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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
61/107

参章・壱ノ玖 ~前門の虎、後門の龍~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、61本目です。


今回で、話数的に、長きに渡った孫呉・長尾編終結です。

いえ、終わるのは実戦だけですが…


なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。

その辺、お含み置き頂ければと思いますm(_ _)m




何とか越後を抜け出した于吉。

その数は、ほぼ半分に減っていた。

自軍の有様を見て、ギリッと奥歯を強く噛み締める。

孫伯符と周公瑾にしてやられた。

于吉の内側に、蒼い怒りが沸々と沸いてくる。


「このままでは済ませませんよ。北上し、呉の本拠、建業を狙います!」


孫伯符と周公瑾が多数の兵を連れ立って、春日山城に来ていた。

陸伯言以外の将は城を出ているし、把握していた兵数からすれば、建業に残る兵は僅か。

行き掛けの駄賃とばかりに、干吉は矛先を建業に変え、兵を北上させた。






「ば、馬鹿な……」


于吉の目に飛び込んできたのは、地平線に林立した旗と槍。

その中に一際高くはためくは、間違うことなき、孫家の牙門旗だった。




――――

――




孫家の牙門旗の下には、当然の如く蓮華がいた。

その傍らには剣丞、詩乃もいた。


彼らは雪蓮たちと入れ違うようにして、隠れ家のあった越後から建業に赴き、穏と合流。

敵の来訪を予測し、越後の北東、建業の南方に陣を張っていたのだ。

しかし実際の兵は約二千ほど。于吉の目算はそう外れていなかった。

偽兵を用いて、嵩を増やして見せているが、直接矛を交えればこちらも無事では済まない数だ。

だが、その心配はなかった。






「は~い♪ここから先は通行止めですよ~?」

「みんな!今だ!」


前線にいる穏と翠の合図で、横一列に並んだ兵が、一斉に火矢を放った。

その先には敵の進路を塞ぐように置かれた、大量に油を含ませている藁束がある。

それに火矢が刺さると、ゴゥ!と音を立てて、炎の壁が出来上がった。

孫家の、というより陸遜のお家芸、火計である。


「今日は朱里ちゃんもいませんから、北風しか吹きませんよ~?」


炎は北風に煽られ、炎の波となって敵陣に襲い掛かるのだった。






「すげぇ…」


剣丞は少し離れた蓮華の本陣から、火計を見ていた。

視界を埋め尽くさんばかりの炎。

それによって敵の姿は見えなくなっていた。


「これが、音に聞く陸伯言の火計……よもや、この目で見る日が来ようとは…」


剣丞の隣では詩乃が感激に打ち震えている。

有名な穏の火計が見られたのが嬉しいようだ。


「これで、こちらは大丈夫でしょうね」


蓮華はにっこりと微笑むのだった。


「成功ですね~」

「あぁ。もし火を抜けてきたら、あたしが槍の錆にしてくれるぜ!」


ブゥンと翠が自慢の銀閃を一つ頭上で回して振り下ろす。

万が一、この炎を越えて迫りくる敵がいても、消耗した敵兵ならこの数の兵と翠でも充分に対応できる。


かくして、于吉の北上は食い止められたのだった。






「ちっ…」


建業からの別働隊が動いていたようだ。

牙門旗や兵数の疑問は残るが、どちらにせよ、火勢が弱まるまで北上は難しい。

かと言って、このまま踏み止まっていれば、いずれ孫呉の本隊に後背を襲われかねない。

戦果を上げられないのは歯痒いが、ここは退くしかなかった。


「やむを得ませんね…総員反転!南から退却します」


ここからだと西には太湖という大きな湖があるため、退き口は必然的に南方となる。

しかし…


「あ…あれは?」


しばらく行くと、そこには謎の部隊が展開していた。

孫呉の部隊が回り込んだにしては早過ぎる。だとしたら、いったいどこの部隊だというのか…






――――

――






「長尾の御旗、掲げーーっす!!」


呆然としている于吉の耳に、何者かの大声が届く。

と、前方の部隊から大きな旗が上がる。


そこには『毘』と大書されていた。


「越後が英傑、長尾景虎。その守護を務めるは、武名名高き毘沙門天の旗」

「我らに毘沙門天に加護あらんことを!」

「も一つ掲げーーっす!!」


もう一つ『龍』と書かれた旗が揚げられた。


「大日大聖、懸かり乱れ龍の旗」

「我らに不動明王の加護あらんことを!」

「毘沙門天よ!不動明王よ!この異国の地での我らの戦い、しかと照覧あれ!!」


驚きべき事に、それは春日山城で散ったと思われた、長尾の兵だった。






春日山の城兵は逃散したのではなく、逃亡に見せかけて堂々と城を抜け出していた。

そして、事前に城を抜けて潜伏していた美空率いる本隊と越後南部で合流。

春日山で孫呉軍と于吉軍が戦っている最中、悠々と越後を脱出し、南方で待ち構えていたわけだ。




「よくも私たちの可愛い娘を拐かし、虚仮にしてくれたわね!」


憎き敵を前にし、怒髪天を突く美空。


「柘榴ーーっ!!」

「おいっす!皆のものー!!突撃っすーー!!!」


長尾勢約八千が、火の玉の如く白装束に襲い掛かる。


「ちっ…」


圧倒的な長尾勢の圧力に、どんどんと後退を余儀なくされる于吉。

随時、傀儡を呼び出してはいるが、物の数にならない。

一息で千も万も作り出せるわけではないのだ。


こうなったら湖を渡って逃げるしか…


于吉の脳裏にそんなことが過ぎった、その時


ジャーン!ジャーン!!


太湖からドラの音が響いてきた。

信じられないといった表情でそちらに目を向ける。

すると、そこには『甘』旗と『黄』旗が掲げられた軍船数隻が、太湖上に浮かんでいた。




蓮華たちが建業に向かうのと同時に、思春・祭の二人は太湖に展開している水軍に合流。

急ぎ、簡易的な艦隊を編成し、湖上を封鎖したのだった。




「馬鹿な……」


これで完全に退路を絶たれた。

水軍の登場で長尾勢はいったん退いて距離をとり、ほぼ同時に北と西からそれぞれ、孫呉の牙門旗が現れた。

五百余りにまで数を減らした于吉軍は、于吉を中心に円陣を敷くが、それもほんのささやかな抵抗。

干吉は文字通り、袋の鼠となった。






――――

――




「あはっ♪無様なものね。さぁ!存分にぶっ潰してやりましょうか!!」


配置もそこそこに、突撃を仕掛けようとする雪蓮。

その前に…


「お待ち下さい!」


シュッ、という風切り音と共に明命が姿が現した。


「ちょっと、なによ明命!邪魔するの?これからが良いところなのよ!」

「も、申し訳ありません雪蓮さま。ただその…これ以上近付かれると危険との事ですので…」

「危険?あの程度の敵なんて、物の数でもないわよ」

「いえ、そういうことではなくて、ですね…」




――――

――




北方。蓮華の本陣には、湖衣が姿を現していた。

彼女はずっと独立して、戦場の中ほどから金神千里で戦場の分析を行っていたのだ。

それを逐一、小波に報告。

句伝無量を通じて、各地の部隊にその情報を伝えるという、司令塔の役目を担っていた。


「剣丞さま」

「湖衣、お疲れ様」

「はい」

「とどめは、やっぱり美空?」

「はい。ですので、これ以上は近付かぬようにと」

「分かった。蓮華姉ちゃん、これ以上は敵に近付かないようにしてくれる?」

「それはいいけど……剣丞、一体何が始まるというの?」


剣丞と湖衣の間で短く交わされる言葉からは話の見えない蓮華が、首を傾げながら尋ねる。

敵を一気に殲滅する良い機会なのに、これ以上近付かぬように、というのは腑に落ちない。


「うん。湖衣たちの時代の武将は、それぞれお家流って技があってね。例えばこの湖衣は戦場を遠くまで見渡せる能力。他にも味方の力を上げたり、直接敵を攻撃したりと色々な技があるけれど、中でも強力な技の一つが、いま南側に陣を構えている美空のお家流なんだ」




――――

――




『…美空さま。お味方、完全に安全地帯で進軍を止めたとのことです』


味方の陣へ行った明命と湖衣から連絡を受け、美空に報告する小波。


「よしっ!それじゃあ……行くわよ!私のかわいい妹達!!」


美空が一人、戦場に大きく進み出る。

その周りには、五つの光が寄り添っていた。


「我らが誇りを穢し、卑劣の限りを尽くす外道の衆が、我が光に触れること能わず!我らは御仏の子なり。ひとえに如来大悲の本誓を仰いで、不二の浄信に安住し、菩薩利他の行業を励みて、法身慧命を相続し奉らんっ!!


 おん さんまやさとばん…おん さんまやさとばん、おん さんまやさとばん!」


美空が題目と真言を唱えると、五つの光はふわりと宙を飛び、戦場を囲むように広がる。


「我らに仇為すを滅するため、護法五神に三昧耶形を降ろす!顕現せよ!天の力!!」


五つの光と美空自身が白く光る氣で繋がり、白装束の足元に巨大な六芒星が描かれると、その中の氣の濃度が、爆発的に増大する。


「不味い……これはっ!」


中央の干吉は肌で危険を感じる。

そして――――


「三昧耶曼荼羅っ!!」

「転っ!!」


ゴウッ!と音を立てて、清浄なる光が地面から立ち上る。

強烈な氣の力によって、中の白装束たちは跡形もなく『消滅』した。




――――

――




「す、凄い……」


遠目に見ていた蓮華は、思わず声を漏らす。

多くの修羅場を潜ってきた彼女をして、それは驚愕の光景だった。




――――

――




「何よ、これ……春蘭以上の反則じゃない……」


雪蓮は呆れ半分の声を出した。


拳に乗せるという、凪のような氣の運用ならともかく、先の天下一品武道会の春蘭の技すら超える大技に、最早呆れるしかない。

時代が進んでいるとはいえ、雪蓮は大いなる不条理を感じた。


「…私も何か一つくらい、練習した方がいいのかしら?」






孫呉と長尾が手を組み、敵の企みを完膚なきまでに看破し、完勝したこの戦い。

最後に残ったのは、雪蓮の物騒な呟きがやけに大きく聞こえるほどの、水を打ったような静けさだった。







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