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第百六十八話


一五三五年八月 越中氷見狩野屋別邸



朝倉宗滴らを狩野屋別宅に集めた新兵器説明会は続いた。



「…話を続けますが、この北山式火槍(ほくざんしきかそう)の製造にあたっての説明をさせていただきます。まずはこの黒色火薬ですが既に氷見と放生津( ほうじょうづ)にて既に製造を始めております。木材については能登から調達します。皆様方をお呼びしましたのはその他の部分について分業をお願いしたいと考えています。」



僕は台の上にバサッと書類を広げた。



「まずは飛騨からです。製造に使う鉄と鉛の採掘と製錬、加工を飛騨にて行っていただきたいと考えています。」

「なるほど。鉛は我が領で取れますが、鉄の多くは内ケ島領となりますね。」



三木嗣頼が頬を触りながら口を挟んだ。



「…内ケ島には小嶋六左が手配りすることになっている。そのあたりは右兵衛督殿との打ち合わせも必要になろうが、まぁ上手くいくよ。」



内ケ島は我等に向けて税の滞納をしていた負い目があるからな。



「…既に飛騨国内では鉄の製錬等についてのノウハウ…失礼、経験があろうが、此度の事業の中で使う鉄の製錬・加工について三木殿にお任せしたい。その為の施設の設計図は治境局より別途お届け致す。鉛については採掘後の選別までしてもらい、手間代を含め我が神保家が買い取ろう。」

「越中守様、質問してもよろしいでしょうか?」

「うむ、何であろう?」

「…鉛について我が三木が行うのは採掘後の選別までと言うのは如何なる理由に御座いますか?」

「良い質問だ。」



うん、本当に良い質問だ。

三木嗣頼は越中に来てまだ日は浅いが、実に良く学んでいると聞いている。

真面目で優秀な若者なのだろう。



「もちろん戦略的な所もあるが、鉛の製錬については環境に与える影響が非常に大きい。その処理にはかなりの手間が掛かる故、三木殿らには鉄について集中して貰いたいのだ。」



言える範囲での回答はこれくらいかな。



「ありがとうございます。理解致しました。」

「…ついては四郎二郎には一度飛騨に帰国してもらい、右兵衛督殿と話をして来てもらいたい。小嶋と治境局の者も遣わそう。施設建設に必要な人員は後程派遣いたす故、その下準備をな。四郎、よろしいかな?」」

「はい。必ずや越中守のご期待に応えられる様、我が父と話を致しまする。」



僕はそう言いながら小嶋六左に目配せした。

それに対し、小嶋六左は小さく頷いた。

まぁ、上手くやってくれるだろう。



「…四郎二郎様。では某と準備を進めて参りましょう。出立は早い方が良いですからな。」

「そうですね。では越中守様、皆様方、私は失礼致します。」



三木嗣頼と小嶋六左は一礼し退出していった。

その姿を見送ると、僕は浅井亮政の方を見た。



「…さて話を続けましょう。ここまで原材料の部分の話をしておりましたが実際の製造についてです。各地から集めた材料は氷見に集約する関係上氷見に製造工場を建設いたしますが、もう一か所、浅井領内に作りたく考えております。」

「ほう、我が領内に…?」



浅井亮政が前のめりの体勢になった。



「…浅井殿の領内に国友と言う所がありましょう。国友の鍛冶師は高度な技術を持っていると聞いておりましてな。」

「さすれば越中守殿は我が領内の鍛冶師に技術をお授けくださると?」

「北山式火槍…銃はいずれ戦場において重きを成す筈にござる。」

「それ故に生産量を増やしたいのですな?」

「左様で。浅井殿にはまず優秀な鍛冶師を氷見へ派遣していただきたい。」

「承知いたしました。帰国次第に準備を進めましょう!」



浅井亮政は幾分興奮した様子で答えた。



「越中守殿よ。…それで我が朝倉は何をすればよろしいのかな?」

「まぁまぁ少しお待ちくだされ。」



朝倉宗滴を制し、僕は二枚目の書類を広げた。

これは別の新兵器の設計図だ。



「む、何だこれは? 先程の銃…に似ているように見えるがかなり太い筒の様だな。」

「宗滴殿は焙烙火矢をご存知でしょう?」

「ああ、陶器に入れは火薬を投げ込むアレか。」

「これは内側に鉄を貼り付けた木製の筒にこの絵の様な形状のモノを差し込み、火縄にて点火、火薬の推進力で飛翔します。」



僕の説明を受け、朝倉宗滴は設計図を覗き込んだ。



「中に挿し込むモノは頭は焙烙玉か? この羽は飛翔を安定させるためか?」

「御名答です。想定では五百歩を超える距離からの攻撃が可能になりましょう。」

「…それで筒の後ろを空けているのは発射の衝撃を逃がすためか。」

「おお、よく分かりますね。」



まったくこの御仁は凄いな。

設計図を見てここまで分かるのか。



「この新兵器は『龍筒(りゅうとう)』、弾薬は『龍震(りゅうしん)』と名付ける予定です。」

「現物が無いと言う事は開発途中という事か。」

「まだ設計の段階でして、『龍筒』の製造には飛騨での鉄製錬・加工事業が進むのが前提となります。」



朝倉宗滴は腕を組んだ。



「なるほど。儂を呼んだのはそう言う事か。」

「分かりましたか?」

「これらを用いた戦術を考えろと言う事なのだろう?」

「さすがは宗滴殿。仰る通りです。」

「承知した。一方的に焼き払うか。これまでの兵法をすべて捨てねばならぬな。ふふふ、久々に腕が鳴るわい。」



朝倉宗滴の目がイキイキしてきたような気がした。








もひとつ新兵器の話です。要はカールグスタフのような無反動砲を作りたいと言う事です!

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