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めいど・いん・はうす  作者: 池田 真奈
第一章 大剣使いの冒険者と小さな侍女ライリ
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第41話 寿退社じゃねぇだろ?

数週間ぶりに王都を訪れた俺達は朱雀館の様子が気になっていた事から最初に足を運んでみた訳だが、以前のような寂れた雰囲気を全く感じさせない程の賑わいを見せている。

客が口々にランチが最高だったと話しているのを聞くと、どうやらライリの作戦勝ちのようだ。

従業員の姿も見受けられる事から戻って来てくれたのか、新規で雇ったかのどちらかだろう。

入り口のエントランスホールに入ると俺達に気付いた旅館の主人がすっ飛んで迎えに来やがったが、その熱烈的な歓迎の相手は俺ではなくライリだ。


「これはこれはお久しぶりです。 ライリ様のお陰でランチが大当たりでして、悪い噂も殆ど払拭され宿泊客の数も大幅に伸びています。 ランチの評判からディナーを楽しみに宿泊して頂けるようにもなりました…… ヒーッヒッヒッヒ」


旅館が持ち直して来ても気味の悪い笑い方は変わらねぇんだな。


「良かったですね、フィリックさん。 実は私達は公爵領へと向かう途中に王都へと立ち寄った次第で、今夜は王都で一泊しようと思っているのですが、お部屋を用意して頂けるでしょうか?」


コイツの名前はフィリックって言うのか。

そう言えば胸に名札が付いてたか、興味もねぇし気にしてもいなかったぜ。


「はあ、それならば前回同様にスイートルームをご用意いたしましょう。 宿泊料金はお約束通りに据え置きとさせて頂きます、はい」


それと追加で一部屋頼むとするか……


「これでご主人様が喜んでいたお風呂からの夜景をまた楽しめますよ。 朱雀館を訪れた甲斐がありました。 本当に良かったですね」


ライリのお陰で随分と優遇されたもんだぜ。

俺がきっと喜ぶだろうと嬉しそうな顔してやがるな。

更に俺もスイートルームに泊まる事を信じて疑わない様子だな、これじゃ部屋を別に取るとか言いにくいぞ…… 参ったなぁ……


「ご主人様…… どうかなさいましたか?」


どうやら俺の迷いが顔に出てたか?

怪訝そうに俺を見上げるライリ。


「いや、何でもねぇよ。 ありがとなライリ」


仕方がねぇな、別の部屋って言うのは無理か。

コイツを悲しませる事になりそうだしな。


「それが私の務めですから、お役に立てて光栄です」


嬉しそうな顔をしやがって…… やっぱりライリには笑顔が良く似合うぜ。


「んんっ! 仲睦まじい所を邪魔して悪いんだけど、私は王都の冒険者ギルドに少し顔を出して来るから。 前回訪れた際にかなりお世話になったでしょ、それで持って来たお土産を渡して来るだけだから夕方には戻れると思うの」


わざとらしい咳払いしやがって……

アンナの奴め、どう見たってお前がライリに嫉妬してるのバレバレだぞ。


「そうか、気をつけてな!」


「えっ、ええ……」


うっ、何だよ…… その不満そうな顔は、本当は俺に一緒に来て欲しかったのにって事か?

あっさりと送り出そうとした俺の対応が予想外だったようだ。


「ご主人様、アンナ様に付き添ってあげてください。 私は前回訪れた際、次に来た時に是非とフィリックさんにお料理を教わる約束をしていたので、折角の機会ですし夕食の準備をお手伝いをしながら教わっていますから」


『私も霊力の消費が著しいので、久しぶりにスイートルームの寝室で休ませて頂きますわ』


それなら仕方がねぇか、あの表情を見ちまうと何だかアンナも可哀想だしな。


「それじゃ、そうしててくれ。 俺はアンナと少し出掛けて来るとするぜ。 じゃあ、行くぞアンナ!」


アンナも思い掛けないライリの助け船に少し驚いてやがるな。

それにしても一緒に来て欲しけりゃ、最初からそう言えば良いものを…… 女って奴はこれだから困るんだよ。

自分がどれだけ愛されてるかとか知りたくて、すぐ試そうとしたりしやがるからな。

俺がそう言うのには鈍い事は良く知ってる筈だろうによ。


「うん、ありがとう…… 嬉しい」


ヤケに素直じゃねぇかよ。

ったく…… 調子が狂うぜ。

嬉しそうなアンナと共に朱雀館を出た俺は冒険者ギルド本部へと向かう事になった。

少し歩いていて気付けば、何やらアンナの様子がおかしい。

一体どうしやがったんだ?


「ねぇ、腕を組んでもいいかしら?」


そう言う事か…… 最近は良く俺に甘えるようになって来たな。


「好きにしろよ。 まぁ、俺だって悪い気はしないからな」


街中を歩いていてもアンナの姿を男達が目で追ってるのに嫌でも気付く。

そんな奴と腕を組んで歩いてれば羨望の眼差しで見られる優越感も楽しめそうだからな。


「ふふっ、悪い気はしないって思ってくれるのね。 それって結構嬉しいわ」


嬉しそうなアンナの右腕が俺の左腕へと絡み付いかと思うと寄り添うように頭も傾けて来る。

側から見れば恋人同士なんだろうが、俺からしてみれば複雑な思いがするぜ。


「俺は男女の仲って言うのには相当鈍いらしいからな。 あんまり期待しないでくれ」


俺がもっと器用ならこんなに悩まなくて済んだろうによ。

その場合、どちらかを確実に泣かせる事になるんだろうが…… 今の俺にはライリもアンナも大事なんだよな。


「そんなに心配しなくていいわ。 一時期の私達の関係と比べたら…… 今の私は本当に幸せなのよ」


死んだ彼奴らはアンナの幸せを願ってるんだろうが、泣かせちまう事になるかも知れねぇな。





冒険者ギルド本部に俺達が辿り着くとアンナに気付いた女性職員がわらわらと集まって来やがった。

アンナの奴、結構人気があるんだな。

実は冒険者ギルド職員を退職したって報告したら寿退社ですかと聞かれて真っ赤になって照れてやがる。

おいおい、そこはちゃんと否定しやがれ!




俺達は知らなかった。

その頃、俺達の居ない朱雀館では悪夢のような出来事が起こっていたなんて事を……



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