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その五
家に帰ると、ぼくは制服のまま自室の寝具に寝転がった。
すこし熱があるのか、心臓が不規則にとくとくとリズムを刻んでいた。ネクタイを外し枕元に放りなげる。
「部長が停学になるかもしれない」
そして河野の台詞をあらためて口にした。
九条が退学になるかもしれない。
ことの発端は、学校に届いた一枚の手紙からだった。送り主は匿名で手紙の中身は三日前の二一時に、九条が大通りのラブホテルへ中年とはいっていくのを見かけたという話だった。
「馬鹿らしい」
と口にする。
「くだらねえ」
と再度口にする。
してみたところで、状況は何一つ変わらない。
足を持ち上げ、腹筋をつかって布団から起き上がる。鞄に手を突っ込んで、ノートパソコンを取りだそうとしたところで、本日どっかの誰かさんに叩き壊されたことに思い至り、舌打ちをかます。
数学のノートをちぎって、シャープペンシルを握ったところで言葉なんて浮かんでこなかった。文章を書いてみても、どうにも自分の身体にしっくりこない。ぼくはシナリオを書くことを諦めて再び寝具に横になった。
「前途多難なんてレベルじゃねえぞ」
わかってる。
わかってる。
わかってるさ。
呟いたところで状況が変わらないことくらい、ぼくにだってな。




