ウキウキしすぎただけ!2
「やめてって、普通そうでしょ?」
クルトはため息をつく。
― エミリオ様、平民に関わっては汚れますよ? ―
やめろよ、レイモンド。
俺は仲良くしたいんだ。
父上は『一生懸命努力する人に貴賎はない』って言われる。
俺もそう思う。
レイモンドの努力、俺知ってるんだ。
だからレイモンド、一緒に行こう。
「エミリー様?」
「......さ、『様』って付けるなっ!」
クルトをギッと睨む。
「め、命令なら......そうしますけど」
「そうじゃない!
命令じゃないっ!」
やめて、レイモンド。
どうしてそんなに簡単に諦めて離れていくの?
私はボロボロと涙をこぼして走り出した。
「なっ何泣いてって、あっっちょっと、そっちは!!」
背後でクルトの呼び止める声がする。
と、突然足元の地面が消えた。
「うぎゃああああぁぁぁ!!」
宙に浮くような感覚に襲われる。
女としては程遠い叫び声を上げ、私はズザザザァァァァ!!と音を立てて川べりに落ちていった。
「『うぎゃぁ』はどうかと思うよ」
「すいません」
川べりを滑り下りてきたクルトに手当をしてもらう。
はぁ...という大きなため息がツラい。
わざとなわけじゃないよ。
霧があったから、ちょっと前が曇って見えなかっただけ!
「......で、さっきのは何?」
どうやらクルトは敬語なしでしゃべってくれるようだ。
「ちょっと学園の友達を思い出ちゃって......。
彼も昔は『自分は平民』って言って、長いこと受け入れてもらえなかったから」
「そりゃしょうがないんじゃない?
お貴族サマはそういうのが根強いんだからさ」
クルトがちょいっと肩をすくめる。
「そんな人ばかりじゃないよ!」
「でも現実多いだろ?」
「......うん。
でも悲しかったんだ。
掴んでも掴んでもそっと離される手が、それを思い出しちゃって」
レイモンドは実際とても頑張っていた。
成績だってレイモンドにちょっかい出して、ふざけて遊んでるようなやつよりずっと良かったし、どんなことにも屈しない強い奴だった。
だから一緒に遊んだら、一緒にいたら、一緒に何かを成しえたら面白いと思ったんだ。
『しょうがないなぁ、エミリオは!』
敬語で話さないでくれた時の気持ちわかる?
『様』をつけないで名前を呼んでくれた時の気持ちわかる?
泣きたくなるくらい嬉しかったんだ。
ようやく認めてくれたんだって踊りだしたいくらい歓喜したんだ。
レイモンド、ちゃんと知ってるよ。
私やロベルトやジーン、レオンが本当に困ってる時、金銭は度外視でやってくれてること。
どこまでもどこまでもレイモンドは優しいんだ。
「あーー、この上登るのってもっと下流行かなきゃ登れないぞ?」
クルトが上を見上げる。
「......ご迷惑をおかけします」
「全くだよ」
はぁとついたため息が、妙に重かったのは気のせいだろうか?
その頃当然別荘では「エミリーがいない」と騒ぎになってるわけでして......。
「あいつに必要なのは指輪の前に首輪だ......」とロベルトがぼやいたりぼやかなかったり。




