二十ニ
七月までのぽかぽか陽気を通り過ぎ、ジリジリと熱い庭園のテラスに私はいた。飲み物はアイスティーとひんやり桃のシャーベット。
「暑っ、もう八月か――夏が来るわね」
後ニヶ月、十月頃に学園に入学する者を呼び、舞踏会が開催される。
その後に訪れる冬の季節。この国では雪が降るため、みんなは領土に引っ込んでしまう。
王妃殿下はいま妊娠三ヶ月。冬が明けて四月の学園の入学式には、お子様が生まれて約一ヶ月になっているはず。
しかし、ゲームの王妃殿下に子供はいない。となると、必ず十月の舞踏会にのときに何か起きる。
でも、ゲーム開始前だからまだ情報がない。
キーワードは倒れた国王陛下と、妊娠していたはずの王妃殿下。
――それと。
『あの日ーー誰も気付かなかった、誰に止められなかったのです。悔やんでいても前に進めませんわ』
学園で王子に私が言うセリフ。これが何に対して言ってい事かが分かればいいのだけど。止められるなら止めなくてはならない。
王子が学園卒業後に私を選ばなくても。
いまのように笑っていて欲しい。
今思えば――ゲームの中で王子は優しいのだけど、作った表情をしていた。ゲームでの謳い文句が――常に冷静沈着、クールな美男子だったかな?
国王陛下の病気が思わしくなく、学園を卒業すれば婚約者――ミタリアと結婚して、国王となることが決まっていた。
人の上に立つものは、交渉相手に心を読まれてはならない。
(でも――私はもう少し、いまの、いたずらっ子の王子のままがいいな)
「ミタリア? なんだ、寝ていないのか」
王妃殿下との話を終えたらしく、王子が庭園のテラスに現れた。
「私だって、いつも寝てません。リチャード様、王妃殿下との話は終わったのですか?」
「あぁ終わった、久しぶりに母上とたくさん話したよ。もちろん、ミタリアの話もね」
――私のこと?
「まさか、私がリチャード様の前で、へそ天をご披露したことを王妃殿下に言ったのですか?」
「ご披露って、違うよ。母上としたのは別の話だ。それにへそ天は俺だけの特権だから誰にも言わないし、誰にも見せない」
(へそ天が、王子の特権?)
王子は私の反対側に座り、頂戴と、私のアイスティーを勝手に飲んでしまう。
「リチャード様! ご自分の飲み物が欲しいのなら、メイドに頼んでください。あ、シャーベットは嫌です」
「少しなんだよ――なんていうか、少しだけ食べたいんだ」
――少し?
「それ、分からないこともないですけど。本当に少しだけ欲しいんですよね」
ポテチ数枚とかアイス一口とか、相手の食べている物が少しだけ欲しくなる。
やられた方はたまったちゃもんじゃないと、思うけど。
「おっ、ミタリアも分かるのか。だったら、そのシャーベットもちょうだい」
「えっ、本当に一口ですか? ……分かりました、一口ならいいですよ」
仕方がないと渡した桃シャーベットは、美味いと王子は素敵に笑い、シャーベットを全部食べてしまった。




