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恋姫OROCHI(仮)  作者: DTK
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陸章・弐ノ壱 ~近江事情~

どうも、DTKです。

お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m

恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、記念すべき100本目です。


前章で発見された近江。

そこでは一体何が起こっていたのか、が今回の主旨です。

誰がどうしていたのか。是非お確かめ下さい。




街道を駆ける二つの影。

途中までは馬で来たのだが潰れてしまい、徒歩になったこともあって息も絶え絶え。

着物はところどころ破れ、血や土埃で赤黒く汚れている。

二人のうち背の小さい方の娘が、にわかに振り返る。


「みんな…」


視線の先には小高い山があり、その山腹からは煙が上がっていた。


「市…」


その少女を市と呼んだは長身の麗人。

市の良人・眞琴は傷だらけの妻を抱き締める。


「市、もうすぐ坂本だ。そこで態勢を立て直し、急いで援軍に向かおう」

「……うん」


二人が何故このような状態に陥ったのか。

それを知るには時を遡らねばならない。






――――――

――――

――




近江国を治める浅井家。

その主城の小谷城に、隣国の同盟相手、織田家から丹羽麦穂長秀が使者として訪れていた。

国主・浅井眞琴長政と織田久遠信長の妹にして眞琴の妻であるお市は、麦穂がもたらした報せに大きな衝撃を受けた。


「駿河が…」「消えちゃった…?」

「はい」


麦穂は沈痛な面持ちで、一言だけ返した。


「そんな…国が消えたとは、いったいどういうことですか!?信じられない…!」


眞琴は顔を青くして頭を振るう。


「武田・松平両家からの情報です。当家としては柴田を派遣して真偽を確認中ですが、まず間違いないでしょう」

「それより!お兄ちゃんは…剣丞お兄ちゃんは?」


市は上段から身を乗り出して麦穂に詰め寄った。

新田剣丞。

二人の義理の兄にして、二人の良人。

彼が率いる剣丞隊が中心となり、鬼の手に落ちた駿河を奪還。

そのまま鞠を国主に据え、復興作業に当たっていたはずだ。


「………………」


麦穂は目を閉じたまま口を開かない。


「麦穂さんっ!」


なお詰め寄る市。

目を開けた麦穂は、伏目がちに重々しく口を開いた。


「……剣丞さんを始め、駿河国内にいた剣丞隊の方々の安否は……不明です」

「そんな…」


眞琴は絶句してへたり込む。


「お姉ちゃんは…お姉ちゃんはどうしてるの?」

「久遠さまは気丈に振舞われております。この駿河消失により、再び日ノ本に混乱が起こることの無いよう、同盟国と連絡を密にせよ、とのご命令です」

「お兄ちゃん…お姉ちゃん…」


市は姉妹だからこそ、同じ人を好きになったからこそ、姉・久遠の痛みが良く分かる。

そして、久遠がいま何を為すべきと考えているかも…


「まこっちゃん…」


憔悴している良人に視線を投げる。


「……あぁ。分かってるよ、市」


顔色は少し悪いが、背筋はしゃんと伸びていた。


「取り乱してしまい申し訳ありません。姉さまの意、確かに受け取りました。我が浅井家に出来ることあらば、何でもお言い付け下さい」


真っ直ぐと麦穂を見据えるその瞳は、確かに一国の主のものだった。


「頼もしきお言葉、しかと受け賜りました。久遠さまは、近江は交通の要衝ゆえ領内の安定に努めよ。大事あれば浅井を頼みにする。と仰せです」

「分かりました。今以上に領内に気を配ります」

「なお、しばらくは与力として、私もお力添えをさせて頂きたく思っております。この長秀、どうぞお好きなようにお使い下さい」

「麦穂さんが力になってくれるなら百人力だよ!よろしくね!」

「はい。よろしくお願いします」






その後間もなく、近江も何処へかと飛ばされてしまった。

事前に山城が消失していたこともあり、備えは出来ていた。

民の動揺も少なからずあったが、浅井家の尽力。そして何より、比叡山延暦寺という心の拠り所があったからであろう。


近江は延暦寺の門前町・坂本。

旧六角氏居城・観音寺城。

そして浅井家本城・小谷城。

この琵琶湖を囲んだ三角形が連携することで、混乱を最小限に抑えていた。






――――――

――――

――



「麦穂さん、まだかなあ~?」


今日は小谷に、坂本・観音寺城の代官が集って軍議をすることになっている。


坂本は比叡山からの代官が、観音寺には麦穂が入っていた。

元々、京へ続く道は名義上織田家の管轄となっているため、麦穂にお願いしていたのだ。

このような事態になって離れ離れになっていたので、市は麦穂の到着を心待ちにしていた。


そんな折、


「た、大変です!!」


小姓が飛び込んできた。


「どうした!?」

「ぅ、お、鬼です!南に鬼の大軍を確認っ!」

「なにっ!?」


眞琴がガバッと立ち上がる。


「急いで全ての門を閉めよっ!赤尾と海北には直ちに門の守りにつくよう申し伝えよ!」

「はっ!」

「申し上げますっ!」


眞琴の言葉を聞いて退室した小姓と入れ替わりで、別の小姓が入ってくる。


「今度はなんだ!?」

「に、丹羽殿が…」

「麦穂さんっ!?麦穂さんがどうしたの!?」


麦穂の名前に市が食って掛かる。


「は…はっ。丹羽殿、小谷にご着到!しかし、道中鬼の襲撃にあったようで、下の医務所に…」

「――――っ!」

「市っ!」


眞琴の制止を振り切る。

市は階段を駆け下りる。

まどろっこしくなり飛び降りることもしばしば。

本丸を飛び出し、山を降りる。

目的の医務所は山下にある。

市はそこ目掛けて弾丸の如く走った。






「麦穂さん!!」


バンッと医務所の扉を開け、転がり込むように中へ入る。


「あら……お市さま。どうなさいました?」

「あ…れ?麦穂さん?」


そこには普段着ている服ではなく、無地の着物を羽織った麦穂が何事もなく立っていた。


「その…麦穂さんが怪我したって聞いたから…」

「あぁ…」


麦穂は思案するように人差し指を唇に当てると、


「それは、お市さまの早とちりですね。鬼の返り血で服が真っ赤だっただけですよ」


そう言いながら、部屋の隅へ目を向ける。

そこに丸められた服があり、血で真っ赤に汚れていた。


「少々手傷も負いましたので、こちらで手当てをお願いしていたんです」

「そう…だったの?」

「はぁ…ひぃ…い、市……はぁ、早過ぎだよ……」


首を傾げる市の後ろから、息を切らして膝に手を付く眞琴が現れた。


「まこっちゃん」

「眞琴さま、火急の事態です。鬼が現れました」

「ふぅ…こちらでも、情報は掴んでいます。御殿の方でお話を伺いたいのですが、お身体は大丈夫ですか?」

「はい、問題ありません」

「本当に大丈夫?」


眞琴の先導で三人が医務所を後にしようとする。


「丹羽様…」


そんな彼女らに医者が声をかける。


「くれぐれも、ご無理なさいませぬよう…」

「えぇ…分かっていますわ」


そう言って軽く微笑むと、麦穂は二人の後を追って医務所を後にした。




一人残された医者は、部屋の隅にまとめられている、元々麦穂が着ていた服を手に取る。

乾いた血糊がパリパリと剥がれると、ズタズタに引き裂かれた、かつて着物であった『もの』が静かに広がった。





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