ちょっとした違い2
おごそかな雰囲気の中、式は進んでいった。
姉上と義兄上が誓いのキスする時なんて、「ふぉう!」とつぶやいてしまった。
お恥ずかしい...!
ロベルトのチラ見視線がイタイ!
無事に結婚式が終わって本当に良かった。
姉上は最高にキレイだった。
今は帝都のホールを借り、フェイバリット男爵家主催で食事が振舞われている。
「エミリー、ほら食え」
あいも変わらずロベルトが給仕を呼んで、どんどんと食わせようとする。
「おい...ちょ!
これ多すぎ!
私を太らす気?!」
食事が終わった人からダンスをしたりお話しに興じたり様々だ。
「これ以上のせたら食べきれないよ。
オタオタしてたらダンス終わっちゃう!」
「ははは、1曲くらいなら間に合うだろう?
がんばれ!」
なんだろう...ロベルト、私に大量に食べさせてる時は機嫌がよさそうだ。
この敗北感半端ないっ!
「他人事だと思って!!
お前が頼んだんだからな!」
歓迎会の二の舞になりたくない私は、そんなに食べるつもりなかった。
「なんだい、エミリーまだ食べてたのかい?
せっかくダンスに誘おうと思ってたのに...」
正面からクリストフが声をかけてくる。
「ロベルトが勝手に給仕に頼んで持ってこさせるんだっ!
残すのはウチのルールに反するし...キーーッッ!!」
はくはく食べているとクリストフがちらりとロベルトをみる。
「...そういうことね」とぼそりとつぶやき、クリストフはロベルトとは反対側の私の隣に座る。
「ねぇエミリー、僕はまだ余裕があるから食べさせてくれたら、僕が代わりに食べるよ?」
「...本当?」
渡りに船とはこのことだ。
食べさせるなんてお安い御用!
リックだって食べさせてあげてた。
するとロベルトが耳に口を寄せてつぶやいてくる。
「エミリー、そいつはいただけないなぁ...。
それに淑女のマナーとしてはなってないよ。
ウォーレン夫人やシルビアが黙ってないと思うなぁ」
...それもそうだ。
これ以上マナー講座を増やされたら気が狂ってしまう。
やめておいたほうが後々の身のためだ。
そっとナイフの持つ手を握りながらクリストフがささやいてくる。
「大丈夫だよ、それは僕が秘密にしといてあげる。
二人だけの秘密だよ。
僕が食べ終わったら、一緒にダンスでも行こうよ」
そうか、秘密にしとけばいいのか!
さすがクリストフは頭がいい。
ダンスだって、今から行けば5曲はいける!!
ロベルトが腰にそっと手を回し、近づいてくる。
「エミリー、こんな人の多い中で、誰も見ないと思う?
のんびりしてる間に時間は過ぎてしまうよ。
それに食べ終わったら俺と踊る約束だろう?」
しまった...人の目もあるか!
例え母上が現場を見てなくても、万が一他人から伝え聞いた時の恐怖は見られた時より計り知れない。
おまけに、のんびりしてたら時間が経ってしまう。
3人の姿をたくさんの人が興味津々だったり、年頃のご令嬢が赤い顔をして見てたり、歯噛みしてたり、母上が青い顔をしてソファーに座り込んでるなんて私は知らなかった。
「エミリー...、毎度面白いことになってるわね」
メイヤが、自分の弟を呆然とみつめる新郎の横でそっとつぶやいた。




