ポキポキポキ子
ウーマン「ポキポキポキ子」
ポキ、
また鳴った。
私が、身体を動かすと音が鳴る。
ポキ、
また鳴った。
子供の頃から鳴っていたが、大人に成ってからは特に鳴る。
ポキ、
ポキ、ポキ、ポキ、
いい加減に、うるさい。
昔、一度、何かの病気かと思って病院へ行ってみたが、何でもなかった。
「ただの体質ですね」先生。
「よかった」
だが、うるさい…
会社
「佐々木さん、その書類取ってくれませんか?」課長。
「はい」
ポキ、
「何の音?」
「何ですかね〜部屋のきしみ音かも〜」(汗)
「そう」
あせった。
この会社では、私の関節音は秘密だ。前の会社では、この音のせいで退職に陥った。神経質な前課長は、ことある事にこの音に反応した。
ポキ、
「うるさいなー、何の音なんだ!」
「イライライラーするー」部下に当たる前課長。
ポキ、ポキ、
「いったい、何の音なんだよ。まったくー」
部屋の雰囲気が悪くなる。
私は、いたたまれなくなり会社を辞めた。
この会社では、
誰にも知られたくない、誰にも気づかれたくない、
絶対知られたくない。
私が、ポキポキポキ子なんて……
ある日、
会社でコピーを取っていると、
ポキ、
また鳴った。
ポキ、ポキ、
また鳴った。
ポキ、ポキ、ポキ、
「あーやってられない」
突然、先輩が大声を出した。
私(汗)
「そう、イライラしないで河本さん」課長。
びっくりした、私の関節音のことかと思った。
冷や汗がどっと出る。
私は普段、関節の音がしないようにロボットのような動きをしている。
カタカタカタ、パントマイムのロボットのような動き。
はたから見ると、限りなく変な女子。部屋の皆んなもおかしく思っているはず。
しかし、私は続ける。
安定したOL生活を守るために…
別の日、
ポキ、
また鳴った。
ポキ、ポキ、
今日は、たくさん関節音が鳴る。
いつもより、ロボットの動きを固くする。
カタカタカタ、
ぎこちない、ロボットでも酷い動きだ。
ポキ、
こんなに気を使っているのに、何で音が鳴るんだ。
ポキ、
ダメだ、いくら関節を動かさなくても音が鳴ってしまう。
何故なんだ、
こんな生活、疲れた。こんな生活なんかやってられない。
カミングアウトしよう、
人間、関節が鳴ることなんか誰でもあるはずだ、何でもない。
課長、あんたも関節音鳴るだろう。課長の方を見る。
すました顔の課長。
恥ずかしいことなど何もない。
明日、カミングアウトしよう!
翌日、
私は、勇気を出して皆んなの前でカミングアウトした。(緊張)
「皆さん、私はポキポキポキ子です。この音は私の関節音だったのです」(冷や汗)
「そう」課長。
「へ〜」先輩。
「面白いね」同僚。
「えっ?」
思ったより無反応。ごく普通の態度だ。
変な女と思われなかった。
私の自意識過剰?
今までの人生、考え過ぎていたのか?無駄な心配性だったのか?
まあ、いい。
さあ、明日からは楽しい人生が始まる。関節音を気にしなくていい生活が始まる。自由な生活が始まるるるるーー
ポキポキ、ポッキ、ポッキキ♫
関節ラップだ、ポッキキキ♫
ヘイヘイポキポキ、ポッキッキ♫
ポキポキ鳴らせば、世界は平和♫
あっという間に、ポキポキフレンド♫
みんなで鳴らそうポッキッキ♫
みんな友達、ポッキッキ♫
ポキポキ、ポッキ、ポッキッキーー!
突然、ラップを歌ってしまった。
以前の私では考えられない事だ。
これもカミングアウトのおかげ、私の関節音は、音楽だーーー
「今のは、うるさいよ」ポツリ、課長。
叱られた…
そんなこんなで、
ポキ、
私は、今日も関節音を鳴らす。




