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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第71話 五人の大切な女

突如現れた俺が若い頃に戦い方を教えてくれた師匠。

彼が口にした怒熊の討伐を手伝って欲しいと言う話を承知した俺は皆をどうするか考えていた。

敵は油断のならない奴だろうし、大切な俺の家族を巻き込みたくはないからだ。


「そうだな…… 戦うのは俺だけでいい。 師匠はコイツらを守ってやってくれるか? 俺の大切な家族なんだ」


負けるつもりはねぇが、もしもって事もある。

それに師匠になら任せておけば心配はいらねぇからな。


「アンタって本当に人の気持ちが分からないのね。 私は一緒に戦うわよ。 私がアナタの背中を守るって約束した筈でしょ」


「私も戦うであります! 何のために私がいると思っているのでしょうか?」


『私もお忘れなく、ご主人様に危害を加えるような悪い熊なら呪い殺してやりますわ』


そう言いながらアンナとマリン、そしてクレアが前に進み出る。

出来れば後ろで見ていて欲しかったが、どうやらそうもいかないらしい。

アンナはパタを、マリンは槍を構えていた。

クレアは…… 俺まで呪いそうな怖い顔をしてやがる…… 頼むから熊だけにしてくれよ。

まぁ、簡単にやられる奴らじゃない事は俺が良く知ってるしな。


「それなら頼むぜ、愛しの婚約者達!」


俺の言葉に嬉しそうに微笑む三人。

師匠の話ではこの先に怒熊の棲家があるとかで、その洞穴から奴を煙で炙り出すつもりだったそうだ。

手にしていた酒瓶は油が入っているらしく、流石に酒を飲んで戦うつもりはなかったみてぇだな。

師匠ならあり得る話だと思ったんだが……


「じゃあ、行くぜ。 洞穴の入口に油を撒いて火をつけたら奴が出て来る筈だ。 一気に仕留めるぞ!」


「分かったわ!」

「了解であります!」

『承知致しましたわ』


俺か洞窟に油の入った酒瓶を投げ入れると割れた音と共に油が流れ出す。

そしてその油へとめがけて松明を放り投げた。

煙が洞窟内に充満して行くのが見て分かる。


「グガァーッ!」


強烈な咆哮が洞窟の中から聞こえて来た。

すぐに堪らなくなって出て来る筈だ。

だが一向に怒熊が洞窟の中から出て来る気配は無い。


「洞窟の入口で勢い良く燃えてるから熊も出て来れないんじゃないかしら?」

「多分、あれだけ油を撒いたから毛皮に染み込めば火だるまになると思います!」


おいおい、まさか…… これで終わりか?

戦わずして勝つとか言わねぇよな。


『ちょっと中を見て来ますわ。 ご主人様は少しお待ち下さいませ』


クレアが洞窟の中へと漂いながら入って行く。

そして戻って来たクレアは笑みを浮かべていた。


『どうやら熊は煙に巻かれて窒息したようですの。 ご主人様の作戦勝ちですわ!』


いや、作戦なんか立てた覚えはねぇよ。

何とも言えねぇ呆気ない勝利だな。


「気合いを入れた所で悪いんだが、どうやら怒熊は煙に巻かれて窒息したみてぇだ。 マリン、みんなを呼んで来て貰えるか?」


「了解であります!」


俺に敬礼をして走って行くマリンの後ろ姿を見送りながら、コイツとはどんな夫婦になるんだと考え混んじまう。

いちいち敬礼されてもな…… 夜の夫婦生活とかもああなるのか?

閨に誘っても敬礼して了解とか言いそうだぜ。


「ねぇ、本当に大丈夫なの? 穴熊とかって煙に巻かれて気絶するとか聞いた事はあるけど……」


アンナの言葉に自分の迂闊さを呪わずにはいられなかった。


「おい、やっぱり来るな! まだ分からねぇ!」


離れた場所にいるライリ達に大声で叫ぶ。

アンナの言う事が当たってれば…… まだ終わってねぇ!


「フガァ、グウォーッ!」


洞窟内から再び聞こえる怒熊の咆哮。

炎の勢いが弱まった洞窟の入口を飛び越えるように巨体が飛び出して来る。


「何で俺って奴は馬鹿なんだ!」


背にした大剣を掴んで上段の構えを取る。

怒熊も生来怒り易い性格をしていると聞くが、自分を苦しめた俺達を見てその怒りも頂点に達しているようだ。


「ちょっと…… 想像していたよりも大きいわよ。 アナタの倍はあるんじゃないかしら?」


パタを自分の胸の前辺りで構えているアンナも驚きを隠せないようだ。

荒々しい息を吐きながらコッチを威嚇している怒熊を前にして足が震えているも無理はねぇか。

あのデカさはアンナには無理だ。

パタじゃ懐に入り混んでも分厚い筋肉の鎧を貫くのは難しいだろ。


『申し訳ございません。 てっきり死んだものとばかり……』


クレアが必死に頭を下げているのを見た俺は大丈夫だとウインクして応えておく。


「アンナ! コイツは俺が相手をするから下がって見てろ。 お前の惚れた男の勇姿を特等席で見れるんだ感謝しろよ」


俺が手にしている大剣の名前はデスブリンガーだからな…… 熊公め、死をくれてやるぜ。


「行くぜ! おりゃああああ!」


怒熊に向かって駆け出した俺は奴が立ち上がる前に右肩から強烈な斬撃をお見舞いする。


「グアァァ!」


そんな俺に向かって突進して来た怒熊とのぶつかり合いになり威力は半減して奴の肩口に食い込むだけで斬り捨てるまでには及ばなかった。

奴の突進で俺は手にした大剣ごと後退させられる。


「浅かったか? だが右腕は使えねぇだろ! ざまぁみやがれ!」


俺は力任せに大剣を引き抜いて次の攻撃に備えるも、今度は立ち上がった怒熊の強烈な左腕の振り下ろしを受ける事になる。


「くっ、凄え力だぜ…… 肩から腕が落ちそうだ」


大剣で怒熊が放つ左腕の攻撃を受け止めたが、それも強烈な重量を持つ必殺の一撃には変わりない。

辛うじて受け止めたが足にも衝撃が伝わるのが分かる。

まともに受けちゃならない一撃だったな。


「畜生…… 足に来てやがる」


もうさっきみたいな斬撃は放てねぇぞ…… 奴の攻撃よりも早く駆け寄れる自信がねぇ。

どうする? 俺の得意の斬撃は使えねぇとしたら…… どんな方法があるんだよ。

まてよ…… 俺に対してカイルの奴が取る手段があるじゃねぇか!

後の先って奴だな。

早い話がカウンターだ。

よぉし、やってやろうじゃねぇか!


「さぁ、熊公…… かかって来やがれ!」


足で地面を蹴って土を怒熊の奴に撒き散らしてやると頭に来たらしく俺に向かって凄い勢いで突進して来やがった。

右肩の傷の痛みも忘れてやがるらしい。

そんな怒熊を俺は大剣を目の前で真っ直ぐに突き出すように構えて待ち構える。


「死ねやぁああああ!」


目前まで迫った怒熊に対してホンの少しだけ前へと踏み込み、奴の攻撃を避ける。

一瞬の差で怒熊の振り下ろした左腕を避けた俺は奴の懐へと入り込んでいた。

そして奴の喉元に突き刺さる大剣。


「グボァッ!」


奴の口から吐き出された血反吐が俺の頭上から撒き散らされる。


「これで終いだ!」


手にした大剣に力を込めながら怒熊に体当たりをかます。

巨体に押し潰される気はねぇからな。

怒熊の首が千切れて遥か後ろに飛んで行ったように見える。

そして首を失った怒熊はゆっくりと後ろ向きに倒れて行った。


「俺の相手をするなら、せめて倍の大きさになってから現れるんだったな!」


俺は見栄を張って言い放つ。

本当に倍だったら流石に死ぬかも知れん。


「ご主人様!」


血塗れの俺を見たライリが血相を変えて抱きついて来る。


「おいおい、俺は怒熊の血反吐まみれなんだぞ」


「ご主人様! 生きてて良かった……」


そんな事は一切構わずに俺に抱きついて離さないライリを優しく抱き締めてやる。


「前にライリに言っただろ。 お前にはしてやりたい事がいっぱいあるんだって。 だから俺は簡単にくたばれねぇんだよ……」


「はい…… 私もその日を待っています」


ライリは涙を流しながら抱きついた腕に力を込めていた。


「もう…… 美味しい所をライリちゃんにとられちゃったわ」


アンナが苦笑いしながら俺を見ていたがホッとした様子で、この場はライリに譲るつもりらしい。


「ライリさんだけ狡いであります! 私も心配したんですから!」


マリンが空いている背後から俺に抱きついて来る。

コイツは待てる性格じゃねぇからな。


「私を結婚前に未亡人にするつもり?」


いつの間にか側に来ていたヴィッチの奴が俺の腕を掴んで自分の胸へと引き寄せて抱き締める。

結婚してねぇなら未亡人じゃねぇだろうよ。


『こんな時にご主人様を抱き締められない自分を呪いたくなりますわ』


俺達を見下ろしながら呟いたクレアに空いている右腕を伸ばすと嬉しそうにスーッと近寄って来る。

済まねぇなと思いながら触れられないと分かっていながら頬を撫ぜてやる。

クレアの両手が掴めない俺の右手を包み込んでいた。


「こりゃあ、たまげたな…… お前には嫁さんが四人もいるのか?」


師匠の言葉に俺は黙っていられずに答えてやる。


「何言ってやがる。 四人じゃなくて五人だ! 俺にはもう一人クレアって言う大切な女がいるからな」







PVやブックマークに一喜一憂する日々に悩んで、疲れてこのまま書くのを辞めてしまおうかと思いましたが、大切な時間を割いてまで私の小説読んでくれている方が少なからずいるのだからと完結はさせなければと思いました。 良かったらもう少しお付き合いください。

このサイトで書いてる人は皆そうなのでしょうか……

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