村の真実
透明な結界に入ると関門のような大きな石壁が現れた。
「こんなの見たことない……」
フレンは驚いたような顔で見上げている。
こんな平和な平原に城塞都市の一部が出てきたら誰もが驚くだろう。
暫く見ていると石壁の陰から、兵士のような恰好をして髭をしっかり整えた顔つきの男が出てきた。
「ここで何をしてる、何者だ。」
「ここで争いを起こすのは賢くないな、武器を下げてもらおうか。」
男は黙って片手剣を腰に戻した。
「これを見れば分かるだろう。」
未来は男に一枚の紙を見せる。
「なるほど……どうぞお通りください。」
男は紙を見るなり態度を変えた。
木製のドアを開き中に入ると兵の駐屯所となっていた。
駐屯所内に入ると私たちを敵視する目があらゆる方向から向けられたため非常に不愉快だ。
「さっさと抜けよう」と提案して足早に過ぎ去る。
駐屯所を後にして見えないくらい離れた所には家が立ち並ぶ集落があった。
家の壁は石を固めたもので作られていて、広大な畑が見える。
畑には農具が使われていた最中かのように畑に突き刺さったり乱雑に散乱している。
「未来が連れてきたかったのはここ?」
「ああ、そうなんだが…」
「何か違和感でもあるの?」
「確かにこのレーダーによればここなんだが、あんなに兵を置くような村では無いはずだ。」
「私が許可を申請した時は、村人たちが畑仕事をしていて、豊かな村だった。」
そう言われて感じてた違和感が分かった、人の気配が一ミリも感じない。
それにこんなに畑があるのに誰1人畑仕事をしている人がいない。
「これだけ畑が広いなら1人くらいは居るはずよね。」
まるで無人の村のようだ。
だが真後ろから何者かの気配がした
「あれっ?まだ残りがいたのか?」
後ろを見ると「フンッ!」と勢いよく槍を躊躇いなく私たちに突き刺してきた。
「どういうつもりだ!なぜいきなり……」
「黙って死ね。」
私たちの言葉をかき消すように次々と槍を突き出す。
フレンが無事か確認したが、いつの間に移動したのか怯えて石の家の方に走っていた。
「この槍止められるか?」
「勿論よ、任せなさい。」
私は突き出した槍を躱して持ち手の部分を持つことで動きを止めた。
「な、なんだ!?槍が動かん!」
「せいっ!」と、戸惑っているところに未来が拳を顔に埋める。
「ウッ!」
槍が動かなくなり相手はガシャンと倒れた。
「いきなり何だったのかしら。」
「こいつの言っていた残りと言うのも気がかりだな。」
「何かありそうだな……調べるか。」
「本当に知りたいなら教えてあげるわ。」
突然フレンが真面目な顔をして言った。
「何か知ってるの?」
「ええ、全部ね。」
「知っているなら教えてほしい、また狙われる可能性があるからな。」
フレンは一息ついた後、慎重な面持ちになった。
「ここは私の故郷なのよ。」
流石に驚いた、確かに南方だとは聞いていたが。
「本当にここがフレンの故郷だって言うの!?」
「そうよ、名前をテオドール村。」
私は未来の方を見るが、そこまでは知らなかったようで、しきりに髪をいじっている。
「フレンには前話したよね。」
私はあの時話されたことをぼんやりと思いだした。
「たしか……キルナプール帝国の搾取が行われてたって話よね。」
「そう話したけどね、実はもっとひどい状態だったのよ。」
「キルナプールの搾取は過激になっていって村人たちを捕らえだしたのよ。」
「それは一方的な侵略だろう。」
「そうよ、帝国にとって侵略するのは赤子の手をひねるも同然でしょうね。」
しばらくの沈黙が流れた。
事態が思ったよりも深刻だったことに驚きだったが、フレンが軽々と国を捨ててきたとは思えなかった。
「フレンはこの村はどうでもいいんじゃなかったの?」
聞きづらかったが聞くしかなかった。
「確かにあの時はそう答えたわ。」
既に声は少し震えている。
「本当はね、逃げるしかなかったのよ。」
これ以上は言葉がうまく出なかった。
とりあえず近くの家に入って全員落ち着かせようと思った。
だがそう簡単に収まるような話ではなかった。
「なあシラリア、この後どうする?」
私の考えは決まっていた。
「勿論この村を取り戻すわ。」




