そばに立つ強き人 ~マリアーナ~
「ジーン様、最後によろしいですか?」
歓迎会の終わり、マリアーナが声をかけてくる。
赤い髪が印象的な女性だった。
最初はその程度で、特には深く関わらなかった。
女性とは面倒なものだと思っていたし、基本的に距離を置いていた。
赤い髪のエミリーの友達...。
のんびりとした物言いをする割に、ロベルトやレオンに食ってかかり、レイモンドが微笑んでも冷めた眼差しを向ける。
エミリーを守るため、必死に牙をむく猫のようだった。
その気概にちょっと面白いと思った。
それにエミリオだったエミリーが大切にしてる女性。
きっと立派な女性なのだろう。
だから話しかけられても無視はしなかったし、多少気も配った。
そして気づけば少しずつ、オレと彼女の距離は埋まっていった。
たぶん今思えば、意識的に彼女から歩み寄ってくれていたんだろう。
印象は『ほがらかに笑う顔が似合う人』に変わっていた。
好ましかった。
「あぁそれじゃぁ、そこの庭園を回りながら送ろう」
俺は彼女の手を取った。
風が少し冷たい。
「俺は寒くないから」と上着を貸す。
マリアーナはほんのり頬を染めていた。
実際に可愛いと思う。
女性の中ではエミリーとマリアーナは自分に一番近い存在だ。
まぁエミリーは女性というより、やんちゃな妹弟な存在だけど...。
ただオレは軍人を目指している。
ここは軍事国家だから、争いや戦いがいつ始まるかもわからない。
軍人の仕事は人殺しで、当然自分自身も殺される可能性がある。
いつ死ぬかわからない、そんなオレに縛り付けるなんてことはしない。
友人として共にいてくれたら満足だ、そう思っていた。
学園専属の庭師の育てた芝桜が、そこかしこに咲き誇っていてなかなか綺麗だ。
「...ジーン様...」
そっと声をかけられ、ふと視線が合いその視線の強さに一瞬たじろぐ。
「私...ジーン様をお慕いしてます。
よろしければ妻に...していただけませんか?」
迷いなくマリアーナは見つめてきた。
声が出なかった。
まさかの衝撃だった。
まさか彼女も好いていてくれるとは...鈍いとよく言われるけど、まさにその通り!
みんなよく見ているものだ!
「お...オレは、軍人を目指していて...」
この気持ちを受け入れては、将来彼女を悲しめてしまう...受け入れてはいけない。
「はい、覚悟の上です。
ワタシは甘い気持ちだけでいるわけではございません。
結婚していただけるなら、家に帰られたときは殺伐としたお心が休まる家を作りましょう。
仲良く歳をとって、毎日オヤスミとオハヨウの挨拶をジーン様としていきたいのです。
もし...もし...絶対嫌ですが、ジーン様が軍人として亡くなられたら、ワタシは一人で精一杯あなたとの子どもを育て生きましょう。
そしてワタシが天国に行った時、ジーン様に「よく頑張った」と迎えていただける人生を歩みます。
一緒にいていただけませんか?」
覚悟を持って微笑んだ顔は、息が止まるほどだった。
たぶんこれがマリアーナに心底惚れた瞬間。
彼女に落ちた瞬間...。
メソメソと泣いている女性では自分自身安心できない。
隣に立ち、自らの足で逆境を見つめ対応できる女性。
「その...それは...オレが言わなければならない言葉だったな...」
頭をかきながらマリアーナにゆっくりと微笑んだ。
「ワタシがあなた様をとられまいと、焦った結果ですわ。
ジーン様は人気ですのよ」
ホッとした様子で微笑みを返してくれる。
向かい合いマリアーナの手をそっと握る。
「命はいつか国に捧げるかもしれない。
だがオレの心も体も、命以外の全てをマリアーナに捧げよう。
どうか力強くオレの隣にいて共に生きてほしい。
結婚してくれないか?」
片膝をつきながらマリアーナに求婚する。
「喜んで...
ジーン様、心をくださって、ありがとうございますねぇ」
そっと頬にキスをしてくる。
彼女と出会えたことをエミリーに感謝しよう。
より強くなってオレはどこに行ってもマリアーナの元に必ず帰ってこよう。
一緒に生きよう。
「なぁ、ジーン!
お前、マリアーナとキスしたことある?
あっ、その前にキスしたいと思ったのある?
あるならいつ!?」
え、エミリー、お前オレの感謝をその質問の答えで返せってことか?!
ヴゥゥ...と唸るジーンは、適切な答えを出すためしばらく待ってくれ!と答えた。
マリアーナの顔は気の強そうなきつい顔をしてるので、普通にしゃべると「責められている!」と勘違いした女性によく泣かれる。
なわけで、のんびり「そぉですのねぇ」としゃべるのでした!




