走る、限界を超えて
城を出ると木々の擦れる音が大きく聞こえる。
さっきの出来事が現実だと分かってはいるが放心状態に近い心情だ。
「どうすればいい……」
私は近くの木にフラフラと近づいて座り込んで手に頭を埋めた。
流石の私の脳もエラーを吐いている。
はたから見れば木にもたれかかって寝ているように見えるかもしれない。
だが腐敗した死体が大量にあるここに近づく者などいないだろう。
「地を向くなんてシラリアらしくない。」
ふと声をかけられ顔を上げるとフレンと未来がいた。
2人の顔を見た瞬間に私は何をしていたのだろうと自分自身に叱咤したくなった。
「助かった!一時の感情に流されて精神の海原に出るところだった。」
私は体についた湿った土を手で払い立ち上がる。
目付きをキッ!と正して気持ちを切り替える。
「よくここがわかったわね、私は何も言わなかったのに。」
その問いにフレンが答える。
「だって村を襲ったのがここの連中だったからね、あんたの考えてることなんか丸わかりよ。」
まぁ冷静に考えればそうか。
未来が腕組みをしながら「で?あいつらをどうするつもりだ?」と気だるそうに聞いてきた。
「決まってるでしょ、館に逸早く先回りして行進を食い止めるのよ!」
2人は驚いた表情で目を見開いている、まるで鳩が豆鉄砲食らったように。
「先回りするって本気で言ってるの?!」
「そうだけど?」
私が真面目に答えると未来は顎に手を置いてクククと笑っている。
「中々に面白い提案だ!だがどうやって連中を追い抜くつもりだ?」
それを聞いてフレンも「そうよ!もうあいつらは館に着いてるかもしれないんだよ!」と同調して疑問を聞いてきた。
今は一分一秒でも惜しい。
こう考えるとこの会話すらも無かったことにしたいが、全てが後の祭りだ。
こうなったら私が先導するしかない。
「最悪のケースを考える前に行動する、私についてきて!」
私は走る。帝国の門を勢いで開き、草木の香りを嗅ぎながら草原を駆け抜け、森に戻ってきた。
森には不穏な雰囲気が立ち込めていて、重力が倍のように感じる。
錯覚かもしれないがいつもより暗くて霧がかかっているような感覚がする。
それともこれは敵の策略の一種なのか。
後ろを見るとすました顔の未来とゼェゼェと息を切らしているフレンがちゃんとついて来ていた。
「流石に先回りすることはできなかったな。」
唐突に未来が断定した。
「なんでそんなことが分かる?」
私は気になって聞いてみる。
本当はこんな悠長に質問などしている場合じゃないが、気になってしまって知りたくなってしまう。
「明らかに人間の気配がする、それに枝が所々に不自然に折られているからな。」
「はぁ…はぁ…なら…見つかるのも時間の問題じゃない?」
フレンは息を整えようとしているが肩で息をしている。
「そうね、さっさとしないと見つかるわ。」
ここに敵が大勢侵入しているとすれば森の出入り口にも兵を配備しておくはずだ。
だがそれが無かった、もしくは隠れていて今軍部の中心部に報告しているか。
おそらく可能性としては後者の方が現実的だろう。
「今頃下級兵士が中枢に私たちが来たことが報告されてるはずだからこそこそしてても仕方ないわ。」
未来が楽しそうに笑いながら提案する。
「じゃあ堂々と館に向かうか?」
それにつられて私も笑顔で返す。
「ふふっ…館まで一点突破するわよ。」
そういうとフレンは明らかに嫌そうな顔をして「また走るの……」と呟いていた。




