抱き上げると、音もなく駆け出した。




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