こんにゃくも婚約もシメる!!5
「やぁ、みなさん。
本日は娘シルビアのために、ようこそおいでくださいました!」
招待客をあらかた迎え入れたローゼン伯爵が、たからかに声を張り上げる。
立食パーティーの形式をとっていて、参加者はシャンパンを手に伯爵の話に聞き入る。
まぁ未成年な私たちはノンアルコールドリンクだけど。
「今日の祝い事に併せて、もう一つ皆さんに発表したいことがあります!!」
自信満々に伯爵が胸を張る。
(ん?そんなこと聞いてないぞ?)と思いシルビアを見ると、隠してはいるがシルビアからも困惑が感じ取れる。
「どうなさったのでしょぅ?」
「さぁ、シルビアも動揺してるね」
「そうですわねぇ」と不安そうにシルビアを見つめるマリアーナ。
「本日お越しくださいました、レオン・シュバルツ公爵子息様との婚約をここに発表します!」
どよどよというざわめきがあたりを包む。
いきなりのことに頭が真っ白になった。
優雅にレオンがシルビアの脇に立つ。
固まったまま動かなくなったシルビアに慈愛の目を送るレオンを見れば、どうやら本当のことらしいと感じとる。
周囲から「.....なんと」とか「羨ましい!」とかの羨望の声が聞こえた。
「ど、どういうこと?
もう諸問題はなくなったのか?」
「エミリーしっかり、ふらついてますわよぉ」
マリアーナがそっと背中を支えてくれる。
「マリアーナ、一体どうなってるかわかる?」
「さぁでもシルビア自身も、ちっともわからないみたいですわよぉ?」
動揺を隠し切れなくなったシルビアがレオンを見上げた。
「レレレレオン様!
これは一体どういうことですの?!」
ようやく騒ぎが収束した頃、改めて襲う緊張にシルビアは震える指先を反対の手で強く握り締める。
息苦しく感じるけれど、ここでふらつくわけにもいかない。
「少し失礼」とレオンがシルビアをバルコニーへと連れ出す。
「驚かせたようだね!」
「驚きましたし、いきなりそんな.....!」
朗らかにいうレオンに、シルビアは少しなじるような声色になってしまったが(こんなのしょうがないわ!)と思い、歯を食いしばった。
「だって、よく考えてみなさい。
もしかしてこのパーティーで、君と相思相愛になる人が現れかもしれないだろう?」
優しく微笑み言い聞かせるようなレオンに、シルビアは思わず見とれた。
だけどそんなバカなことを言うレオンに腹が立つ。
好きなのは貴方だけですのに.....。
「そんなお方、いるはずっ!」
「だからわたしは、そうなる前に早々にキミの父上にキミと婚約したい旨を伝えたのだ。
お父上殿は、なかなか見れないような満面の笑みで、いい返事だったよ!」
クスクス笑いながらレオンはシルビアの腰をそっと引き寄せた。
「だって.....でも!」
「しぃ、、ちょっとわたしの話を聞いて。
いいかい?わたしは君の意思も聞かずに、勝手に婚約を進めた悪い男だ。
だからこれからの長い時間をかけて、君の心を手に入れたいと思うのだよ。
それについてシルビア、キミはどう思うかい?」
唇に指を添えて、レオンはシルビアの目を覗き込んだ。
シルビアはかぁっと頬が熱くなるのを感じる。
「そ、その.....め、名案だと、思いますわ」
「そうか、ならわたしのプロポーズを受け取ってくれるかい?」
レオンはそっとシルビアの白い額にキスを落とす。
「わたしには色々としがらみやら面倒なことがたくさんある。
それを共に乗り越えてもらいたいのだ。
シルビア、わたしの隣で力強く支えてくれないか?」
「わたくしはエミリーが『厳しい!』と嘆くほど、コワくて弱くはないのですわよ?」
ちょっとした反骨精神で、シルビアは唇を尖らして怒った顔をした。
「共に戦えるなんて、素晴らしいことだよ」とレオンはおどける。
小さくため息をつくと、少し困ったような顔でシルビアはレオンを見上げ「永久の愛情をレオン様に.....」と囁き唇を合わせ、微笑みあった。




