フレンの視点
「ねぇ、シラリアは何処に行ったのかな?」
「そんなに遠くへは行ってないでしょ、すぐ戻ってくるわよ。」
不安そうなペラをなだめるように言う。
「それより考え込んでどうしたのよ?」
さっきから未来は黙り込んで考え込むような姿勢でいる。
「いや、何か嫌な予感がしてな……」
「科学者の権威であるあなたが予感を心配するなんて、なんだかおかしな話ね。」
「そうでもないよ、人間の予感には何らかの違和感を無自覚に確認してそれを脳のニューロンで分析してるからだと思ってる。」
「へぇ~、私の知らない世界ってことね。」
ペラは何もわからず首を傾けている、私だって詳しく分かったわけではない。
パタパタパタ
誰かが走ってきていると思ったら、ラミアだった。
「はぁはぁ……」
「どうしたのかしら?そんなに慌てて。」
「皆さんまだここにいたんですね、よかったです!」
ラミアは相当急いできたのだろう、額に汗をいくつも乗せて髪からぽたぽたと落ちている。
「いったいどうした?そんなに慌てて。」
未来が顔を上げて理由を聞く。
「シラリアさんから伝言を頼まれまして、すぐに伝えなきゃと思って走ってきたんです。」
「息を整えてからにしなよ、リアがどこに行こうと危険に陥ることは無いでしょ。」
ラミアは腕で汗を拭ってから深呼吸を二回ほど行って落ち着いたようだ。
「さっきここを出ていくシラリアさんを見つけて追いかけたんですが、少し一人でこの広い空間を歩きたいと言っていました。」
(雰囲気を悪くして責任でも感じたのかしらね)
「それなら心配ないよ、少し歩くだけでしょ。」
フレンは優雅にさっき頼んだ紅茶を一口含む。
「あたし探しに行ってくる~」
「ちょっと待って。」
ペラはシラリアを探しに行こうと椅子から下りたが未来が止めた。
「どうして止めるのよ!」
「やっぱり何だか悪い予感がする……ついてきて。」
未来が歩きだすのにつられてフレンとペラも続く、ラミアは未来に任せれば安心というように元の業務に戻っていた。
何やら物々しい感じの広い部屋に来た。
「ここは何なの?見たところ監視室みたいだけど。」
「その通りだ、ここでシラリアがどこに行ったか確認しておこうと思ってな。」
「ざっと見た感じ五十個ぐらいモニターがあるけどこれ全部管理できてんの?」
「問題ない大半はAiに任せてあるし、ここで何か起こったところで大きな被害が出ないよう三権分立に似たシステムで牽制してるからな。」
「あたしには何を言ってるのかさっぱりだ~。」
ペラには分かるはずがない、ここは異次元そのもの、化学が進歩していない私たちの世界とは隔絶されたものなのだから。
「貴方……フレンといったか、なかなかに科学のマインドがあるようだが?」
「……これくらい進んだ他国の情報ならいくらでも手に入れられるからね。」
苦し紛れの言い訳であることは百も承知だ、だが易々と真実を言うわけにはいかない。
「そうだな、ここまで発達してるところなんて、この世界の発展度合いを調査した時に一か所と南の田舎と思える地域を除いてはないと思うが……そういうことにしておこうか。」
意図を組んでくれたようでよかった。
「そういえば彼らに指示は伝えたの?」
「ああ、そうだったな、おーい聞こえるか。」
全員耳から紐みたいなものを引き抜いて聞こえますよと返事をした。
「今日ここに来た客人のシラリアが今どこにいるか確認してほしい。」
「了解しました!全員配置に着け!」
この中で一人、リーダーであろう男が返事をして全員に号令をかけた。
なぜリーダーとわかったかというと白衣の左胸の部分に金色にキラキラと光る星がつけられていたからだ。
まるで西部の保安官が一人紛れ込んでいて白衣の下に拳銃を持っているのではと思ってしまう。
「もしかして彼のこと気になってるのか?」
「とうぜんでしょう、ここには似つかわしくないほど浮いてる存在なのよ、気にならない方がおかしいわ。」
「あなたはなんで星を付けてるの?」
気付いたらペラは気になりすぎて直接聞きに行ったようだ。
「ん?君はシラリアさんの付き人のペラさんだね?」
「付き人なんかじゃないよ、シラリアとは大の親友なの~。」
「そうか、それは失礼した。」
男は深々と頭を下げて謝罪をした。
「あなたは何者なの?」
「自分はここのリーダーを任せられているマシル・エンカルだ、皆からはマシルと呼ばれている。」
「どうして星を付けてるの?ここでは珍しいけど。」
「ああこれか、これは皆に一目で自分がリーダーだと分かってもらうために着けている、自分は背が高いから分かると思ったが背が高い人がどんどん増えてきてな。」
「だから確実に分かってもらうために付けたんだ~。」
「そういうことだ。」
「マシル、ちょっと来てくれないか。」
「分かった、すぐに行く!悪いなちょっと今は忙しくてな。」
そう言って彼はペラの側を離れて行った。
「フレン~今の話聞いてた?」
「聞いてたよ、ありがとね、私も気になってたのよ彼の星のこと。」
ペラはそれは良かったと言う様な満足げの表情をしている。
「マシルって言ってたわね、彼はリーダーとしての才覚があったの?」
「そうだな……マシルとは私の同期でな、一緒にここに来たんだ。」
「もしかしてそれで彼に役職を?」
「私はそんな忖度はしない、マシルをリーダーにしたのは思いやり・明るさ・気さくな性格その他諸々を持ち合わせていたからだ。」
(ふーん、ちゃんと考えてるのね)
「所長!」
そのマシルが急ぎ足でこちらに来た。
「どうした?そんな血相を変えて、お前らしくもない。」
「すべてのモニターをチェックしたんだがどこにも該当する姿がないんだ!」




