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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
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弐章・参ノ零ノ壱 ~病床の女(ひと)~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、46本目です。


今回と次回を使い、幕間の話を二つお伝えしたいと思います。

本筋ではないんですが、後々出てくるときにいきなり感があるかなぁと思い、物語に加えました。

まぁ、本編よりサイドストーリーを進める癖がありますので…^^;

ここ二つはテンポよく投稿できればいいなぁと思います。


なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。

その辺、お含み置き頂ければと思いますm(_ _)m







剣丞たちが洛陽に戻る少し前。

一刀たちが陳留から洛陽に到着した頃に、時は遡る。






――――――

――――

――




「お帰りなさいませ、ご主人様」


洛陽に着いた俺たちを出迎えてくれたのは、笑顔の月だった。

その服装は普段のメイド服ではなく、董卓軍を率いてた頃の正装だった。

それだけで、月の頑張りが見て取れる。


「あぁ。お疲れ様、月」


気持ちを込め、頭を撫でる。


「はふぅ……ご主人様…」

「ちょっとアンタ!月に何してんのよ!!」

「なんだ、居たのか詠」

「アンタねぇっ!」

「ウチもおるでー」


月の後ろには、そこにいるのが当然かのように、詠と霞が控えていた。


「二人も、洛陽防衛お疲れ様。しかしまぁ、ここに恋が居れば、まんま董卓軍だね」

「え……いえ、ご主人様…」

「言われてみればそうね」

「せやからウチらが洛陽で組まされたんやろけどな~。久々やったけど、やっぱ馴染んだ感じがあったわ」

「…………」


何故か月が少し困った顔をしていた。


「それでご主人様、お隣の方は?」


相変わらず俺の腕に抱きついている少女が、やはり気になるようだ。


「あぁ、この娘は小波。事情があって今は俺たちが保護してるんだ。その…剣丞、くんは?」

「剣丞さんなら、まだお戻りになってませんが…」

「そっか……」


多分だ、小波と剣丞くんを引き合わせたら記憶が戻ると思うんだけど…


「それより、病人は何処だ?」

「「華佗!」さん」


月と詠は華佗が居たことに少し驚いたようだ。


「たまたま陳留に逗留しててね。洛陽に病人が居るって聞いてから来てもらったんだ」

「それで、病人は?」


華佗は病人が気になってしょうがないようだ。


「病人て一葉のことやろ?せやったら、ウチが案内したるわ。他の連中は疲れてるやろから休んどき」

「俺も行っていいか?」

「別にえぇけど……その娘ぉもか?」

「あぁ。この娘は剣丞くんの仲間なんだ。今は記憶を失っちゃてるんだけど…」

「はぁ~、そらまたエラいこっちゃな。ま、えぇわ。付いてきぃ」


月と詠に他の面子を休ませてあげてと伝えて、俺は霞についていくことになった。




…………

……




霞に連れてこられたのは、洛陽城内の貴賓室がある一角だった。

その一室の前で霞は足を止めると、扉をコンコンとノックする。


「はい」


中からは少しか細い女の子の声が返ってきた。


「双っちー。ウチやけど、いま大丈夫か~?」

「霞さん。はい、いま開けますね」


応答があり、まもなく扉が開かれる。


「霞さん、いつもありがとうございます」


開かれた扉の向こうでは、身体を二つに折り、深々と頭を下げる少女の姿があった。


「ちょ、双っち!そないせんでえぇって言うとるのに…ほら、それより今日は双っちに会わせたい人がおんねん!」

「会わせたい人?」


ゆっくりと、その頭が上げられる。


「あっ…」


見るからに深窓の令嬢、といった風体の可憐な少女。

その大きな瞳が俺を捉えると、更に大きく見開かれた。


「旦那様っ……では、ない?…そ、そちらは小波さん!?あぁ、もう何が何やら…」


突然の訪問者である俺と小波に驚きを隠せないようだ。


「落ち着きぃ双っち。紹介するわ。まずはこっちにおる、双っちが全然気付かんかった男は、医者の華佗や」


双葉から見ると俺の影で見えなかった華佗を、霞が双葉の前に引っ張り出す。


「お医者様、ですか」

「五斗米道の華佗だ。よろしく」

「ご、ごっとべいどう?」

「違ぁ~~~う!!ごっと「病人が寝とるん、や!」ヴェっ…」


いつものを始めかけた華佗の無防備なわき腹に、霞の容赦ない肘打ちが入り、華佗が屈みこむ。

もんどりを打たないだけ立派だと思う。


「そっちの嬢ちゃんはえぇな?そんでもって、これが北郷一刀。アンタの良人の伯父さんや」

「ええぇっ!!?」


さっきの華佗に負けず劣らぬ大声で、飛び跳ねるように驚く少女。


「え、だってあの、とてもお若い…あぁっ!も、申し遅れました。私、剣丞さまの側室を務めております、足利双葉義秋と申します。双葉とお呼びください!ほ、北郷一刀様、よろしければ義理の姪として、何卒末永くよろしくお願いいたします!!」


パニクった少女、双葉は頭を下げるどころか、床に平伏してしまった。


「いやいやいやっ!顔を上げてください!それに様付けなんて…俺はそんな大層なもんじゃないですから!」


こんな可愛い女の子を床にひれ伏させてしまい、俺のほうもパニックになる。


「ふふっ…やはり旦那様の伯父様なのですね」


そんな俺の様子がおかしかったのか、上げた双葉の顔には笑みが見えた。


「やはり、って?」

「旦那様と初めてお会いしたときにも、同じように仰って下さいました」

「あ…そ、そうなんだ」


そう言いながら、楚々とした振る舞いで立ち上がる双葉。

女の子に平伏なんかされたら、男は必ずああ言うと思うけど…


「それで、一刀さまと小波さん、それにお医者様まで来られたのは、いったいどういうご用向きですか?」

「話せば色々と長くなるけど、まずは一葉さんを華佗に診てもらおう。そのために俺たちは来たんだ」

「わざわざお姉様のために…どうぞ、よろしくお願いします」


そう言って、今度は立ってだけど、華佗に深々と頭を下げる双葉だった。




…………

……




「そんな…小波さんが、記憶を…」


絶句する双葉。知り合いが記憶喪失となれば当然だろう。


「華佗さまでは治せないのですか?」

「あぁ、残念ながらな。己の未熟さを痛感させられるよ」


双葉の姉、一葉の身体に手を当てながら顔をしかめる華佗。


「それで、剣丞くんが小波の記憶を取り戻す鍵になってるんじゃないかと思ってるんだ」

「なるほど!旦那様にお会いすれば、小波さんもきっと思い出しますよ。小波さんが旦那様のことまで忘れてるなんて、絶対にありえませんから」


手を合わせて、名案です!と言わんばかりの笑顔。

剣丞くんのことを全面的に信頼しているようだった。


「それで、一葉の方は治せそうなん?」

「あぁ。思った通り、ほとんど体内に氣が流れていない。これをどうにかすれば、ひとまずは問題なかろう」

「本当ですかっ?」

「あぁ。まずは氣穴を活性化させる処置を施す」


そういうと華佗は、おなじみの鍼を取り出すと、足を肩幅に開き気合を込める。


「我が身、我が鍼と一つなり!一鍼同体っ!全力全快!!必殺必治癒、病魔覆滅!!げ・ん・き・に・なぁれぇぇぇぇぇっ!!!」


華佗の氣が乗った鍼が一葉に打ち込まれる。

すると、変化はすぐに見られた。

それまでは、まるで人形のように真っ白だった肌に赤みが戻り、そして…


「う……ん…」


微かに眉根が動き、長いまつ毛が震える。


「お姉様っ」


双葉が枕元に詰め寄る。


「ん……ぁ…」


その声に応えるように、ゆっくりと、瞼が開いた。


「お姉様!あぁ……良かった…」

「…双葉、か?……どうした。なんぞ、怖い夢でも、見たのか?」


咽び泣く双葉に、優しく声をかける一葉。

しかし、その声は弱々しい。


「ここは……二条では、ない…のか?」

「……ぐすっ…覚えてらっしゃらないのですか?お姉様はお一人で三好と戦って、そして…」

「あぁ………思い出したぞ。確か…最後に、主様が……」


そう言う一葉の目は、まだ少し焦点が合っていない。


「そうです。旦那様に助けられて、そして今、私たちは洛陽にいるのです」

「洛陽、じゃと?……はは、やはりこれは夢か。双葉が…このような冗談を言うはずはないし…何より、身体が思うように動かんことも、得心がいく」

「いや、夢じゃなくて現実だよ」


見ていられなくて、思わず声をかける。

混乱させないよう、小波を一葉の視界に入れないように身体で隠しておく。


「主様っ…では、ない?」

「あぁ。俺の名は北郷一刀。剣丞くんの伯父だよ」

「なん、じゃと…?」

「そしてこっちは医者の華佗だ」


華佗も枕元に呼び寄せ、簡単に紹介する。


「これから色々と話すけど、落ち着いて話を聞いてほしい。聞きたいこともあるだろけど、喋るのも辛いだろうから、後でまとめて、ってことでどうだろう?」

「……分かった」


弱々しいながらも、しっかりとピントの合った目で俺の瞳を覗き込み、頷いてくれた。


「それじゃ、まずは双葉からでいいかな?一葉がどうして今の状態になったのか、話してあげて」

「は、はい!分かりました」

「その後のことは、霞話せる?」

「了解や」


一葉の視界の外にいる霞に小声でたずねる。

あまり一気に情報を流しても混乱するだけだろう。


その後、双葉から一葉たち山城国が置かれていた状況、そして一葉の奮戦と剣丞くんたちによる救出が語られた。

霞もその救出隊にいたらしく、紹介も説明もスムーズにいった。

説明のバトンを受け取った霞によって、この世界について語られた。

その流れで小波のことも話し、質問もなかったようなので、最後に華佗から一葉の容態についての説明をすることになった。


「そのお家流とやらの使いすぎで体内の氣が尽き、氣穴は機能しなくなり、氣脈も弱っているというのが現状だ。先ほど氣穴を活性化させるツボを刺激したこともあり、意識などは最低限保てるだろうが、まだ満足に体を動かすことはできないだろう。これからは氣穴の活性化と平行して、細くなっている氣脈を広げていく措置を取ることになる」

「一つ……よいか?」


華佗の長い説明の区切りで、初めて一葉が口を開いた。


「なんだ?」

「余が、元通りに動けるようになるのは、いつじゃ?明日か?…明後日か?」

「それはさすがに無理だな。一葉殿が元々どれくらい動けていたのかは分からないが、一度弱った氣脈は少しずつ広げていかなければならないし、寝たきりが長ければ身体中の筋肉も落ちているだろう。まずは身体を慣らす所から始めなければならないから…恐らく、数ヶ月はかかると思うぞ」

「数ヶ月だ、ごほ!…ごほっ!!」

「お姉様!」


いきなり大声を出そうとして咳き込んでしまう一葉。

双葉が慌てて水差しを差し出すが、それには目もくれず、


「余は…そこまで、待てん、ぞ……もそっと、早うならん、の…か?」


息も絶え絶えの掠れた声で、弱々しく懇願する一葉。


「焦る気持ちは分かるが、病を一気に治す術はない。一歩ずつだ」

「そうか……」


明らかに落胆する一葉。


「俺も最善を尽くすことを約束しよう。安心してくれ、必ず治る」

「心遣い…痛み入る」


寝ている状態だが、頭を下げたのがハッキリと分かる。


「……すまぬが、少し…一人にさせてくれ」


そう言って一葉は目を閉じる。

双葉に目配せすると軽く頷いたので、俺たちは静かに部屋を辞すことにした。




…………

……




「申し訳ありません。せっかくご尽力頂いているのに…」


一葉の部屋を出て、少し離れると矢庭に双葉が頭を下げた。


「いや、気にしないでくれ。誰でも、病気のときは心細いものさ」

「あの調子だと、普段は割と活発な方だったりするの?」

「え、えぇ…それは、もう……」


目を逸らす双葉。


史実の足利義輝といえば、確か剣豪将軍として有名だったはず。

この妹、双葉をしてこの様子だと、かなり破天荒な性格と想像ができる。

それがしばらく身動きが取れないとなれば、相当堪えるだろう。


「ま、後は剣丞に任せるしかないんとちゃう?」

「そうですね!旦那様ならきっと、お姉様を元気付けて下さいます!」


沈んでいた顔が一瞬で笑顔になった。

ここまで信頼されている剣丞くんというのは、一体どんな人なんだろう?

俺はまだ見ぬ自分の『甥』に思いを馳せた。






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