謎の空間へご案内
木々は奥に行くほど枝葉が重なり合い、足元の草も腰のあたりまで伸びていた。
男は慣れた感じで歩いている。ここら辺に普段から住んでいるかのよう。
「随分簡単そうに歩くのね。」
私ですら草で転びそうになるというのに。
「そりゃあ俺はお前みたいに館に引き籠ったりしてないからな。」
なんか含みを混ぜた言い方だ。
「私が館で遊んでいるとでも思ってるの?」
「俺にはそう見えるが?」
本当に失礼な男だ。もしそう思ったとしてもそんなことないと言うべきだと言うのに。
「そろそろか。」
男が立ち止まると頑なにつけていた仮面を外した。
男は仮面を前にポイ捨てするように投げると、どこかに転送されたかのようにふっと消えた。
私は男の後ろにいるため顔を見ることはできない。
「何をする気?」
「黙ってろ」
今までで1番冷たく冷徹な言い方だった。
男が「俺だ」と一声かけると空間に渦が起こり洞窟が現れた。
それはまるで不思議な出来事という言葉がバッチリと合う。
「なんなのよこれ……」
私は驚くばかりで警戒がすっ飛んでいた。
「渦が巻いてるうちに入れ。」
「は?」
こいつは何を言ってるの?どこに繋がるか分かんないような渦に飛び込めって?
考えを逡巡するまでもない。入ったら明らかに終わりだ。
「何してる、早く入れ。」
こんなに急かしてくるのも怪しさが拍車をかけている。
「なんであなたが先に入らないの?」
「俺が入ったら逃げる可能性があるだろ。」
まぁ確かに。
「はいはい、入ってあげるわ。」
実際私もこの先に何があるのか興味が出てきた。
散々文句を言っていたのが馬鹿らしく思えてきた。
普段はこんなにコロコロ考えを変えることなどないんだけどな。
「はぁ、なんでこいつなのか……」と男は小さくつぶやいた。
「え?なんか言った?」
「いや何も?」




