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転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた  作者: 季未


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73話

「目が……クソッ、ふざけた真似を!」

「逃がすな! 追え! あの女も魔物も上に逃げたぞ!」


1階の階段口でコボルトの閃光トラップに目を焼かれていた冒険者たちが、視力を取り戻し、怒号を上げながら2階へと雪崩れ込んでくる。

だが、欲望剥き出しで階段を駆け上がった彼らの足は、フロアの光景を前にピタリと止まった。


「……おい、なんだここは」

「一直線……? 隠れる場所が一つもねぇぞ」


彼らが足を踏み入れたのは、[C] 長い石造りの回廊。

左右の幅は狭く、遥か奥までただひたすらに直線が続く、無機質な石の通路だ。


回廊の遥か奥。

そこには、[R]スケルトン・バウォークの巨大な盾をバリケードにし、[N]スケルトン・アーチャーたちが一列に並んで弦をギリギリと引き絞っていた。


(放て!!)


「カッ!!」


弦が弾け、逃げ場のない回廊に骨の矢の雨が降り注ぐ!


「ぎゃあっ!?」

「前へ出ろ! 盾を持ってる奴は前に出ろ!」


冒険者たちが慌てて盾を構え、じりじりと前進しようとする。

だが、この回廊はただのマト当ての場所ではない。


「ヒィィィ……」


「な、なんだ!? 壁から幽霊が!?」

「剣がすり抜けるぞ! 物理攻撃が効かねぇ!」


壁や床をすり抜けて現れた[N]レイスたちが、不気味な声と共に冒険者たちへまとわりつく。

狭い通路で密集している彼らにとって、物理攻撃を無効化して内側から妨害してくるレイスは、まさに悪夢のような存在だ。

隊列が崩れ、同士討ちすら起き始める。


さらに──。


「キャ、キャン!(やったぜ!)」


[UC]コボルト部隊が、通路のあちこちに仕掛けておいた罠が一斉に牙を剥く!


ガコンッ!


「うわあっ! 落とし穴……ぎゃあああッ、底に槍が!」

「クソッ、足元にも気をつけろ! 毒矢のスイッチもあるぞ!」


矢の雨による面制圧。

物理無効のレイスによる隊列の分断。

そして、一歩踏み出すごとに作動する凶悪な罠の数々。

遮蔽物のない一直線の回廊で、冒険者たちの命と精神力がゴリゴリと削り取られていく。


(す、すごい……!)


俺は防衛フェーズ開始時に解放された指揮官モードの恩恵──戦術マップを見下ろしながら、思わず歓喜の声を上げそうになった。

ダンジョン全体の構造、味方の配置、侵入者の現在位置や数までがシミュレーションゲームの画面のように俯瞰で一目で分かるのだ!


(どこで敵が足止めを食らっているか、どの罠が未作動か、手に取るように分かる……! これがダンジョンの本当の力か!)


圧倒的な情報的優位。

これさえあれば、手駒の数が少なくとも、戦局を完全にコントロールできる!


(よし、コボルトたちは下がって次の罠の準備! アーチャーは後列で魔法を準備してる奴から狙い撃て!)


地形、罠、そして盤面を支配する神の視点。


(いける! このキルゾーンなら、大軍相手でも……!)


俺は戦術マップを見下ろしながら、確かな手応えを感じていた。

[N]スケルトン・アーチャーによる絶え間ない矢の雨。

床や壁から飛び出し、隊列を乱す[N]レイスたちの奇襲。

そして、踏み出すたびに作動する[UC]コボルトの罠。


狭く逃げ場のない[C] 長い石造りの回廊は、完全に冒険者たちを絡めとっていた。

先頭集団はバウォークたちの重装甲ラインに阻まれ、後続は罠と矢で削られていく。

このまま時間を稼げば、あるいは──!


「パニックになるな! 魔法使い、前へ出ろ!レイスに魔力攻撃を叩き込め!」


だが、その時、冒険者の集団から鋭い怒号が飛んだ。


「盾持ちは密集しろ! 上と前を塞いで亀の陣を組め! 矢を防ぎながら少しずつ進むんだ!」


声を上げたのは、年季の入った装備に身を包むCランク冒険者たちだった。

烏合の衆に過ぎなかった集団が、歴戦の探索者の指揮によって即席の軍隊へと変貌する。


「くらえッ!」

「ギ、ギィィッ!?」


魔法使いの放った光の矢が[N]レイスを貫き、霊体を霧散させる。

さらに、前衛の冒険者たちが盾を隙間なく重ね合わせ、アーチャーたちの放つ骨の矢を弾き返し始めた。


(くそっ……! やっぱりC級が混ざってると、一筋縄じゃいかないか!)


ただの罠や物量では、経験豊富なベテランを崩しきれない。

陣形を整えた冒険者たちが、じりじりと回廊を押し進んでくる。

バウォークやミノタウロスたち防衛ラインへの重圧が増していく。


ギリギリだ。

だが、まだ持ちこたえている。このままジリ貧に持ち込めば……!


「……チッ。いつまで足踏みしている。ゴミ共が」


その氷のような声が回廊に響いた瞬間、戦慄した。


(ゴア……!? なんでここに!)


ブラッド・ストーカーと戦っていたはずのゴア・シェルドーが、冒険者たちの最後尾に姿を現していた。

ストーカーを振り切ったのか、それとも……いや、今はそんなことより!


「ひぃッ!? ゴ、ゴアさ──」

「どけ。邪魔だ」

「ぎゃあああっ!?」


ゴアは、自分の前に立っていた冒険者の背中を無慈悲に蹴り飛ばした。

吹き飛んだ冒険者が床に転がり──その衝撃でコボルトが仕掛けていた毒矢のトラップが作動し、男は全身に矢を浴びて絶命する。


「な、何をするんだ!?」

「俺たちは味方じゃ──」


「味方? 勘違いするな」


抗議しようとした冒険者の胸ぐらを、ゴアが片手で軽々と掴み上げる。

そして、盾を構えて進もうとしていた集団の先頭へと、その男を盾のように突き出した。


「テメェらは殺さない代わりに、俺の肉壁として死ぬと言ったはずだ」


ヒュンッ!

アーチャーが放った矢が、ゴアが盾にした男の身体に深々と突き刺さる。


「ガハッ……! 助け……」

「進め。罠があるなら、踏み抜いて道を作れ。矢が飛んでくるなら、身を挺して防げ。立ち止まる奴は、俺が殺す」


「ひ、ひぃぃぃッ!!」


ゴアの背後から放たれる圧倒的な殺気と、実際に味方を肉壁にする異常性。

冒険者たちは、前方の魔物たちよりも、後ろにいる死神の恐怖に完全に支配された。


(正気か……!? 罠の解除も、矢の防御も、全部他の冒険者を使ってやり過ごす気か!?)


[C]長い石造りの回廊の狭さが、ここでは最悪の方向に作用していた。

逃げ道がないのは冒険者だけではない。俺の放つ攻撃のすべてが、ゴアに届く前に恐怖で狂わされた肉壁たちに吸い込まれてしまうのだ。


「行けぇぇッ! 死にたくなきゃ進めぇッ!ゴアに殺されるぞぉッ!!」


半狂乱になった冒険者たちが罠を自らの身体で潰し、矢をその身に受けながら血だるまになって防衛ラインへと突撃してくる。

ゴアは、その血路の安全な後方を悠然と歩いてきていた。


(まずい……! このままじゃ完全にジリ貧だ!)


[C] 長い石造りの回廊の狭さは、俺たちにとって最高のキルゾーンだったはずだ。

だが、ゴアという常軌を逸した怪物が味方を肉壁として強要するという最悪の戦術を取ったことで、状況は一変した。

コボルトの罠も、アーチャーの矢の雨も、すべて前に押し出された冒険者たちの命で相殺されてしまう。


(これ以上は無駄だ。ここは捨てるしかない……!)


俺は戦術マップから視線を上げ、防衛部隊に撤退命令を下した。


(総員、攻撃を中止して3階へ後退しろ! ここで死力を尽くす必要はない、まだまだフロアはあるんだ!)


「カッ……!!」


俺の意図を汲み取り、[R]スケルトン・バウォークが巨体を前に出し、巨大な盾で通路を完全に塞ぐ。

彼が頼もしいしんがりを務め、迫りくる肉壁たちと後ろにいる死神のプレッシャーを一身に受け止めている間に、[N]レイスやアーチャーたちが素早く階段へと撤退していく。


バウォークもまた、盾を構えたままジリジリと後退を始めた。


その時だった。


(……ん? なんだ、あれは?)


俺は戦術マップの片隅──いや、バウォークの視界越しに映る異常な光景に気づいた。


回廊の床には先ほどまでの防衛戦で命を落とした冒険者たちの死体が無数に転がっている。

矢でハリネズミにされた者、落とし穴の底で串刺しになった者、毒で顔を紫にして倒れた者……。

その彼らの死体が淡い光に包まれていたのだ。


シュゥゥゥ……ッ。


まるで雪が溶けるように。

死体は次々と金色の光の粒子へと分解され、天井へ──はるか上層にいる俺の元へと吸い込まれていくではないか!


(DPが……凄い勢いで増えていく!?)


脳裏に表示されたステータス画面を見て、俺は思わず息を呑んだ。




♢   ♢   ♢


【現在のDP】 23,200

   ↓

【現在のDP】 25,800

   ↓

【現在のDP】 29,500

   ↓

【現在のDP】 33,200 ……上昇中!


♢   ♢   ♢




(一気に1万近くも……!? さらに増えてる!)


防衛フェーズが発動してるダンジョン内だと侵入者が死亡した瞬間に、死体が自動で回収されて直接DPへと変換されているのか……?

これが、ダンジョン内で敵を倒した時の恩恵か……!


(ありがたい……! これだけDPがあれば、緊急時にリナの回復魔法でいくらでもリソースを吐き出せる!)


恐怖と焦りで冷え切っていた俺の思考に、ダンジョンマスターとしての熱い興奮が混ざり始める。


(だが、喜ぶのは早い。これからが本番だ……!)


2階での迎撃は終わった。

だが、次は3階[C] 湿った土の洞窟では、足元の悪い泥濘と新たな魔物たちが奴らを待ち受けている。


(上まで登ってくるなら登ってこい。3階以降で、もっと徹底的にすり潰してやる……!)



♢   ♢   ♢


[現在の拠点状況]

拠点名: (未設定・円形の塔)

階層: 16階建て + 屋上

DP: 33,200

訪問者: 1名(リナ:[ダンジョン・メイデン]にクラスチェンジ完了)

召喚中(主な幹部):

総司令官: [R] ヒーロー・ゴブリン・ジェネラル (Lv.20)

狩猟部隊長: [R] ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフ (Lv.15)

突撃隊長: [R] オーク・デストロイヤー (Lv.15)

防衛部隊長: [R] スケルトン・バウォーク (Lv.15)

偵察・暗殺: [R] ブラッド・ストーカー (Lv.15) ※ヴァンパイアバットから進化

遊撃・伝令: [R] ベル (Lv.1)

(他、多数の[N][UC][C]ランク魔物)


侵入者: 大規模侵攻により「ダンジョン防衛フェーズ」へ移行。B級ゴア・シェルドーをはじめとする多数の冒険者が1階に侵入中。

その他: 主力部隊は森で暴走したデストロイヤーの対処に当たっており塔には不在。

1階を死守していたリナと防衛部隊は門を放棄し、2階へと撤退を完了した状態。


♢   ♢   ♢

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