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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
58/107

参章・参ノ壱 ~雲悌絵巻~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、58本目です。


孫呉と長尾の戦いが始まる前に、閑話休題として、紫苑救出用の雲悌作りの一場面をお届けします。

楽しんで読んで頂ければと思います^^


なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。

その辺、お含み置き頂ければと思いますm(_ _)m





トントン、カンカンと洛陽の中庭からは調子の良い音が響いていた。


「えぇでー!そっちはそんな感じや!ちょ、おいアンタ!その材料はこっちやなくて向こうに運んでや!」


真桜が櫓の上から大声で指示を飛ばす。

雲悌製作の総指揮として全体を見ながら、細かなところは自ら出向いて手を入れるなど大忙しだ。


「ふう…」

「真桜さん、お疲れ様です」


一息入れたところへ、雫がひょっこりと櫓に登ってきた。


「なんや、雫かい。どないしたん?」

「はい、お水の差し入れに来ました」

「お!ちょうど喉が渇いたところやってん。おおきに」


雫が差し出した竹筒を受け取ると、ゴッゴッと一気に飲み干す。

そんな真桜を、雫はニコニコと見つめていた。

出会った当初は、何故か堺訛りで話す霞や真桜に面食らったが、それももう慣れた。


「しかし、雫んとこの姫路衆いうんは、よう働いてくれるわぁ。ウチの工兵隊にも引けをとらんで、あれは」


飲み干した器を返しながら雫に語る。


「えぇ。うちの者たちは、よく城などの普請や修繕なども行っていましたから」

「なるほどなぁ~」


櫓から目を外に転ずる。

姫路衆は主に、切り出された材料の加工などを担当している。

設計図さえ渡せば、監督の必要もないほど優秀だ。


「懸念やった材料不足もどうにかなりそうやしなぁ~」

「は、はぁ…」


ご機嫌な真桜に対し、雫は苦笑い半分の顔。


「せや、そっちの方にも激励にいったろか」


そう言うや、真桜は意気揚々と櫓を降りる。

雫もその後をついていくのだった。






中庭のやや奥まったところ。

僅かな木々が茂っている場所に、澄んだ声が響き渡る。


か楢ず(必ず)栃桐樒柿(と契りし君が来)柾根葉(まさねば) 椎て松よの(強ひて待つ夜の)杉柚桑うし(過ぎ行くは憂し)


幽の言霊に応え、木々がみるみるうちに育っていく。


「よしっ!切れー!」


一刀の護衛にと、親衛隊から真桜が指揮を引き継いでいた、園丁無双の方々が、それらの伐採・成型を行っていく。


「ふぅ……」

「おー、やっとるなー」


一仕事終え、幽が一息ついたところへ、真桜と雫がやってきた。


「これはこれは、真桜殿に雫殿」

「お疲れ様です、幽さん」


雫はやはり水の入った水筒を渡す。


「かたじけない。ちょうど一句詠み終え、喉がカラカラでござった」


はっはっは、と乾いた笑いをしながら水を口にする。


「いやぁ、それにしてもアンタのおかげで、工期にメッチャ余裕が出たわ」


そんな幽に真桜が笑顔で話しかける。

というのも、函谷関用の雲悌車を作るにあたり、一番の懸念は資材の不足だった。

元々洛陽にはそれほどの資材はなかったし、周辺から集めるにしても時間の問題があった。

それを一気に解決したのが、幽のお家流だったのだ。


「それがしのお家流は、促成栽培のためにあるわけではないのですがなぁ…」


そう言うと、先ほどよりも更に乾いた笑いを浮かべる。


「まぁまぁ、固いこと言いっこなしやで。アンタのご主人からの許可もあるんやし」

「それはまぁ、そうですが…」

「それにな、この雲悌が早ぅ出来上がって紫苑を助けられれば、剣丞がメッチャ喜ぶ。すると、剣丞の嫁さんであるアンタのご主人もメッチャ喜ぶ。そうすれば、アンタにも何かエェことがあるっちゅー話やん。悪い話やないやろ?」

「それがしの一番の喜びは、公方様に大人しくしておいて頂くことなのですが…」


その頃には元気になっているであろう一葉が何かをやらかす絵を想像し、幽は瞑想に入る。


「ま、まぁ…一葉さまの事はともかく、剣丞さまのためになると思えば…」


しれっと雫も失礼なことを言う始末。

そんな雫の言葉を聞いてか聞かずか、申し訳ござらん、と幽は中空に向けて手を合わせる。

詫びているのは木々の霊か、細川家の先祖か、はたまたその両方か。


「ほな、この調子で頼むで~」


真桜は最後まで調子を崩さずに、幽の肩をポンと叩くと、再び櫓の方へと戻っていった。






「おいテメェらぁ!!何で言われたこと一つ出来ねぇんだ、あぁん!!?」

「そうなの!テメェらみたいなグズでのろまで低脳なチンカス野郎共は、言われたことくらいちゃんと出来なきゃ、チンカス以下のゴミ同然なのっ!!」


真桜と雫が櫓に戻る途中、突如として大音声が響いた。

その声の主らは、森一家の副将・各務と沙和だった。

そして彼女らが仁王立つ眼前では、森一家の面々が地面に正座させられている。


今回、森一家は荷運びを担当している。

(かしら)の小夜叉は鬼探しのほうに行ってしまったので、副将の各務と、何故か馬が合ってしまった沙和が一家を監督しているのだが、構成員の記憶力などが著しく悪く、先程から失敗を繰り返している。

そのため、二人の激励なのか罵倒なのか分からない声は轟く一方だ。


「し、しかし姐さん方…俺らぁ元々、戦が仕事でして…」


勇気ある者が、おずおずと手を挙げながら言い訳を口にした。

が、


「テメェコラ!誰が口答えしていいっつった、あぁん?」


各務に頭を掴まれ、すぐに鎮圧される。


「そうなの!口からクソひり出すときは、頭とケツにさーを付けるの!」

「さ…さー?」


訳の分からない要求に、さすがの森一家も動揺する。

これに対し、ダンッと地面を踏み鳴らす沙和。


「さ、さー!で、よろしいですか?さー!」

「ようやく言われたことが出来るようになったな!これでお前らは、能無しのチンカスから脳みそのあるチンカスに生まれ変わったの!次からは、はいの時はさーいえっさー、いいえの時はさーのーさー、と言うの!」

「いぇさ?の、のーさー?」


ダンッ!!


「分かったかなのっ!!?」

「「「さ、さー!いえっさーー!!」」」

「お前らは言われたことすら出来ない能無しかっ!?」

「「「さー!のーさー!!」」」

「なら各務さんの指示をちゃんと聞いて、言われた通りにするの!!」

「「「さー!いえっさー!!」」」

「よっしゃ、いい返事だ!ならテメェは……」


テキパキとした各務の指示に、キビキビと動くようになった森一家。

今度こそ言われたとおりに、きっと、動けるだろう。

蜘蛛の子のように散った一家を見て、各務はふぅと額の汗を一つ拭う。


「ありがとうございます、沙和さん。おかげでうちの衆にも、ようやく気合が入りましたわ」


楚々とした雰囲気は、先程までとはまるで別人を思わせるような豹変振りだ。

顔まで変わってしまったのではないかと錯覚する。

と言うのもこの各務、戦場では小夜叉や先代頭目の桐琴のような鬼になるのだが、普段は名家のお嬢様のような立ち振る舞いなのだ。

まぁ、実際に名家の生まれらしいのだが…


「気にしないで欲しいのー。沙和も、久々に熱くなったの~」


いぇ~い、と人差し指と中指を立てる。


「それより各務さん!これが終わったら、一緒に街へ服を見に行こう、なの!」

「服、ですか?」

「そうなの!各務さんみたいに清楚な美人さんがあんまり周りにいないから、そういう系の服を見立てさせて欲しいの」


色んな人が怒りそうなことを、しれっと言ってのける沙和。


「私でよければ…あまり普段は服に頓着しないので、ご期待に応えられるか分かりませんが……」

「えぇ~もったいないの~。何かないの?色とか形とか」

「色は…普段は黒か赤が多いですね。返り血があまり目立ちませんし、他の色を着ていても自然とそうなってしまいますから…」

「あー、分かるの。汚れは目立たない方がいいよね~」


噛み合っているのかいないのか分からない会話が、その後も二人の間で延々と続いていった。




「なんや…各務さん、メッチャ性格変わってへんか?」

「それを言うなら、沙和さんも随分とその…口調が……」


遠目から一部始終を見ていた真桜と雫は、お互いの知らない方の変貌に、しばらく空いた口が塞がらなかった。






「真桜さーーん!」


櫓の下から声がする。


「なんやー!?」


そこには、ひよと蒲公英の姿があった。

二人は、細かい絡繰部分を担当していた。


「歯車が出来たので見てくださーーい!!」

「分かった!いま行くでーー!!」


そう言うと雫と一緒に小走りで、ひよたちの元に赴く。

すると、


「これです!」


大小様々な形の歯車が入った箱を、ひよが満面の笑みで差し出してきた。


「どれどれ…」


一つ二つ手に取ると、職人の顔になる真桜。

上から見たり横から見たり、日に翳すように見たりと、色々な方向から一つの歯車を見て、ようやく箱に戻す。

それを五回ほど繰り返した。

そして息を一つ吐いて、


「うん!えぇ出来や!手先が器用や聞いとったけど、こりゃ予想以上やわ~」

「えへへ~~♪こういう細かい作業は得意なんですよー」


褒められて満更でもないひよ。


「タンポポが作ったんも入っとるんやろ?大したもんやで。さすがは三国一の罠師やなぁ」

「む~~…面白くない工作はタンポポの趣味じゃないんだけどなーー…」


唇を尖らせるタンポポ。

どうやらこちらはあまり乗り気ではないようだ。

普段のタンポポなら、ばっくれそうなものだが…


「真桜さん真桜さん!タンポポちゃんって、すっっっごい器用なんですよ~!色々と面白い話もしてくれますし、私、タンポポちゃんと作業するのとっても楽しいんだ~」

「くっ……」


一切の邪念なく、太陽のような笑みを湛えるひよから、タンポポは眩しそうに目を背ける。

そして、半分涙目になりながら雫に耳打ち。


「ねぇ雫。やっぱタンポポって腹黒いのかなぁ?ひよの笑顔を見てると、なんか申し訳なくなっちゃって…手も止められなかったんだよね~…」

「あ、あはは…」


苦笑うしかない雫。


「普段は剣丞さまがいらっしゃるのであまり目立ちませんが、ひよさんも人蕩らしの気がありますからね。どなたともすぐに仲良くなれますし。これは結構、恐るべき能力ですよ」

「分かる……お願いされたわけでもないのに、何故かひよの分までやってあげたくなっちゃうっていうか…」


腕を組むと、うんうんと感慨深げに頷くタンポポ。

身に沁みるところがあったのだろう。


「どうしたの、二人して?」

「ううん、なんでもないヨ?」

「はい、特になんでも」

「……そう?」


そんなやりとりを見ながら、真桜が底意地の悪い笑みを浮かべる。


「ほなら~、二人にはこの絡繰も作ってもらおかな?」


何処から取り出したのか、何かの設計図をバッと広げる。


「ちょっと複雑な代物なんやけど、二人の実力なら作れる思うんよ。……んまぁ、今回の雲悌には使わんかも知れんのやけど…」


最後にボソッと、良からぬ情報を入れる真桜。


「ちょっ!真桜、アンタそれ絶対に私物用の絡繰じゃ…」

「うわぁ~、これは難しそうですけど、ひよ頑張っちゃいますよー!タンポポちゃんも、一緒に頑張ろうね!」


ひよには真桜の最後の言葉は届かなかったようだ。


「ねっ?」


笑顔が咲く。


「ヴエェ………うん」


絡繰の設計図を手に、意気揚々と作業小屋へ向かうひよと、それにトボトボとついていくタンポポ。

対称的な背中だった。


「真桜さん…」


呆れ半分、というか九割方呆れている雫。


「いやぁ~、普段何かにつけてサボっとるタンポポには、エェお灸やろ」

「は、はぁ……」


仕事も私事も順調と、満面の笑みを浮かべる真桜。

あとで何か甘いものでも差し入れにいこう。

やけに小さく見えるタンポポの背中を見て、そんな事を考えた雫であった。


「まぁ実際、あの二人の腕は確かやしな」


置いていった箱から部品を一つ手に取り、改めて眺めてみる。


「これなら、案外楽に終わりそうやな」


各員を一通り見渡してきた真桜は、満足気に頷いた。

紫苑救出用の雲悌製作は、色んなものを犠牲にしながらも、順調に進んでいた。




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