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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
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弐章・弐ノ壱ノ弐 ~駿州騒乱~

どうも、DTKです。

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、37本目です。


前回から始まった駿河編。

いよいよ駿河に敵の手が伸びてきます。

ちょっとした(?)オリジナル要素ありです。


なお、実際の地形や距離とは異なった表現があります。

その辺、お含みおき頂ければと思いますm(_ _)m





「ふぁ~あ…ったく!暇だぜ」


身の丈以上ある槍を、くるくると指で器用に回す少女。


「ちょおっ!小夜叉ちゃん、危ないから人間無骨を振り回さないでよぅ…」


隣を歩いていた、もう一人の少女・ころは、槍をぶん回す少女・小夜叉に、頭を抱えながら静かに抗議する。


「んなこと言ってもよ~、ころ。オレぁもう暇で暇でしょうがないぜ。剣丞と鞠は駿河の外に調査に行くみたいだしよー。オレもそっちに付いていきたかったぜ」


ヒュンヒュンと音を立てながら速度を上げて回る小夜叉の愛槍・人間無骨。

道端の雑草が乱れ飛ぶ。


「だから危ないんだってば~……」


頭を抱えながら、小夜叉から少し距離を取るころ。


「やっぱ貧乏くじだよぉ~…」


異変後、村々を回って慰撫する人を派遣しようとなったとき、川並衆として様々な事案に当たってきた、ころがまず選ばれ、さらに何か荒事が起こったときのために護衛をつけよう、という話になったのだが…


「そりゃ、剣丞さまや御屋形様の鞠ちゃんに護衛してもらうわけにはいかないけどさぁ…」


その二人を除くと、残るは腕っ節はからきしのひよ。

頭脳労働専門の詩乃。

森一家の構成員を除けば、小夜叉しか残っていなかった。


「しゃーねーなー。弱っちいころは、俺が護ってやんよ!」


と、最初は意気込んでいたのだが…






――

――――




「お武家様が、わざわざ見回りですか……へぇ、ありがたいこってす、はい」


「何か変わった事はないかって~~?そうですなぁ……昨日から嫁の機嫌が悪――」


「すげー!かっけー!みんなーー!槍だぜ、槍!!」




――――

――






集落を回ってみると、混乱の一つもなく、平和そのもの。

これはこれで、ころからすれば全くもって素晴らしいことなのだが、喧嘩の一つもあるかと期待していた小夜叉にとっては、肩透かしもいいところ。

そんなところへ、連絡の途絶えた小波の捜索に剣丞と鞠が赴くと手紙で伝え聞いてから、小夜叉の機嫌は悪化の一途を辿っていた。


「どっかで派手な喧嘩でも起きてくれねぇかなぁ~。そしたらこう、バスッと一突きにしてやるんだけどな~」


回していた槍を俄かに掴むと、ダンッと一歩踏み込み槍を突き出す。


「一突きにしちゃダメなんだってば!」

「別にいいじゃねぇか、喧嘩両成敗って言うだろ?」

「だから、本当に成敗したらダメなんだってば~…」


ころは、大きく一つ溜息をつく。

前より我慢強くなったとはいえ、まだまだころが手綱を取るには厳しかった。




…………

……




「ん?」


次の集落にまもなく着く、といった頃、ころが何かに気付いた。


「どしたー?」


肩に担いだ人間無骨に頭をもたらし、やる気は売り切れです、とばかりに気のない返事の小夜叉。


「なんか、煙みたいのが見えるんだけど…」

「煙なんか別に珍しくもねぇだろ?昼餉の準備なんじゃねぇか?」

「小夜叉ちゃん!あれ、見てってば!」

「んだよ、うっせ……」


ころに促され、渋々顔をそちらに向ける小夜叉。

すると前方に、上空へ上がっていく煙が目に入った。

二本、三本。

炊事の仕度のときに上る白い煙ではなく、もうもうと黒い煙が幾筋も立ち上っている。

こうしている間にも、煙の量は増加の一途を辿る。


「――っ!」


駆け出す小夜叉。


「小夜叉ちゃん!」

「オレが先行する!ころは後から来い!」


ものすごい速度でころを置き去りにし、小夜叉は一人集落へと向かった。




…………

……




「これは…」


集落の入り口に着いた小夜叉は絶句した。

家屋には所々、火が放たれており、道々には血の海に人が何人も倒れていた。


「いったい何があったってんだ?」

「う…うぅ……」


その時、どこからかうめき声が聞こえた。


「どこだっ!?」


声の出所を探す小夜叉。

すぐ側の家の影で倒れていた、その人物を見つけた。


「おい!大丈夫か!?」


男の上体を起こしてやる。

腹に深い傷を負っており、かなりの重傷だ。


「いったい何があったんだ!?」

「ごほっ……お、鬼と…白い、装束を纏った連中が、き…急に、現れて……」

「鬼と…人間ってことか!?」


こくりと、首を縦に動かす男。

鬼と人間が共に行動しているなど、信じ難い。


「そいつら、何か言ってなかったか!?」


人間がいたなら、手がかりがあるかもしれない。


「ほ…北郷と…に、新田は…どこだ、と…」

「新田だと!?」


そいつらの目的は剣丞か!?


「おいお前、他には、何か手がかりはないのか!?」

「ど……はっ……う、が……」


がくっと、男の身体から力が抜ける。


「おいっ!おいっ!」


小夜叉は肩を持って揺するが、反応はない。

男は、事切れていた。


「くそっ!」


悔しい気持ちを抑え、ゆっくりと男の身体を地面に横たえる。

簡単にではあるが手を合わせる。


「…奥に行きゃ、まだ無事な奴がいるかもしれねぇな」


小夜叉は燃え盛る集落の奥へと、足を踏み入れた。




――――――

――――

――




「小夜叉ちゃ~ん…?」


集落の入り口付近には小夜叉の姿は見られない。

奥にまで入っていったのだろうか?

ころが集落の入り口に到着した頃には、火の勢いは多少弱まりつつあった。

しかし、まだまだ火は残り、離れていても肌を刺すように熱い。

ころと小夜叉が別れた地点からここまで一本道なので、獣道などに入らない限り、小夜叉が奥に行ったことはまず間違いない。

放っておくわけにもいかず、ころは集落の奥へと歩を進めた。


奥に行くにつれ、肌や髪がチリチリと燃えているような、陽炎で視界がふわふわとしているような、そんな感覚を覚えるころ。

いったん出て、鎮火を待った方がいいかも。

そんな考えが頭を過ぎったその時、前方にやや開けた場所、集落の広場が視界に入る。

そしてその中心辺りに、見慣れた背中を確認した。


「はぁ……よかった」


小夜叉が無事だったことと、ここを出られるという二重の安堵がころを包む。


そんな油断がなければ、いつものころならば気付けたかもしれない。

小夜叉が戦闘体勢をとっていたことを…


「お~~い!小夜叉ちゃ……」

「バッ…来んなぁ!ころ!!」

「え?」


鬼の形相で振る返る小夜叉。

その顔がぐらりと揺れて見えた。

見えただけではない、地面そのものが揺れている事に、ころが気付いたのは一瞬後のことだった。


「まさか――」


一度経験したことのある、地震とは違う揺れ。


「「「グガァアアァアァァァァアァァ!!!」」」


広場を取り囲むように、鬼の大群が地中から勢いよく湧いて出た。

運悪く、鬼の湧出地点に立っていたころは、中空に弾き飛ばされる。


「ころぉっ!」


頭が下を向いた危険な状態のころ。

このままでは頭から地面に激突してしまう。


「くぅ!」


ころは何とか空中で身を入れ替え、足から着地することに成功した。

しかし、


「あ痛っ…!」


着地の衝撃で足を痛めてしまった。


「あ……あぁ……」


へたりこみ、動けないころに鬼が迫る。

鬼はその丸太のような腕を振り上げると、ころ目掛けて…


キ…ィィィィィィン……


刹那、鳴り響く金属音。


「ころ!頭ぁ下げろや!!」


咄嗟に頭を抱え込むころ。


「刎頸二十七宿ぅぅぅぁあぁっ!!」


地面と水平に薙がれた人間無骨。

その穂先から伸び出た氣の刃が、ころを襲おうとした鬼も含めて、鬼どもの身体を上下真っ二つに切り裂く。


「「「ギャァァアアァァァアァ!!!」」」


数多の断末魔を残し、包囲網の半分が消し飛んだ。


「大丈夫か!?ころ!!」

「あ、ありがとう…小夜叉ちゃん」

「立てるか?」


小夜叉が屈んでころに肩を貸す、が…


「痛っ!!」


右足を押さえながら倒れこんでしまう。


「お、おい!大丈夫かよ!?」


慌てて小夜叉がころの右足を覗き込む。


「お前…それ……」


ころの右足首は大きく腫れ上がり、色も紫に変色していた。

骨に異常があるのかもしれない。

これでは戦うどころか、歩くことすらままならない。

ザッと、砂を踏む音がした。

一度は小夜叉のお家流で引いた鬼の生き残りが、再び二人の周りを取り囲もうとしている。


ヤベェぞ…どうする!?


小夜叉は密かに焦る。

ころは立てない。

戦えない数ではないが、全方位の攻撃からころを守りながらの戦いは、さすがの小夜叉でも不可能だ。


……これしかねぇか。


覚悟を決めた小夜叉は、腰の瓢箪を手にとると、思い切って蓋を外した。


「出てこいや!百段ーーー!!!」

『――ィーーーーーーンンッ!!!』


この世のものとは思えない獣の咆哮が、瓢箪から轟く。

と同時に、勢いよく雲のようなものが溢れ出す。

それはゆっくりと、一つの形に収束する。

それを一部始終見ていたころは、姿形は分かったが、それが『何』であるかは理解できなかった。


『――――ィィィーーーーーーーンンンッッ!!!』


全身を震わせ、(いなな)いたモノ。

この『馬』こそ、森家が誇る悍馬(かんば)・百段である。

森家の愛馬だけあり、普通ではない。とにかくデカイ。

普通の馬の数倍はあろうかというその体躯は、馬というより、それこそ化け物に見えるだろう。


「おい、いいか百段!このころを駿府へ連れて行け」


垂れ下がっていた手綱を引っ張り、百段の顔を自分の方へ向かせる。


「こ、小夜叉ちゃん!?」

「ころ、お前は駿府屋形から援軍を連れてきてくれ!こいつなら一刻程度で往復できっからよ」

「いえっ!?」


驚くころを尻目に、小夜叉は手にした手綱を思いっきり引っ張ると、百段の顔に自分の額をぶつけるように寄せメンチを切りながら、


「おいテメェ百段。ころはエサじゃねぇからな!分かったな、エサじゃねぇぞ!?テメェはころを駿府屋形へ連れて行きゃいい。もし喰っちまったらテメェをぶっ殺してやっからな、あぁん!?」

「ちょおっ!」


とんでもないことを口走る小夜叉。

思わず突っ込みたくなるころ。

対して百段は、仕方ねぇな、とばかりに右前脚で二回ほど地面をかく。

ぼっこりと穴が開く。


「分かったらとっとと行けや!!」


ピシャンと張り手一発。


『――――――ィィィィンンッッ!!!』


駆け出す百段。

大きな口を開けながら、ころまっしぐら。


「ひいぃっ!」


エサという言葉が頭を過ぎり、首を竦ませる。

そこを器用に、


『はぐっ』


と、ころの襟口を噛んで走り出す。

鬼の包囲が成る前に抜け出した。


「ふぅ……これでいい」


百段の巨体が、あっという間に小さくなるのを見届け、軽く息をつく小夜叉。

その顔には安堵の色が見える。

そしてゆっくりと、自分を囲む鬼を見渡し、


「これで気兼ねせず……獲物狩り放題だぁ!!」


一瞬で夜叉の顔になった小夜叉は、人間無骨を片手に鬼の大群へと突っ込んでいった。




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