ウキウキしすぎただけ!
「お前どこから来たんだ?」
12歳くらいの少年の手を繋いでるエミリーは、その繋がる手の先にいる少年をちらりと睨みつける。
「私は『お前』じゃないよ、エミリーっていうの!」
「お前みたいな男女に、エミリーだなんて女らしい名前似合わねぇ!」
「悪かったわねっ、クソガキ!」
「クソガキじゃない!
お前こそオレをきちんと『クルト』って呼べ」
「はいはい、クルト様~、ありがとうございますぅ~」
今私は夏休みに入り、カナン地方にあるロベルトの別荘付近にいる。
なぜ付近って......、
それは立派な迷子だからさ!!
はっはっは......ハァ。
出発したのは3日前。
夏休みが始まって4日後。
ちょっとした小旅行みたいで楽しかった。
途中1泊宿に泊まって、マリアーナとシルビアと3人でおしゃべりをしながら眠った。
翌日の夕方にはロベルトの別荘に着いた。
「相変わらずここは豪華だなぁ!」
馬を走らせていた私がニコニコと振り返ると、並走したロベルトが「そうかな?」と微笑む。
妙に嬉しそうなロベルトに「どした?」と声をかけると「ん、まぁそのな......」と言葉を濁された後「ここは『エミリオ』との思い出が多すぎて、もう2度と来ないと思ってたから、お前と来れて嬉しいよ」と言われた。
ズンとくる。
そこまで傷つけたと思うと泣きたくなる。
「その、ゴメン......」
「そんな顔させたくないから言いたくなかったんだ」
困ったように笑い小突くロベルトが「行こう」と促す。
ロベルトは腹黒で暗黒で冷血で頭良くてムカつくけどいいやつだ。
口が裂けても言わないけど!!
荷物を下ろしてもらって、侍従や侍女の人に割り当てられた客間に片付けてもらう。
気ままな家風であり、学園でもほとんど自活をしているせいか、久しぶりの手伝いにちょっとドキドキする。
明日から遊ぶ気満々の私の服はほとんどが町娘が着るようなものだ。
「エミリーは明日何いたしますのぉ?」
「うんと、ここの近くの海まで馬を走らせようかと思うんだ。
海ってしょっぱいんだよ?
知ってる?」
「一度だけ」と微笑むマリアーナに「一緒に行こうよ!」と誘う。
「ええ、あとでシルビアもお誘いしましょうねぇ」
「オッケイ!じゃぁ、弁当もって行こう!
ジーン達にも伝えてくるよ!」
私は部屋から飛び出した。
そのウキウキ気分のまま夕飯を食べて、浮かれ気分も混じったままベッドに入って寝た。
そんな興奮状態じゃ、当然まだ霧の出ているような早朝に目が覚めるわけで......ルンルンで早朝散歩に出かけた。
そしてどんどん濃くなる霧のおかげであっさり迷子になり、薬草を取りに来ていた町の子に手を引かれている事態に陥っているわけだ。
「おい、お前マジでウォーレン家のお屋敷に行くのかよ?」
「そうだよ、遊び来てるんだもん」
何かだめなの?と首をかしげてクルトを見る。
「ってことは『お嬢様』かよ?!」
「似合わね~~~!」とぼやきながらクルトは手を離す。
いきなり握られていた手を離されてビックリする。
「お嬢様、ご身分が高いとは知らず、汚い手を失礼いたしました。
えーと、......今までの非礼をお許しください」
ペコリと頭を下げられる。
え?なにこの距離。
急に広がった目に見えない距離に動揺する。
「やめてよ、やだよ」
急にレイモンドを思い出す。
レイモンドも最初は踏み込ませない子供だった。
ご要望につき再開しました。
ありがとうございます!
少しでも楽しいと思ってもらえたら幸せです(^^




