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勇者の名前は『魔王』でよろしいですか?▼  作者: 毒の徒華
最終章 裏ボス攻略をしてください。▼
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再会しました。▼




【メギド 魔王城 城門】


 魔王城にやってきたのはクロとメル、そしてカノン。


 私が単体で魔王城にやってきたときから今までの間に様々な経験をしてきたのだろう。

 それぞれの顔つきが以前とは違うのが分かった。


「どうしたお前たち」


 私が純粋にそう問うと、クロは私に向かって不満をぶちまけ始めた。


「どうしたとはなんだ。私たちを各地から連れ出しておいて長らく放置するとは。あのタカシとかいう人間は呼ばれたのに、私たちは何の指示もなくずっと魔族の楽園に放置して。報告くらいするべきだろう。先刻巨大な何かが魔王城方向に向かって行くのが見えたのもあり、こうして訪ねてきたものを――――」


 クロは怒りながら私に対して文句を言う。

 私は若干面倒に思ったが、クロの不満ももっともだ。

 私がゴルゴタに立ち向かうために魔道具が使える者を家来にしながら旅をしていたが、事情が変わりすぎてどうすることもできなかった。


 だが、三神相手や『真紅のドレス』に立ち回った私の苦労も理解してもらわなければ私が納得いかない。


「すまなかったな。お前たちと別れた当初から目的は転々としたが、やっと9割ほど事が終わったばかりだ。勿論落ち着いたら連絡しようと思っていた」


 まだすべては片付いていない。


 地下牢に放り込んだ佐藤の問題もあるし『真紅のドレス』に攫われたというダチュラの件、サティアの件、庭に放置している死神の件、1番は母上の件だ。

 それが全て終わっても、人類と魔族の関わり方の件や人間の現国王を下ろす件、ゴルゴタとのこれからの関わり方の件……


 問題をあげだせばきりがない。

 まだまだ解決しない問題が山積みだ。


 クロが怒っているその横で、メルは無邪気に私に話しかけてきた。


「まおうさま、あたしたくさん絵を描いて上達したんですよ!」


 そう言ってメルは自分の描いた絵を沢山見せてくる。

 メルの絵を描く技術は出会った時より格段に上手くなっていた。

 風景や動物、人間、魔族の姿が生き生きと描かれていた。

 私はメルの成長を嬉しく思うと同時に「自分の目に狂いはなかった」と確信した。


「きちんと鍛錬を続けていて偉いな」

「えへへ」


 そんな無邪気なメルの横で、カノンは沈んだ表情で私に尋ねた。


「あの……兄は……?」


 カノンに兄のカナンの事を聞かれ、私は非常に答えづらかった。


 カノンは兄が『真紅のドレス』の一員だったことや、弟に勝りたいという歪んだ気持ちを本人はどれほど知っているのだろうか。

 メルの前でこんな重い話をしたくなかったので、私はカノンだけ少しメルと距離を置いたところでカノンに事実を伝えた。


「お前の兄は絶対に許されない事をした。結論から言うと地下牢に幽閉してある」


 それを聞いたカノンは顔を真っ青にして沈黙した。

 カノンの瞳は絶望に満ちていた。

 こんな話をされたら絶句しても仕方がない。

 ずっと探していた兄が地下牢に幽閉されていると聞かされたカノンの心情は計り知れない。


「後で詳しく話す」

「はい……」

「予め言っておくが、蓮花にしつこくつきまとうなよ。ゴルゴタに殺されるぞ」

「…………はい……」


 私たちが話している間に、メルは魔王城を見回していた。


「わぁー! ここがまおうじょうなんですね! きれい好きのまおうさまのお家にしてはけっこう荒れてますね……?」


 私も常々それは思っている。

 ゴルゴタが地下牢から出てきてから、魔王城はずっと滅茶苦茶な状態だ。

 時間ができたら魔王城を立て直したいと私は強く思った。


「ここで決戦があったからな。意外なことに、あの阿保タカシが大活躍だった。タカシは今部屋で起きているようだったから久々に会うか?」


 私がメルに優しく話しかけるとメルは目を輝かせて喜んでいた。


「わーい! タカシお兄ちゃんに会えるんですね! 元気かなー!」

「だが、魔王城の中には狂暴なのがいる。私がタカシの部屋の中まで案内しよう」


 その時、ゴルゴタが翼を大きく羽ばたかせながら現れた。

 ゴルゴタの姿を見たクロは瞬時に戦闘態勢に入った。


 ゴルゴタは警戒しながらクロを見た。


「なんだぁ? テメェら……あぁ、こいつのツレか……」

「貴様が諸悪の根源だろう」


 ゴルゴタはクロの言葉に心底呆れたような表情を浮かべた。


「はぁ? あぁ……俺様が人間全員ぶっ殺すってところから情報が止まってんのかぁ……もうその情報クッソ古いぜぇ……?」


 ゴルゴタの言っている事が正しいだけに、殺気立っている黒に仲裁に入りづらい。


 クロはやはり怒りを露わにし、身体に纏っている青い炎を更に燃え上がらせて本格的に戦う姿勢をとった。


のたまえ! 害悪め、噛み殺してくれるわ!」


 ゴルゴタも大してクロを相手にしていなかったが、完全に臨戦態勢に入ったクロを見てゴルゴタも構えた。


「なんだテメェ……やんのかコラ!?」

「不毛な言い争いはやめろお前たち」


 この混乱を鎮めるためには諸々、全て説明しなければならないかと思う。

 しかし、人類全体に向けてゴルゴタが「人類を滅ぼす!」と言ったことを、まず撤回させなければこの混乱はいつまでも静まらないだろう。


「明日何もかも話す。だから双方揉めるな」


 私がクロとゴルゴタをいさめているところに、颯爽とセンジュが現れた。


「メギドお坊ちゃまのお客様ですね。お部屋をご用意いたしました。大狼族の方は簡易的ですが、氷の部屋をご用意いたしましたので」


 センジュの言葉にクロは驚いた顔をした。


 庭にはクロ用の大きな氷の部屋が簡易的に用意されていた。

 ゴルゴタとクロは私とセンジュに引き離されるまで睨み合いになっていたが、なんとか殺し合いにならずに済んだ。


「…………」


 カノンは曇った表情をしたまま、魔王城に踏み入れた。

 カノンは壊れた状態のカナンを見てどう思うのだろうか。

 仮にカノンがどう思ったとしても、母上の遺体を持ち出して弄んだ罪は絶対に許されることはない。


 それに、絶対に壊れない地下牢に入れられてその鍵は既に壊してある。

 もうカナンがあの檻から出てくることはない。


 私はこの夜が明けたら全員を集めて話し合いをしようと考えた。




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