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オフトゥン大好き黒猫令嬢は狼王子のお気に入り。……私は『運命の番』ではありません!(完結)  作者: にのまえ


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三十六 まんまるじゃかいも

 王子の部屋でお昼用に出店で買った"まんまるじゃがいも"をテーブルに座り食べていた。見た目はたこ焼きに似た"まんまるじゃがいも"


 ジャガイモを茹でて潰し、丸く形を整え油でカリカリに揚げた外側とほくほくな内側。その真ん中にはタコではなく、甘辛に味付けされたお肉が入っていた。


(どう見ても、たこ焼きに見える)


 その"まんまるじゃがいも"を食べる、私を王子はじっと見ていて感想を聞いた。


「ミタリア、どう? まんまるじゃがいもは美味しい?」


「美味しいですけど……さっきから私ばかり食べてますよ。リチャード様は食べないのですか?」


 いつもだと一緒に食べるはずの王子はテーブルの反対側に座り、まんまるじゃがいもには手を継げず私を見ているだけだった。


「食べてるよ、ミタリアもっと食べて」

 

 おかしい? まんまるじゃがいもの十個入りパックを一つ買って、ほとんど私が一人で食べている。


「リチャード様?」


 名前を呼んでじっと王子を見た。それに気付き王子は私の視線から目を逸らして、考え、何故か「ごめん」と誤った。


「なぜ、謝るのですか? もしかしてジャガイモがお嫌いだったとか?」


 そうなら……いままで嫌いなのに私が美味しいと薦めたから、苦手だけど食べてくれていたの?


「ごめんなさい……私はリチャード様のお嫌いなものを、薦めていたのですね」


「いや、違う……ミタリア、そんな悲しい顔をしないでくれ、ジャガイモは嫌いじゃない」


「じゃーなぜですか?」


 そう聞くと王子は一呼吸、置いて話してくれた。


「この料理は俺がミタリアに食べてもらおうと思って、城の料理長と一緒に考えた料理なんだ」


「えっ、リチャード様がお考えになった、料理」


 王子の驚きの告白。


「嬉しい……私の為に考えてくれた料理なんですね。もう、それなら初めから言ってくださいよ。もっと味わってゆっくり食べたのに……リチャード様ありがとう、とても美味しいです」


「良かった……俺、ミタリアに美味しいって笑って欲しかったんだ。いま、そればかりを考えていた、俺の気持ちばかり先に出てしまったな、ごめん」


 しょんぼり顔と、王子の立派な耳がしゅんと垂れた。


「そんな顔しないでください。リチャード様、口を開けてください」


 最後の一つを爪楊枝にさして前に出すと、王子は観念したのか口を開けて食べてくれた。


「……んっ、やっぱり美味いな」


 と、照れながら笑った王子は可愛かった。









 まんまるじゃがいもを食べた後。「少し休んでから、ブラッシングをする」と王子は言った。


 その休憩後、ブレスレットを外してベッドの上で獣化した。王子は青い持ち手のブラシでブラッシングを始めた。 


「痛かったら言えよ」


「はい…………ん?(いま、ぞくっとした)」


 ンン? これはまずい……初めてにすぐにやめてと、王子を前足を伸ばしてブラッシングを止めた。


「どうした?」

「そのブラシ、なんが変です」


 ブラシが優しく背中を通ると、尻尾の付け根が"むずむず"するのだ。


「何が変なんだ?」

「し、尻尾の付け根がむずむずします……」


「むずむずか……俺も毎回、そんな感じだぞ」

「そうなのですか? 王子もこのような感しに?」


 ブラシが通ると"にゃ、にゃ"と鳴き声を上げ、体を丸めて尻尾を隠した。いつもとは違う私の反応に王子は焦って。


「こ、これはいかんな……このブラシは良い物だけどミタリアにはデカすぎて刺激が強いのか? 今度、父上に頼んでミタリア用を作ってもらわないとな……」


「そ、それでお願いします」


 ブラッシングの刺激に負けてふにゃーっと私は潰れた。その隣にブレスレットを外して狼の姿になり寝そべった。


「帰りの時間まで一緒に昼寝しよう」


 ベッドに並んで寝そべってお昼寝を始めた。









 それから時が過ぎ、寒い冬が来た。


 私たちが住むローランド国では雪が降り、馬車で王城には行けなくなったけど。王子は屋敷まで雪馬を走らせ会いにきて来てくれて、私たちは冬の間も時間がある限り一緒に過ごしていた。


 お腹のアザは日に日にクッキリとした花の形となり、そのことを書いた手紙を王妃殿下に送った。王妃殿下から焦ることはないわ、良い方向に向かっていますね、とても喜ばしいわと書かれていた。そしてお子様は順調にすくすくと育ち、春先には生まれるらしい。



 ――そして十二月、ミタリアの部屋。


「リチャード様、紅茶がはいりました」


 私の部屋で読書する王子のテーブルに置いて、反対側に座る。


「ミタリア、ありがとう……この冬が過ぎ春になったら学園が始まるな」


「ええ始まりますね、学園は楽しみです」


 クローゼットの横にかかるローネ学園の制服に目をやる。制服はブレザー紺色のジャケット、学年でリボンとネクタイの色が変わり、チェック柄 の赤いプリーツスカートだ。


「ミタリア、他の奴に目移りするなよ」

「それはリチャード様もですよ」


「俺はミタリアしか見ていない」


(だと、いいのだけど……)


 春には乙女ゲームのヒロインが学園に来る。ヒロインの登場で私たちの関係はどう変わるのだろうか。


 ゲームの通りに私は悪役令嬢となり、王子はヒロインに攻略されてしまう?


 少し怖いけど、学園は楽しみだった。

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