残業にはハプニングつきものです? 後編
忍ちゃんの青い衝動が止まらない!!
「芽衣はいつまで営業部にいるつもりなの?僕はもう異動したのに」
私の椅子に座っていた忍さんが私のウエストを抱き寄せて距離を縮める。
あっという間に私は忍さんの膝の上に座らされていた。
自然と上がってしまうスカートがどうしても気になってしまう。
そんな私なんて気にもしないで、忍さんは私の内腿を一撫でする。
「あつ、それは……」
「なあに?二次会をブッチしてきたという僕に少し冷たくない?芽衣?」
耳元で囁かれた後に、耳朶を甘噛みしてくる。
背筋がゾクゾクして堪え切れない。
「気持ちいい?ねえ……だったらさ、このままキモチイイコト……シヨ?」
大胆な誘い言葉の後に、私のカットーソをめくり上げてブラジャーを押し上げる。
中途半端なその状態を楽しむように、私の胸をやわやわと揉み始める。
「はあ……だめ……ここ会社……」
「大丈夫。この時間に社内に人なんていないから。安心して」
私を気遣うような事を囁いているけれども、私の体に触れているその手は言葉とは逆に大胆に私を攻め立てる。
「そうやって、必死に堪えている表情も凄く男としてはそそられるんだけども。芽衣、俺をもっとソノ気にさせてよ」
そう言うと、私の手をジッパーの上に乗せた。手が触れただけでも、忍さんが私を求めてくれているのが、十分な程に分かる。
オフィスでそんな事をするのは嫌なのに、流されている私がいるのが分かる。
「忍さんは……私が欲しいの?」
いつもなら聞かない質問を自分からする。
そんな私を数回パチパチと瞬きをしてから、忍さんはにっこりとほほ笑む。
「パンツの前が窮屈になる位には……芽衣が欲しいよ。こんな俺……嫌い?」
忍さんが私に不安そうに聞く。忍さんの事を嫌いになれるわけがない。
嫌いだったら、あの日に返事をしていない。
私は忍さんの唇に自分の唇を重ね合わせる。
舌で忍さんの唇を数回ノックしてから自分の舌を差し入れた。
「……ん。……んふぅ……」
「うーん、うふぅ……」
互いの舌が口腔中を忙しなく彷徨い、唇が離れた時に二人の間に銀糸の糸がかかっていた。
「もう止められない。芽衣……いつもより早いけど……いい?」
私をデスクに座らせて、スカートをめくられてしまい、ガーターベルトと下着が露わになる。
「もしかして……芽衣はソノ気だったの?うれしいな。いつもはお堅いって言われている芽衣が実は大胆に俺を求めてくれるなんて」
デスクに両手をついた忍さんは、私の首元に再び紅い華を散らしていく。
時折、チクリとした痛みと共に、私は高みへと上げられていく。
「忍さんは……こんな私は嫌い?こんなにはしたなく、忍さんを求める私を……」
全てを言い終わる前に再び唇が重なる。
今までにない位に熱くて激しいキスに自分が融けて堕ちていきそうになる。
忍さんがショーツに手をかけようとしたとき、廊下からコツコツと言う音がした。
暫くしたその音はやがて遠のいていく。その音にフリーズしたままの私達は顔を見合わせて笑いあう。
「やっぱり、最後までは止めておこうか?僕の家に帰ろう?」
腰が抜けている私の代わりに、忍さんが衣服を戻してくれる。
「それよりも、お腹すいたよね。今夜はピザのケータリングでもいい?」
「いいですよ」
私が答えると、忍さんは手早くケータリングの予約を済ませて、軽いキスを一つする。
「でも、やっぱり少しだけ、味見させて……ね?」
何がどう少しなのかは分からないけれども、忍さんの悪戯に何度となく翻弄されてしまうのでした。
「忍さん……あんまりです」
ようやく会社を出て、二人で忍さんを自宅を目指す。
そう言えば、良く見ていると……忍さん私服姿なのですよ。
午後に業務上の連絡で営業部には来てくれたんですけど、その時は見慣れたスーツ姿だった訳で……自社で扱っている製品のカジュアル部門を着こなしているように見えるけど……よく見るとちょっと違う気がする。
「忍さん……今来ている服は?」
「流石、芽衣。良く気が付いたね。流石は営業さん。この服は母さんがデザインした試作品。ここから更に手が入って販売品が完成する訳。洋服なんて……僕はここ数年買っていないよ」
確かに忍さんは分かりやすいブランド物は持っていない。けれども持っているものは品が良くて計算されているスタイリッシュなものが多い。
それもどことなく見覚えがあるものが多いのだ。その事を忍さんに聞いてみる。
「そうだね。僕の持ち物は大半がオーダーメイド。でもそんなに高くはないよ。それに一応、ブランド物って言われるメーカーのモノも持っているし使っているよ」
「そういえば、忍さんのビジネスバッグって、社内で扱っていませんか?」
「半分正解。僕が持っているのは、革製品。社内で販売しているのはナイロン製のはずだよ。このラインを今度はキャンバス生地で若い世代にも持ちやすくしてみようかって開発部から出ているよ」
忍さん、本当は財務管理部ではなくて、商品開発部で開発していたいのでは?
ふとそんな事を思ってしまう。でも、さっきの忍さんは良くないよね。
「今度、さっきみたいな事をしたら、子作りは最低でも5年は解禁しませんよ」
結納後のプランも少しずつ決まってきている。私達が実際に入籍するのは2年後の予定。
私が税理士になってからという事になっている。2年後に税理士として転職するか、会社の経営にかかわるか決めることになっている。
私が婚約する事はオープンにするけれども、忍さんが相手である事は暫くは隠す予定だ。現時点で知っているのだって、会社サイドの人間は忍さんの家族を除くと5人いるかどうか程度。
何よりも、二人きりの時はこれでもかって程に私を甘やかす忍さんだけど、オフィスにいる時は、ビジネスモードに徹する約束になっている。
これはあのホワイトデーに私達が決めたルール。今日でこれだと、約束もどうなることやら……かなり不安だけど、忍さんを信じるしかない。
「信じていますよ?」
私は小さく呟く。
「何?芽衣?」
気がついて欲しくないタイミングで忍さんが気が付く。私は苦笑して彼が大好きだという笑顔を貼り付ける。
そんな私も見て、彼はふにゃりと表情を崩す。
彼女である私しか見る事が出来ない表情をジッと見つめる。
「どうしたの?芽衣?」
「大好きですよ。忍さん」
忍さんが目を丸くして私をジッと見つめる。
「芽衣、今ここで言うのは反則。僕……芽衣に優しくできないよ」
うーん、困った。このままだと月曜日は忍さんの家から出社になりそうだ。
それは……嫌だなぁ。そう思っている私は見慣れた店舗を視界に捉える。
始めて忍さんの家にお泊まりした時に立ち寄ったコンビニが見えて来る。
「あっ、コンビニ」
私がポツリと漏らした時だった。
「ケーキと僕のキス、どっちが好き?」
「えっ?」
「芽衣は?どっちが好き?」
忍さんの背後に大きな尻尾がパタパタと振られている様な錯覚に陥る。
答えを間違えると大変なことになりそう。冷静に、落ち着いて。
「えー、ここで答えるんですか?」
「うん。僕よりも元彼の方がいい?だったら……僕頑張って上書きするよ」
そう言って私の肩に意思を持って手を置く。あいつと忍さん……ね。
忍さんの目の前で別れてから私は連絡を取ってはいませんよ。
そんな人の事をまだ忍さんは気にしているのですか。本当に困った人ですね。
「そんなもの……答えは出ていますよ。意外に忍さんはおバカさんなのですね」
「ちょっ、芽衣。なんか、余裕なんだけども?」
忍さんは焦っている。本当にこの人は私よりも年上なのかしら?
子供っぽくも見えるそのリアクションを自分の目に焼き付けたい。
「忍さんですよ。分かりませんか?」
「本当に?」
「本当です」
「だったら、ちゃんと答えて?」
忍さんが私に縋るように見つめている。そんな目をしなくても見捨てないのにね。
私は背伸びをして忍さんにデコピンをする。
「痛い!!」
「もっと自信を持って下さい。不安なら、忍さんだけしか見ない私にすればいいだけです」
「芽衣は?それでいいの?」
本当の彼は、こういう人なのかもしれない。そんな事が思い浮かんだ。
女々しいともいえる、今の忍さんの事を嫌いに離れないもの。
決して忍さんを尻に敷きたい訳ではないんだけど……頭に過った事を口にする。
「ねえ、ケーキがいい?それとも私と一緒に食べるケーキがいい?」
「僕……芽衣がいい」
えっと、いつから私は食べ物になったんでしょうか?
「私は、食べ物じゃないです」
「うーん、でもね。芽衣がいい。それと初恋ショコラなら買ってあるよ。あのコンビニでね」
「えっ?」
「だって、僕は別れる気はないけど、芽衣との始めての恋をしている訳だし、折角だから一緒に食べたいからね。一度家に帰る時に寄ってみたんだ」
すっごいドヤ顔で答えてくれるんだけども、その解釈は……ありでいいのかしら?
初恋って、始めての恋。本当に始めてもそうだし、パートナーと始めて付き合うのだから初恋って言われるとそうかもしれない。元鞘になれば確かに二回目の恋になる。
「芽衣?納得していないみたいだね?」
私はゆっくりと頷く。
「お互いに今まで恋をしているのは分かっているし、それは消せない。けれどもそれがあってこその経験があって今の僕達だと思うから」
そう言われるとそうかもしれない。凄くロマンティックな事を言われて、何か丸めこまれている気がしなくもない。
「でも、本当なら菫ちゃんみたいな事を言うのではないの?」
あまり、人には話していないのだけども、菫ちゃんは事件に巻き込まれたことが切っ掛けで16歳になってすぐに今の旦那さんと結婚している。
なので、兼業主婦歴6年だったりする。本人が言うには、兼業の部分が学生から社会人になっただけですよってあっけらかんと答えてくれる。
そういえば、自宅で初恋ショコラを旦那さんと食べると疲れちゃうんです……何て惚気を話してくれる。今は自宅で旦那さんとラブラブなのだろうか?
「そう言う事を、今ここで言うかな?この娘さんは」
「だって……」
初恋の人が旦那さんならそうでしょう?私は違うもの。
「だったら、僕が僕しか見えないようにしてあげる。誰よりも激しく、深く愛してあげる」
「私は程程がいいんだけど……忍さん?」
私は忍さんを見上げるように見つめる。
繋いでいる手に力が籠る。
「無理。僕を煽ったのは芽衣。君だよ。だから……責任を取って」
忍さんに力強く手を引かれて、マンションのエレベーターに乗り込む。
上昇するエレベーターの中、噛み付くような荒々しいキスを受け止める。
「まずは、僕を芽衣で一杯にさせてね」
玄関のドアが閉まった途端、お姫様抱っこで忍さんの部屋に連れ込まれてしまう。
「ねえ?ケーキは?」
「後で一緒に食べよう。僕の愛を全部あげるから、覚悟してね」
あっという間にベッドのシーツに縫い付けられてしまう。
その後ですか?語る気にもなれません。
おまけ 次の日の朝の二人
「忍さん!!」
「芽衣?あれ?声が掠れちゃってるね」
「誰のせいだと思っているのですか?」
私は毛布にすっぽりと首まで被って忍さんを睨みつける。
「芽衣が可愛いのがいけないんだよ」
私はそんな定番の言い訳を聞きたくもありません。
「ところで、芽衣。起きれそう?仕事はどこでする?」
「起きれそうもありません。忍さん、約束が違います」
終わってなくて持ち帰った仕事はどうしたらいいんでしょう?
「芽衣が可愛すぎるのがいけないんです」
ふざけながらも忍さんの手が、また不埒な動きをしています。
「もう……イヤです」
「僕の事……嫌い?それじゃあ別れるの?」
忍さんが目を潤ませて私を見つめる。この人って、涙腺を自由自在に操作できるのかしら?忍……本当に持っている子なのね。良く分かったわ。
「誰も、そうは言っていません」
「だったら、芽衣は何にもしなくていいよ。僕のされるがままに感じてくれればね」
「喉が痛いのは……どうするんですか?」
「ん?ちょっと良く分からないや。それにしても本当に芽衣は柔らかいね」
「しらばっくれないで下さい」
暫く、二人の攻防が続いたとか、甘い声が聞こえたとか。
やっちまった感がありますが、気にしない!!
忍ちゃんがいけないの。私悪くない(笑)




