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オフトゥン大好き黒猫令嬢は狼王子のお気に入り。……私は『運命の番』ではありません!(完結)  作者: にのまえ


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五十

 昼食のあと、彼の部屋で猫と狼の姿でまったりしていた。転生の話は王子にお茶の時間になったら、話そうと言われて緊張していた。


「ミタリア、どうした? 俺に甘えにこないのか?」


「え?」


 甘えにこない、いきなり何を言うの? と思ったのだけど。王子と同じベッドの上で『いつでも来い』といった体勢の王子と、体の中に前足をしまい香箱座りの私。


 この私たちの間に出来た隙間が、王子には気になったらしい。


「少し、考え事をしていたの。とうっ!」


 ポフンと、王子の空いたスペースに飛び込んだ。


「おっ、ようやく来たな。……で、ミタリアの考え事ってお茶の時間に聞くといった話のことか?」


「そう、上手くリチャード様に説明できるかなって? 考えていたの」


「ミタリア、別に上手く話さなくてもいいんだ。俺がミタリアの事を知りたいだけだからさ」


 長い鼻で頬ではなく、私のもふもふな胸元をスリスリしてきた。


「ぴゃっ! リ、リチャード様、そ、そこは! そこ……っ!」


「俺をほったらかしにした罰だ」

「ん、んん(自分でできないところは、やばい……っ)」


 あ、顎の下も……王子は良いところをグルーミングするから。私はなすすべもなく、ゴロゴロ、ゴロゴロ、甘えて喉を鳴らしてしまうのだ。


「そんなに喉を鳴らして目を瞑って、気持ち良さそうだな。次は何処をグルーミングする?」


 どこをグルーミングする?


「み、耳の後ろと後頭、ぶ……あっ!」

「ほぉっ、素直にこたえたな」


 ううっ、王子のグルーミングはやばい。ポーッとして、リラックスしてしまいには眠気を誘う。


「にゃっ……」


 心地よい……。



「ミタリア、眠そうだな。俺に我慢せずに寝ていいんだぞ」


「うん……リチャード様のリラックスは?」


「俺はミタリアに触れている時が一番リラックスしている。それでもミタリアが俺をリラックスさせたいのなら、目が覚めた後にブラッシングしてくれると嬉しい」


「ブラッシング? わかったにゃ」


 目を瞑ると、王子も寝るのかベッドに体を預けた。

 しばし、二人で仲良くお昼寝をした。


 



 


 一時間ちょいお昼寝をしてベッドの上で王子をブラッシング中。今度は王子が気持ちよさそうに目を瞑っていた。


(気持ちよさそう、嬉しいなぁ)


「ミタリア、背中の方をもっと頼む」


 頷き、背中にブラシを通した。


「リチャード様。ここで、良いすか?」

「あぁ、そこだ。……気持ちいい」


 いつも素敵な人が私に体を預けて、リラックスしてくれる王子のブラッシングの時間は大好きだ。









 王子の部屋――メイド達はカチャカチャとテーブルにお茶の準備をしている。私は獣化から戻りいまはソファーで、準備が終わるのを本を読み一人で待っていた。


 王子は先程、側近のリルに「国王陛下がお呼びです」と呼ばれていまいない。多分、陛下の執務室で、獣化研究所の結果の報告をしているのだろう。


(早く戻ってこないかなぁ、退屈)


「ミタリア様、お茶の準備が終わりましたので私たちは失礼いたします」


「ありがとう、ご苦労さまでした」


 メイド達も下がりポツンと王子の部屋に一人残る。しばらくはお行儀よく座っていたけど、ゴロリとソファーに寝そべった。


「流石、うちのソファーとは違う肌触りと、ふかふかさ……クッションの質まで違う。これは……すぅ、すぅ」



 オフトゥンとは違う心地よさに眠ってしまった。どれくらい経ったのか。ドタドタドタ、ドタドタと、こちらに向かってくる足音で目が覚めた。


「……誰? リチャード様?」


 ソファー起き上がると、同時に部屋の扉が勢いよく開いた。開けたのはこの部屋の持ち主の王子で、彼は少し興奮しているようだった。


 王子は部屋を見渡して、ソファーに座る私を見つけると、近付き肩をガシッと掴んだ。


(えっ?)


「ミタリア、聞いてくれ! 母上が産気づいたといましがた連絡が来た! お子が生まれるぞ!」


 王子は興奮して我を忘れているのか、肩を掴んだままガクガクと私を前後に揺した。


「お、おめでとう、ございます。うわっ、リリ、リチャード様……嬉しい話ですが。ま、待って、待ってください……わ、私、寝起きで……うっ」


 寝起きに力強く揺らされて、ハンカチで口元を押さえた。


「えっ、寝起き? えぇ、ミタリア? ……すまない」


 肩から手を離し、隣に静かに座った。

 ふぅ、ふぅと息を整える、私の背中を撫でた。


「ごめん、ミタリア。大丈夫か?」

「はい、驚きましたけど大丈夫です。……リチャード様の話だと、王妃殿下が産気づいたのですね」


「そうだ、父上は獣化して既に母上のところに飛んで向かっていった。お子が生まれたらすぐに連絡をくれるそうだ」


 隣で、嬉しそうに笑うから。

 私まで笑顔になっちゃう。


「リチャード様、お茶をしながら陛下の連絡を待ちましょう」


 そうだな、そうしようと。王子と私はソファーから、お茶が準備されたテーブルに移った。ティーポットから紅茶を注ぎ王子の前にだして、自分のも注いだ。


 王子は紅茶をひと口飲み。


「ミタリアは弟、妹のどっちだと思う?」

「私ですか? 私は王妃殿下と赤ちゃんが無事に生まれてくだされば、どちらでもいいと思います」


「そうだよな、母上と赤ちゃんの無事が一番だ!」


 そう言いながらも気になるらしくて弟かな? 妹か? とお茶を飲みながら笑う王子に。……いまからするはずだった転生の話をはなさなくてもいいかな……って、心の奥底でホッとしていた。

 

(ゲームとは話がずれたとはいえ。悪役令嬢と婚約破棄すると王子の前で口に出してしまったら。それが運命の悪戯で本当になってしまったらと思うと……怖い)

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