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マーメイドを捕まえろ

本来の時間枠ではありません。完全パラレルでお楽しみください。

場所のイメージは夢の島植物園あたりでお願いします。

ようやく想いが通じて2カ月程たった二人がデート。

「何?もうダメなの?」

「ちょっと待ってよ。俺……現役止めて何年経つと思ってるの?」

肩で息をしている彼の腕にしがみ付いている私は上目遣いで見上げる。

私達がいるのは、都内の公共施設のプール。スイマーは止めたけど、国際大会が行われるプールはオフの時は1日安価で利用ができる。

今日は学校が入試で休み。本来は生徒会役員なので、お手伝いがあるのだが、中等部試験も姉妹校の試験も立ち会ったので、今回は1回だけオフを貰っている。

「えっと……5年?でも中学は陸上だし、今はバスケットでしょう?」

「じゃなくって、スイマーとして必要な筋力を持っていないってこと。忘れてない?」

そう言えばそうかもしれない。確か中学ではハードルとハイジャンプだったような気がする。

「ま、いいよ。それじゃあここで休んでいたら……邪魔かしら?」

私達が使っているのは5コース目。両サイドからの波の抵抗が少ない。

それにレースだったら、トップが泳ぐ場所。こんな時位そんな気分を味わいたい。

プールの中には私達の他は、通常のレッスンの人達しかいない。ほぼ貸し切り状態。

「いいんじゃない?とりあえず、ちいは100泳いで帰ってきたらいいだけだろ」

「いいだけだろって言ってるけど、私だって現役止めて何年経ってると思うの?」

「元選手コースの人が何をいうか。俺を止まり木にしているのは誰だ」

確かに。彼氏とはいえ、止まり木のごとくしがみついている。

今日来ているプールの水深160センチ。私の身長……153センチ。基本的に自力では立っていられないし、出るのも無理。

今日のデートは、近くの植物園に寄って、ランチを食べて泳いでから家に帰るコース。

「ごめんなさい」

彼なしではここには来れない事を思い出して私は素直に謝る。

「違うだろ。普段スキンシップしてくれない人がここぞとばかりにしがみ付いてくれるから嬉しいんだけども?もう少し上にボリュームが欲しいけどね」

「うぅっ。それは申し訳ございません」

「いいえ、昔の真っ平らに比べたら……とりあえず泳ぎに来たんだから泳いでおいで」

彼に促されて私は彼から離れて背泳ぎの体制に入った。



いつものように、ドルフィンキックで進んでいく。水の中で感じる光の感じが好きだ。

これを楽しむために体の限界まで背泳ぎをやっていたと断言できる。

水の中から見える光は、どこか異世界でそれでいて静寂が支配する。

自分だけしかいない世界。普段なら孤独は辛いから嫌なのに、この世界だけは嫌いになれない。

競技ではないから、無理にピッチを上げる事もなくて、自分のペースで子どもの頃に教わったフォームの通りに無駄なく泳ぐ。

指先でキャッチして、最後まで掻き切って、プルアップ。少しでも遠くで着水したくって自然と肩も動いてくる。

キックの方も、無駄にビートを刻む事はすでにしない。無駄に力を入れないで必要なビート……現役よりもはるかに少ない。

頭上に人の気配を感じる。そこにいるのは、恐らくとも君だろう。最後は流して辿りついた。

「ただいま」

「泳いで終わって爽やかに言われると困るんだけども」

とも君は少しだけむっとしている。だったら泳げばいいのにね。

「泳いだら?」

「分かったよ。今の俺ならちいちゃんに勝てる?」

「多分ね。あの頃より体力ないし、筋力も……。それに勝てるレースしかしないの……忘れてない?」

「そうでした。ちょっと、ブレスト見て貰ってもいい?25過ぎたら追ってきてよ」

そう言うと彼が泳ぎ始める。仕方なく立ち泳ぎをしながら彼のフォームを見る。

悪くはないと思うの。上半身の進みが悪い感じがする。部活で肩を痛めているのだろうか?

それと、足の方ももっとキャッチができるはずだ。フォームに無駄があるのだろう。

彼の後を追いかけるように私も泳ぎ始める。ここのプールは透明度が高いのが売りだから10メートル先でもよく見える。

やっぱり、足の運びが悪過ぎて、上半身が安定していない。

とは言っても、現役時代専門ではないから大きなことが言える訳ではない。

言える事はただ一つ。力を抜けばいい。水と楽しめばもっと楽に進める。



その後、暫く泳ぐことに専念して、程良く疲れてきたのでプールを上がることにした。

午後3時半。後1時間もしたら夕焼けが見えるだろう。

明日は試験の立ち会いをしないといけないから、ここで撤退は賢い選択のはず。

私達は、仄かに塩素の香りと体にまとって駅に向かって歩き出す。

「つっかれたあ。何か食べたいな」

「そうだけども、夕ご飯はどうするの?」

「それはそれ。これはこれ」

「……いつもの部活より絶対に練習量少ないと思うけど?」

「痛いことを言ってくれますね。このお嬢さんは。それよりもここの発育を俺としては期待してますよ」

そういうと、コートの上から私の胸のあたりとツンとつっつく。

そんなこと、言われなくても分かってるし。どうせまだお子様体型ですよ。

「ごめんね。キューピー見たくって」

「そんなこと言ってないよ。ちゃんとくびれてるし、柔らかいし?これからの俺に期待して?」

ニヤリととも君が笑う。何がいいたいのか分かってしまって、恥ずかしくなって私は俯く。



駅の側にあるコンビニ立ち寄ることにした。ちゃんと泳いだから、おやつ位はいいかってなったんだよね。

それにもしかしたら、ここのコンビニにはあるかもしれない。少しだけ私はその事に期待をしていた。

私が探しているのは、国民的アイドルがCMしている初恋ショコラだ。

ちょっと高校生のお小遣い的にはお高いんだけども、濃厚なチョコレートクリームとスポンジが絶妙でカロリー控えめ。

スイーツ女子には憧れの一品だったりする。爆発的人気で、近所のコンビニで入手したくてもなかなかできない。

一人では食べた事があるけれども、彼とは食べた事がない。一緒に食べてみたいなぁと思いながらコンビニに入った。

彼はおにぎりの当たりを物色している。それなりに水に入るって疲れるものね。

ケーキコーナーを覗くと……1個だけ隅っこに陳列されていた。それを私は手に取って。ホットの缶コーヒーを更に手にして会計をした。

彼の方は私より先に会計を済ませたみたいで、あんまんを食べている。

とも君って以外に甘いもの好きなんだよね。本人は必死に隠しているけど。

「あんまん美味しい?」

「うん。ほらっ」

私に食べかけを渡してくれる。あんこがおいしく見えるそれを一口齧る。

こしあんに仄かに香るごま油が更に美味しく感じる。

「ちいは何を買ったの?」

「後で、ホームのベンチで食べようかなと思ってね」

「ふうん。俺にもくれるんだろ?」

「もちろん」

私の買った袋を彼が手に取って、私達は手を繋いで駅に向かった。



「夕方はやっぱり風が冷たいな」

「ちゃんと髪を乾かしたけどね。仕方ないよ」

私達はベンチに座ってのんびりとさっきまでいたプールのある体育館を眺めている。

「で、何を買った訳?これって……アレ?」

「そう、アレです。一緒に食べよう?」

私はアッキーとまなとお泊まり会で食べちゃったんだけど、とも君はまだ食べた事がない。

その事でチクチク嫌味を言われていたのもあって私なりに探していたの。

折角だから、食べなきゃだめだよね?私はガサガサと音をたてながら、パッケージを開けた。

ほろ苦いココアの香りが真っ先に鼻を擽る。これだけでも幸せに感じるんだからチョコレートって不思議。

私はケーキをひと匙掬って、とも君の口元に近付ける。

「はい、どうぞ?」

「どうぞって……あーん……そんなに甘くないのな。ふうん」

とも君は私の手からスプーンを取りあげてしまう。なんで?どうして?

今度はとも君がスプーンにひと匙掬って私に向けてくる。

「俺もどうぞ。ほらっ、あーんして?ここには俺達を知っている人は誰もいない……だろ?」

いつもなら恥ずかしくてこんな真似できないけれども、この路線を使っている同級生はいるけれども私達が今いるこの駅を利用している人はいない。

私は恐る恐る口を開く。ゆっくりとスプーンが口の中に収まった。

スプーンを咥えたままの私をとも君はジッと見つめる。何気ない仕種なのに途端に恥ずかしくなる。

その後は無言で二人でケーキを食べて、やがてケーキは食べ終わってしまった。



「おいしかったな」

「うん」

「二人で食べたから……か?」

「きっと……」

私達は言葉少なく俯きながら言葉を交わす。

多分お互いの意識にはあるセリフがあるはずだ。-ケーキとぼくのキス、どっちが好き?-

CMではアイドルが画面にいるであろうヒロイン相手に顔を近づけている。

付き合い始めて、もう2カ月が過ぎた。キスは何度となくしているけれども、人がいるようなホームのベンチではしたことがない。

「ちい?」

「ん?何?」

「ケーキとぼくのキス、どっちが好き?」

顔を赤らめながらとも君が聞いてくる。その顔可愛いって言ったら怒るよね。私の心に留めておこう。

「そうだなぁ……目を閉じて?」

たまには、私から仕掛けてもいいかな?いつも彼に翻弄されてるような気がして仕方ないから。

ゆっくりと目を閉じた彼に私か顔を近づけて触れるだけのキスを一つした。

「……足んない。だからもっとする」

彼が私の顔を見つめて一方的に宣言する。もっとするって言われても人に見られるのもどうかなぁ?

「そんな顔をしてもだあめ。俺に火をつけたのはちい。だから……責任取って?」

自分で聞いて煽ったのに、それはあんまりだなぁとは思ったけど、キスしたのは私だし……。

そして、私は降参とばかりに彼の首に両手を回して彼のおねだりに答えるのだった。


駅として利用していないからって、路線を使う人はいる訳で……。

けっ、このリア充が(怒)だったことは言うまでもありません。

若干バカップルになっているのは御愛嬌(笑)

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