145話 アーサニクの攻防
「教皇様、町に迫っていた不死の魔物は
――教皇様の御業によって全て天に召されました」
信徒の一人が教皇の技に畏怖とも恐怖とも取れる反応で結果を伝えた。
それほどまでに、教皇の力は圧倒的だった。
「それより、後続は?正体不明の死者はこれで終わり?」
「はっはい、町に進行していた死者は全てが動かなくなりました。今は下級信徒が順次浄化の炎で灰も残さず滅却しています……ただ、その……」
教皇に付き従っていた、信徒が言い淀んだ。
「滅却した死体から毒の煙が溢れて、……アーサニクの町全体が汚染しました、信徒も何人か毒にかかって……」
「…汚染ですか、根性が足りないのです、そんな信徒は放っておきましょう」
「それから些末な事ですが、厨房の食材も汚染されたというので全て廃棄としました」
「全て?」
その言葉を聞いた瞬間、教皇は膝から崩れ落ちた。
何故なら信徒からもたらされたその言葉は、教皇にとって絶望に等しい言葉だった。
「教皇様にとっては敵でも生前は人、それを手にかけたんだ。
――その悲しみは我々には計り知れないほど深いのかもしれない」
信徒のみならず、アーサニクに住む人たちは教皇の姿をみてその慈悲深い姿に心を打たれた。
「氷蜜が…、じっくり野菜スープが…、悪魔の舌(ババァネテロ風味)が…」
「…教皇さま、おいたわしい。あの方は、まるで苦しみを自分の身に引き受けておられるようだ」
周囲の信徒や町の人たちは、息を呑んで静かにひざまずき、彼女の姿に祈りを合わせて目を閉じる。
誰もが教皇に敬意と畏れを込めて見守っていた。
「私のごはんが…」




