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なにやら逃げ道が狭まっている気がする2

「まぁ、脳天を押さえていかがなさいましたのぉ?」

午後の始業のチャイムがなり、教室に戻るとマリアーナが声をかけてくる。


「ちょっと硬いものが落ちてきまして...大丈夫。

 いつものことだったので問題なし...」

「あらまぁ、お大事になさってくださいねぇ」

「ありがとう、ちょびっと背が縮んだだけよ...」

トホホと頭をさすりながら席に着くと、先生が入ってくる。


今日だって明日だってあいつらからも逃げ切るだけ。

...私の道は彼らと共にはもうないのだ。

同じ悩みを分かち合うことはもうないんだ。





「ロベルト、エミリーのことエミリオだと思ってないか?」

ジーンは教室に着くなり、ロベルトに声をかけた。


「ん?どした?」

「いや、その、な...」

ジーンは右手を握ったり開いたりする。

「変な奴だな、まぁ正直に言えばそうだよ

 あいつはエミリオだ」

ロベルトは伸びをしながら、何でもないかのように答える。


「やっぱりな...。

 今エミリーと会ったんだが、昔エミリオが『シッポと呼んで笑ってたコレを引っ張られたんだ」

ジーンは編んだ髪を持ち上げる。

「そのときの引っ張り方が、エミリオと一緒でな、...つい条件反射でゲンコツを食らわしてしまった。

 そしたら痛がり方も一緒で......。

 エミリーはエミリオだと自分の中で確定になって、お前に確認しに来た。

 どうせ気づいてんだろ?って思ってな...」

「ははは!なにそれ!」

ロベルトが「ジーン、ゲンコツってご令嬢サマ相手にすることじゃないだろ!」と腹を抱えて笑う。


「ふむ、すごい勢いで逃げられてしまった」

ロベルトは穏やかにポツリと呟いた。

「ばかだな、エミリオ...。

 鈍いジーンにもバレるなんて、アイツ本当にツメが極甘だよ」

「本人を目の前にして、鈍いとはなんだ」

ムッとするジーンだったが顔は笑っているし、ロベルト自身も一向に気にしてない。


「あいつ...生きてたんだな」

「...そうだな」

「どういうことだか聞かないとな」

「そうだな」

「俺の涙の代償高いからなぁ、どうやってイジメてやろうかな」

ハァとため息をつきながら、ジーンは呆れた顔をする。

「あんまりいじめるな、泣かれたら女は面倒だ」

「泣かないでほしいな、あいつには...」

明後日の方を見ているロベルトの黄金色の目がキラキラ輝きだす。


ジーンも興奮していた。

8年も共に過ごした大事な仲間が、死をも乗り越えてそっと戻ってきたのだ。

誰が関わらないでいられようか?

オレ達4人がまた5人になれるんだと心を躍らせた。



「この前は外に出るかと思いきや、2階に上がって、非常階段から駆け下りて逃走してたよ。

 その前がベランダをつたって隣の教室に入り逃走してたね。

 とにかく足が早すぎて追いつけないよ」

レイモンドが帰り道に道を指で示しながら説明する。


「それはそれは...クッ、日々逃走経路が拡充されてるね」

レオンが吹き出して笑う。

「何が、病弱なご令嬢だ...」

「全くだな、病弱以前に『令嬢』ではないな」

ジーンの呆れたツッコミに、ロベルトが相槌を打つ。


あれから周りをうろつく元恋人やらファンやらなにやらを少しずつ殲滅してきた。

レオンとロベルトは完全に鬼斬りしたが、レイモンドは「そんなことをするおねぇ様方に、ボクはもうほほ笑みかけれません!!」と涙をポロリンチョして、完全に黙らせた。


ジーンのファンは特殊すぎて案外危険度は少なかった...。


ジーンとレイモンドとからんでる絵や、ロベルトが鬼畜にジーンを襲ってる絵を見させられたときは全員でブルっちゃったけど...。


いままで「エミリオ様~カワイイ~」なんて黄色い声出してたくせに、本人だと知らぬとはいえなんだよあのイジメ!

おかげで心底「女の浅ましい戦いと勘違いってやーね!」という見解に4人は至ってしまった。


もはや、気づいていないものはこの中にいない。

陽気で健やかなエミリオがエミリーとしてここにいる。

それは4人にとって、素晴らしい事実だった。




ツメが毎度甘くてすんません。


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