なにやら逃げ道が狭まっている気がする
「み~~つけた!」
ヒィッ!と思わず私の口から声が出る。
「エミリーったら、こんなところにいたんだね。
そこでうずくまってどうしたの?」
木の上で膝を抱えてじっとまるまっていた私は、レイモンドに見上げられながら固まる。
「や...ちょっと、色々ありまして...」
さっきまであつ~いおねぇ様方から逃走してたから疲れ切ってる上に、絶対に見つからないと思っていた場所だった。
だからすっかり気を抜いていて言い訳が思いつかない。
「この前ね、キミの友達のシルビア嬢だっけ?
怒り心頭って感じで『あなたたちの取り巻きにエミリーが迷惑をしてるのですから、身辺をしっかりなさい!』と言ってたけど、それが理由かな?
ねぇエミリー、ボクと付き合わない?」
キラキラとレイモンドが微笑みを向けてくる。
その笑顔はいくらだ?
これ以上近づいて欲しくないやつから何の脈絡もない、これっぽちの熱もない愛の告白...。
いや、愛すらないだろ!?
「はぁ?」
思わず素っ頓狂な声を上げる。
「うふふ、ほんとはね、今は近づかないほうがいいかもしんないけど、楽しくて面白いんだ。
すごくワクワクしてるんだよ」
この気持ちわかる?といった感じにレイモンドがニッコリ笑いかけてくる。
「こここここ交際の件は、不審なこと考えてるご様子なんでお断りします。
どうぞご自分の好きな方に告白なさってください」
「あらら、残念!
キミもキミの友達もボクの笑顔効かないんだね。
損はさせないのに~~」
ちっとも残念な様子がないレイモンド。
逆に笑顔が増しているくらいだ。
お前のキラキラはお金の音6割増なんだよ~~!
口元に手を当てて、レイモンドがクスクス笑う。
(いやいや、怖い!まじで怖いからっ!)
思わず視線を反らせてしまう。
関わりたくねぇ~~~!!
「ねぇ、質問変えていい?
病後なのに、木なんかどうして登れるの?
エミリオみたいに、なんでそんなにおてんばなの?
双子ってそんなに似るもんかなぁ」
1年の付け焼刃なんだもん!
しょうがねぇじゃん!!
しどろもどろになった私に、クスクスと笑いながらレイモンドは笑いかける。
「あぁエミリー、隠してるかもしれないけどキミの考えてることって、ボクらには結構丸わかりだと思うよ。
そろそろ午後の授業時間だ。
降りるときも気をつけて、そしてボクを楽しませてね」
内心慌てる私に「じゃまたね」と声をかけてレイモンドが立ち去る。
レイモンドに見つかるってことはロベルトやレオン、ジーンにも簡単に見つかるだろう。
こ、心が折れそうだ。
木を降りてトボトボと教室へ歩いていると、ジーンがいた。
「あぁ、エミリー嬢か」
ほらやっぱり!!と自分自身に責め立てる。
スゥ~っと血の気が下がるのがわかった。
私って運がないっっ!
イヤイヤ、ロベルトよりマシ!ロベルトよりマシ!
他の悪魔より数倍マシッッ!!
「どうも、...こんにちは...」
憔悴しきった感じに見えるたのか、少し哀れそうにジーンが声をかけてくる。
「その、な...色々と大変らしいな。
いちおう、親友だった友の妹として忠告しとこう。
あまり逃げ隠れしてると、より追われるぞ?
今は手を出さないだろうが、ロベルトが楽しそうに何か企んだ目をしている。
逃げ切れそうならオレは構わないが...まぁ、頑張ってくれ」
なんだよそれ...仮にも親友だったやつをみんなして追い詰めて、何が楽しいんだよ。
「なんなんですかね...」
ジーンがかわいそうな子を見る目で私を見つめてくる。
「まぁなんだ、時間をとらせたな」
チクショウ、他人事だと思って...。
「じゃぁ」と歩き去ろうとするジーンの三つ編みが、しっぽみたいに揺れる。
八つ当たりに引っ張りたいなぁ...と思ったら、すでに手が出ててた。
だって、しょうがないじゃん!
5歳の頃から8年、事あるごとに引っ張り続けたシッポだもん。
グイッ!とした途端、脳天直撃のゲンコツを食らって「ぐぴゃっ!」という世にも哀れな声が飛び出た。
「すすすまん、エミリオかと条件反射で...って、お前...今の、エミリオなんだろ?」
当然私はダッシュで逃げた。
わたしがバカなのか?!
すべてが裏目に出ている気がする。
はいのはいのは~い




