第1話 簡単には出国させてもらえないようで
雪国で生まれ育った冷え症に苦しむエルフが国を出て、寒さとは無縁の南国での暮らしを目指すお話です。
カクヨム様のほうでも掲載しております。
「・・・何かいる。」
予め展開していた索敵魔法に何かが引っかかった。大きさから察するに、おそらくは人間の大人2人。この東西に通る街道は南側に海、北側に森があり、その先の森側で待ち伏せている感じだ。
「ルーシアさん、何がいるんだい?!」
荷馬車の主である農夫のハマーが訪ねる。
「この先に待ち伏せているのがいる。二人。」
ルーシアと呼ばれた冒険者風の魔法使いの女、ワケ有りで今はルーシア・シリウスと名乗っている。
目深に被ったフードの奥、眼鏡の向こう側の険しいジト目が鋭い眼光を放つ。
「えぇー!? ルーシアさん大丈夫ですか?!護衛お願いしますよ?!」
ちょっと頼りない感じで荷馬車の御者をしている青年はハマーの息子でホーという。
ルーシアは護衛のついでにジーマリングからズースへ向かう荷馬車に乗せてもらっているところだが、どうやら仕事をせねばならないようだ。野盗の類かも知れないが、追手の可能性もある。
「・・・ちょっと索敵魔法の精度を上げる。馬車を停めて。」
そうホーに告げると、索敵魔法をその野党にロックオンし、精度をあげる。精度を上げることで会話も聞こえるようになるのだ。
(・・・・・・。)
「アニキ、探しているエルフの女って、この街道通りやすかねぇ?」
「まぁ見つからなくても報酬は貰ってるしな、見つけたら追加報酬あるのはありがてぇが。」
(くっ、狙いはどうやらあたしか・・・すると野盗の類ではなく冒険者か?やはり誰かが追手を差し向けてきたか。)
ルーシアは狙いが自分であることを確信したが、荷馬車の護衛であるはずの自分が標的となると、依頼主を自分のことに巻き込むことになる。ルーシアは一考して別行動を取ることにした。
「ハマーさん、ここで一旦降りて先手を打つ。とりあえずそのまま進んで。」
「分かった、頼むぜルーシアさん!」
「え、ちょ、ルーシアさん?!」
ルーシアは背中を向けたまま返事の代わりに手を振り荷馬車を降りると、布に包まれた長物を持ち森に入り、身体強化の魔法を発動させると木々の間を縫うように駈けていく。そして男たちが潜む待ち伏せポイントに差し掛かる。
(・・・いた。)
ルーシアが男二人のうち一人に背後から長物を投げつけ一撃を喰らわせる。
「?!」
「あ! アニキ・・・?!」
木々の間から飛び出したルーシアは残った一人に見られる前に、浮いた長物を空中でキャッチしそのまま強烈なひと振りを頭頂部に喰わらせ倒す。あっという間に男二人を伸して、ルーシアは延びている男の身体を物色し、ある物を見つけた。
(冒険者証とあたしの人相書き、やっぱりあたしの捜索で雇われたか。)
男二人は殺さずに気絶させただけで、一応冒険者なので街道から見える所まで引きずり出し捨て置いた。こうしとけば誰かが見つけて助けてくれるかもしれないし、勝手に目覚めても迷うことはないだろうという配慮だ。野盗の類ならそのまま捨て置くところだ。
(それにしても、やはり誰かが探しにくるか。でも仕事は円満退職だったし、家族に向けた書き置きもカンペキだったし。軍があたしの動向を掴むには早すぎる。何がそこまでしてあたしをこの国に縛り付けたいのか・・・。)
ルーシアがあれこれ思考を巡らせているうちに、ハマー一家の荷馬車が追い付いた。
初めてこういうのを書きます。
妄想を妄想のままで終わらせず、形に残そうと思い始めた次第です。
少しでも興味を持って頂ければ幸いです。




